Vol.25 富山県・富山湾
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は富山県・富山湾のフクラギ・キジハタほかをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回のフィールドは、氷見ブリやホタルイカなどの海の幸で知られる富山湾。そのブリをはじめ(フクラギだけど)、キジハタ、ニギスなど、富山湾を代表するターゲットをねらい撃つ!ボート倶楽部2009年9月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
深い湾は魅力も深い
突然ですが、質問です。日本の深い湾のトップ3って、知ってますか?
知らない人のためにヒントをひとつ。上位三つは最深部が1000メートル以上あるのに対し、そのほかの湾の水深はすべて200メートル以下と格差が大きいんだよね。あ、この場合、東京湾は観音崎と富津岬を結んだラインの内側に限ります。その外側も入れると、東京湾の水深は約650メートルと深くなる。
というわけで、広義の東京湾は第4位。ほかはわかるかな?自分がよく行く湾の水深がもし200メートル以上あれば、3位までに入っているはず。答えは1位が駿河湾、2位が相模湾、3位が富山湾だ。
このうち駿河湾、相模湾、東京湾はすでに釣査済みで、いずれも魅力たっぷりのエリアだった。深い湾は地形の変化が大きいし、魚種が豊富でいろいろ楽しめるからね。
残る富山湾は、氷見のブリからホタルイカやシロエビまで、全国的に名をはせる豊かな海。シースタイルの拠点もちゃんとあって、ヤマハのホームページのエリアマップを見ても、マダイ、ヒラマサ、アジ、イナダ、メダイ、タチウオなどなど、予想どおり魚種は充実している。だから、たぶん富山湾も相当楽しいんじゃないかとねらいをつけていた。
どうせならブリを釣りたいとこだけど、ブリのシーズンは冬。季節風で荒れやすい冬の日本海はさすがに厳しい。で、ころ合いを見計らって、日本海マリンの城光寺マリーナに電話してみたら、フクラギ(イナダ)やキジハタが釣れているとのこと。フクラギはいちおう魚種的にはブリだし、キジハタも北陸を代表するターゲット。望むところ、とさっそく富山湾に向かうことにした。
「若手のベテラン」って?
城光寺マリーナには、能越自動車道の高岡北ICから10分弱で到着した。
このマリーナのウリのひとつに、ベテランスタッフが無料で同行してくれるサービスがある。シースタイルの会員には、ポイントの案内から釣りの指導まで親切にレクチャーしてくれるそうで、太っ腹だこと!
でもって、今回のロコアングラー役はそのベテランスタッフと聞いていたから、当の竹本佳史さんが登場したときは目を疑った。だって、22歳の好青年なんだもの。この年でベテランスタッフ? という疑問は竹本さんの経歴を聞いて解消した。実家は代々続く漁師で、ご自身もれっきとした組合員である。もちろん、得意のエギングをはじめ、趣味としての釣りのキャリアも豊富。こんなスタッフが無料で同行してくれるマリーナなんてめったにないゾ。
フクラギとキジハタのうち、まずは早い時間のほうがいいというフクラギにトライした。釣り方はジギングだ。水深は深くても80メートルくらいまでで、ときおり大きなジャークを織り交ぜるスローなアクションが効果的とのこと。ポイントの目安は定置網。その沖側のカケアガリで魚探をかけて、さらに場所を絞り込む。
小矢部川の岸壁を離れて河口を抜けると、目の前の視界が一気に開けた。無風、ベタナギでコンディションはばっちり。115馬力の船外機を搭載したAS-21EXは快調に疾走する。
それにしても、富山湾の定置網の多いこと。その密度といったら、ほかのエリアの比ではない。これじゃどの定置網をねらったらいいか迷うだろう、と思って竹本さんに聞いたら、一番の目安はトリだという。いいときはたいていトリヤマができているか、そうでなくても、トリが固まっているところが釣れるそうだ。なるほどね。
しかし、あいにくこの日はトリが1羽も見あたらなかった。そんなときは情報が頼り。でも、その情報をどうやって入手したらいいのかなんて心配は無用だ。なんてったって竹本さんがついている。そこで、このところ好調という海竜マリンパーク沖へ向かった。
お目当ての定置網に到着し、魚探をかけて驚いた。とにかく傾斜が急なのだ。真沖に向かってボートを走らせると、30メートルだった水深があっという間に100メートル、200メートルになる。駿河湾や相模湾でもここまで急に深くなる場所はごく一部。だが、富山湾では全体的にこんな感じだそうだ。
驚く隊長をよそに、魚探を見つめる竹本さんはずいぶん冷静だ。と感心していたら、実はそうでもなかった。
「う~ん、今日はイマイチですね」
魚探にベイトさえ映らない。つまり、困っていたのである。とりあえず、水深を変えながら探ってみたものの、魚っけはまるでない。気まぐれな青ものねらいでは、よくあることとはいえ、いちばんツラい状況である。
「いつもはトリがいるんですけどね......」
竹本さんも打つ手なしといった様子。かれこれ1時間ほど探ったけれど、フクラギはダメっぽいので、キジハタをねらってみることにした。
フクラギといえば魚種はブリ。富山湾のブリに出合えてご満悦の隊長。
タイラバー・ホタルイカ説!?
