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Vol.15 静岡県・内浦湾

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は静岡県・内浦湾のアマダイ五目をご紹介。

今回はアマダイをはじめとする中深場のおいしい魚たちを、干物の名産地である沼津の海で釣って干しちゃおうというグルメ釣行プランの巻。ボート倶楽部2007年3月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]

冬の海の恵みといえば

 3カ月に1度の季刊ペースでお届け中の釣査隊。なので当然、冬もやってくる。冬の海と聞いて真っ先に思い浮かべるのが北風だ。身を切るような冷たさに加えて、けっこう強い。寒くて荒れる、ボートアングラーには厳しい季節。
でも、冬には冬ならではの恩恵もある。いちばんは魚の味だろう。越冬する魚は脂と栄養をたっぷり身にまとい、ヤリ、スミなどのイカも美味。カワハギなんぞ肝をパンパンに膨らませてボクらを待ってるゾ。それに干物のうまいこと! 冷たいからっ風が吹く太平洋岸の冬は干物作りに絶好の時期。干物ができるのは日光ではなく乾いた風のおかげ。湿度が高いといくら日に当てても干物はできません。
冬は安心して天日干しにできるところもありがたい。天日干しにすると、開いた側の表面にできる膜が一段と厚くなる。この膜がまたうまいんだよなァ。脂の乗った冬の魚。その天日干しを遠火の強火でじっくり焼いて、背骨を上手にはがし、骨についた膜にかじりついてからホクホクの身をほぐす......なんて想像していたら、ふと思い出したのが西伊豆の沼津。そう、干物の名産地である。
沼津にはホームマリーナの「ヤマハマリーナ沼津」があったはず。でもって、冬はアマダイが釣れたっけ。駿河湾のアマダイといえば、徳川家康の大好物といわれた"興津鯛"である。また、アマダイの開き「一汐ぐじ」は京料理の最高級魚。興津鯛を家康公のお膝元で釣って干す。こんなゼイタクはありません。

釣査隊始まって以来の危機!?

 駿河湾のいちばん奥に控えた内浦湾。なかでもヤマハマリーナ沼津は最奥部の江浦に位置している。東名高速の沼津ICで降りて、釣具店が並ぶ街道を走り、都内から1時間半ほどで到着した。
駿河湾は日本一深い湾である。いちばん奥とはいえ、内浦湾も相当なドン深だ。場所によってはアマダイが岸から釣れるほど。ポイントが近くて楽なんだけど、実は困ったことがひとつあった。ガイド役のロコアングラーがいないのである。
  いや、いることはいるんですよ。マリーナスタッフの土屋さんが。ところが、土屋さんが得意なのはマダイをはじめとする根付きの魚で、アマダイは守備範囲外とのこと。今回はあくまで釣り手としての同行だ。
ポイント探しこそボートフィッシングの醍醐味。だから、本来は楽しい状況ではあるものの、相手がアマダイってのがちょっとなあ。アマダイは平坦な砂泥地に散らばっていて、しかも、外道がメチャクチャ多い。つまり、明確なポイントのアテがないうえに確率も低いってわけだ。はたしてご当地で実績のない隊長に釣れるのか...。待てよ。外道が多いのはボウズなしという考えもあるな。アマダイ釣りにはおいしい外道が多いし、ここはひとつ、お題をアマダイ目当ての中深場干物五目とするか。言い訳を先に用意するなってか。

隣の魚は大きかった

 最初に向かったポイントは志下海岸沖だった。理由は単純。エリアでは数少ない砂浜の沖だから。土屋さんによれば、いちおうアマダイの実績もあるという。
アマダイ、じゃなかった、中深場五目仕掛けは片テンビンに2本バリの吹き流し。コマセ管を付ける場合もあるけれど、隊長的には重たいコマセ管はないほうが好き。そのほうが釣りがラクで、アタリも取りやすい。
アマダイねらいでは、エサのオキアミが海底付近をフワフワと漂う誘いが定番である。魚の活性および釣り手の気分次第で誘いのスピードを