富山湾でのキジハタの釣り方はおもに二通りある。ひとつはテトラ際などを撃つルアー釣り。もうひとつはドウヅキ仕掛けで沖の根をねらうエサ釣りだ。隊長的にはパワーフィッシングのロックフィッシュゲームもおもしろそうだけど、今回は外道も期待してエサ釣りにした。
やはりというか当然というか、エサはホタルイカが定番という。ホタルイカをハリに刺し、海に入れて動きを見ると、ゲソと触腕がピロピロと泳いでめちゃくちゃ釣れそうだ。見た感じはタイラバーのネクタイそっくり。いや、長いのがちょうど2本だし、タイラバーのネクタイが触腕のイミテーションなのか?それはそうと、で、竹本さん、ポイントは?
「どこでもいいんですよ。魚探で根を探しますから、合図したら投入してください」
えっ、そんなに簡単なの?
水深約60メートルで、魚探のボトムラインが平らなまま尾引きだけが長くなった。これは底が硬い証拠。竹本さんの「どうぞ」という声で二人はサオを出す。根の形がゴツゴツしているわけじゃないから、根の見つけ方は微妙といえば微妙。これじゃ簡単とはいえないか。
最初の投入は不発に終わり、仕掛けをピックアップしたときのことだった。20メートルくらいにベイトの反応が出て、そのレンジを仕掛けが通過した瞬間に、ゴツンと一発殴られたようなアタリがきた。残念ながらハリには掛からなかったけれど、ひょっとしてと思い、ジギングに替えた途端にヒット。ぐいぐい締め込むヒキの主は、予想どおりフクラギだ。
その後はしばらく群れがとどまったようで、竹本さんも隊長も連続ヒット。ときどき混じるというガンド(ワラサ)クラスは姿を見せなかったものの、なかなかの良型ぞろいで、しばし二人でパワフルなファイトを楽しんだ。
このデッキレイアウトは意外に使い勝手がよくて、エサ釣りならバウで2人、アフトコクピットで2人がサオを出しても余裕でイケる。
深場でサイズアップ!
さあ、次はキジハタだ。
テトラ際の浅場からオニカサゴもいるような中深場まで、キジハタが生息する水深は幅広い。とにかく魚探で根を見つけては仕掛けを投入する釣りになる。といっても、基本的に小さな根が点在しているだけだから、根を見つけられるかどうかはウデ次第。いや、運次第か。ある意味、ベイトを見つけたらジグを落とすジギングと似てなくもない。
最初は浅場からねらってみるつもりで、定置網の岸寄りに移動したら、たまたまいい根を発見。さっそく仕掛けを投入すると、いきなり激しくサオ先が揺すぶられた。懐かしいなあ。思えば、釣査隊の最初のターゲットもキジハタだった。この魚、サイズのわりに前アタリが激しくて、相当戸惑った記憶が鮮やかによみがえる。
エサは生きアジではないけれど、ちゃんと食い込む間を作ってからアワセたのは学習効果。すると、ばっちりフッキングして、幸先よく本命をゲットできた。でも、ちょっと小さいや。
で、40アップのキジハタをキャッチ。竹本さん、ありがとう!
良型のキジハタを求めて水深のあるポイントをねらってみた。おまけに、風が強くなってきたので、パラシュートアンカーを使用した。パラシュートアンカーも無料で貸してくれる。
よし、もっと大きなキジハタを釣ろう。
続いて同じポイントでマハタを釣ったら、アタリがぴたりとやんでしまった。おまけに風も吹いてきたから、竹本さんのアドバイスにしたがって、シーアンカーの流し釣りでねらえる70~80メートルラインのオニカサゴ&キジハタポイントに移動。これが大正解で、首尾よくキジハタのサイズアップに成功。竹本さん、どうもありがとう!
本命のフクラギとキジハタを揃えて目的を達成したあとは、やはり名物のニギスを釣ってみたり、陸にあがって「氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館」や雨晴海岸の「義経岩」に行ったりして、富山湾をすっかり満喫させてもらいました。
でも、陸にあがってからいつ、なにが釣れるのかを詳しく取材したら、正直言って、もっと釣りをしておけばよかったと後悔した。だって、富山湾のターゲットがこれほど多くて豪華だとは思わなかったんだもん。ポイントも明確だしね。このエリアのなかだけでも、四季折々にさまざまな魚種がねらえる富山湾は、まさにターゲットの宝箱。想像以上に魅力的なエリアだよ。
ああ、もっと釣りしたかったなァ。
フクラギとキジハタを釣りあげて、ちょっと余裕ができたので、やはり富山湾名物のニギスを釣ってみた。水深100メートル以上でサビキで釣るんだけど、アタリは明確で、入れ食いになるから、ビギナーに向いているかもしれない。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
奈良、鎌倉と並んで日本三大仏のひとつ(と呼ばれることもある)高岡大仏にて。それにしても三大朝市とか三大ギタリストとか、日本人はなぜ"三大ホニャララ"が好きなのか。徳川御三家による、というのが隊長説だけど、定かではありません...。
【今回のロコ・アングラー】
竹本佳史(たけもと・よしふみ)さん
実家は刺し網や一本釣り、潜り漁などの漁業を営み、自身も組合員という正真正銘の漁師。もちろん、ボートも所有している。マリーナに勤めたのは、メカニックのウデを磨くため。22歳ながら知識も釣りのウデも折り紙つきのエキスパートだ。
115馬力の4ストローク船外機を搭載したAS-21EXを早々に導入。高密度ウレタンとFRPによる一体成型三重構造「FOAMAP」を採用した船体は剛性が高く、安心してトリヤマに向けてかっ飛べるゾ。
城光寺マリーナのクラブ艇は、AS-21EXと24シエスタFVの2艇体制。屋外のヤードに加えて、全天候型「屋内艇置きヤード」もある。
この日の朝は無風、ベタナギ。こんなときはオープンボートが気持ちいい。115馬力を搭載したAS-21EXはとてもパワフルで、最高速度は30ノットオーバーをマークする。
富山湾では、日本海に分布するとされる約800種のうち500種を超える魚が見つかっている。また、蜃気楼(しんきろう)、海底林、ホタルイカの身投げなど、珍しい現象の多いきわめて興味深い湾である。風光明媚な観光地としても人気。
安全レクチャーは、ビデオ講習に加えて、ロープワーク、離着岸、危険区域の説明、ローカルルール、ショートクルージングなど約60分のメニューを無料で実施してくれる。ビギナーには頼もしい限りだ。
キジハタをねらっていたら、ホタルイカを引ったくるヤツがいたので、ジグを落とすとすかさず飛びついてきた。その正体は予想どおりフクラギだった。
魚探の画面しか出ていないけれど、標準装備のGPS魚探。ベイトの反応が現れたら、ジギングチャンス!。
竹本さんもフクラギを掛けた。しばし二人で連続ヒットを堪能。
これがアベレージで、ときどきガンドが混じるという。1日やったら相当疲れそう!?
これがやがて氷見ブリになるのかと思うと感慨深い。富山湾のフクラギはほかの海の同じサイズよりパワフルだと感じたのは気のせい?
フクラギをしこたま釣ったあとで、エサ釣りにシフトしたらすぐにヒット。
ねらったとおりキジハタが釣れてほっと一息。ポイントに仕掛けを送り込むとすぐに食ってくるから、かなり貪欲なんだろう。次はサイズアップだ!
もちろん、マハタはうれしい外道。本当はもっと大きくなってから釣りたいけどね。
キジハタのエサはご当地名物のホタルイカ。ゲソと触腕がなんともいえず魅力的なアクションをする。富山湾のアングラーは、ホタルイカがたくさん捕れる時期に、こうやって冷凍してキープしておくのだ。
義経岩のほかにも、雨晴海岸の沖には男岩と女岩という名所がある。ただし、暗岩が多いのであまり近づかないこと。
雨晴海岸の「義経岩」。これは義経と弁慶が奥州へ落ちる途中、にわか雨が晴れるのを待ったといわれる岩で、「雨晴」という地名の元にもなっているという。陸から見ると、正面に海越しの立山連峰が見える。
昭和5年に進水して以来、商船学校の練習船として地球を約50周した〈海王丸〉を富山新港の「海王丸パーク」で見学できる。船好きは必見。09年は計10回総帆展帆される予定。日程はHPで確認できる
http://www.kaiwomaru.jp/
釣果カレンダー
一見、狭そうに見えるかもしれないが、実はエリアはかなり広いほう。浅場から深場まで、四季折々にさまざまな魚種がねらえるエリア内はまさにターゲットの宝庫である。キジハタは根を見つけたら釣れる可能性が大。また、フクラギ、ガンド、メジマグロはベイトについているので、魚探にベイトが映ったらチャンス到来だ。アオリイカは沿岸全域の水深20メートルくらいまで。サワラは河口周辺がねらいめ。
富山湾のフィールドマップ
北寄りの風に弱く、冬の季節風が吹くと荒れやすい。定置網には保護区域が設定されており、そのなかでの釣りは避けること。保護区域は網によって異なるが、500メートルがひとつの目安。また、魚道を妨げる行為も禁止だ。定置網の数も多いので、視程が悪いときは十分注意して航行しよう。なお、雨晴海岸と氷見港の前は暗岩が多く、近寄らないこと。
この日のおもな釣果。当初の目的は達成されたし、まずまずといったところ。でも、ホントはもっと釣りたかったなァ。
各種のエサをはじめ、富山湾の釣り情報ならおまかせの釣具店「エキスパート」。ルアーフィッシングにも強いので、興味のある人はぜひどうぞ
住所:富山県高岡市下伏間江335
電話:0766-23-4617
営業時間:(平日)午前10時~、(土日祝日)午前9時~
定休日:水曜日
氷見港にある「氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館」では、食事、買い物が楽しめる。フクラギもキジハタも売ってましたぜ
http://www.kaisenkan.com/
スーパー銭湯の発祥の地である富山には銭湯が多い。釣りで疲れた体をリフレッシュさせるなら、「陽だまりの湯」がおすすめ。マリーナからだと県道24号線1本で行けます
http://www.hidamarinoyu.com/
日本海マリン 城光寺マリーナ
創業40年の老舗で、信頼の技術とリーズナブルな保管料で人気のマリーナ。なんといっても、釣りのポイントが近いのが最大の魅力。保管艇の8割以上がフィッシングボートなので、釣りの情報も新鮮だ。保管艇も募集中
■交通アクセス
車利用:能越自動車道高岡北ICより車で約7分
電車利用:JR高岡駅で降りて、万葉線に乗り、米島口駅で降りて徒歩15分
■問い合わせ先
〒933-0126 富山県高岡市城光寺字川原120番
TEL:0766-44-8558 定休日:火曜日、第2、第4水曜日
営業時間:午前9時から午後6時(シースタイル)
http://www.nihonkai-marine.co.jp/
能越自動車道の高岡北ICからまっすぐ走って約7分とアクセスは簡単楽々。小矢部川のほとりにある落ち着いた雰囲気のマリーナだ
シースタイル担当の小島 顕(こじま・あきら)さん。国体に出場した経験もあるヨットマンで、やはり富山湾に精通している。明るく、親切で、頼りがいのある兄貴的存在。
今回使用したタックル
フクラギ用のジギングタックルは、水深が100メートル以内で、ルアーも100グラム前後までなので、それに合わせたセットでいいだろう。ただし、ときどきガンドが混じるので、必要以上にライトにしないほうが賢明。キジハタはねらう水深が広く、オモリ負荷の範囲が広いライトゲームロッドがおすすめ。加えて、深場用のタックルがもう1セットあれば、富山湾のターゲットはほぼカバーできる。
エサ釣り用のタックルは、サオがダイワ・リーディングXA64タイプ(企)、両軸受けリールが同ミリオネアCVZ100FL。浅場から深場までカバーできるバランスタックル。
ドウヅキ仕掛けは竹本さんの手作りで、本当はオニカサゴ用。でも、キジハタもOK。ニギス用のサビキは市販品を使用
ジギング用は8ポンドクラスのスピニングタックル。ロッドは5.5フィートと短めにした。ルアーは40~100グラムがあればほぼカバーできるだろう
この日、いちばん活躍したのはフックのついた左側の二つ。竹本さんによれば、富山湾ではピンク系がイチオシとのこと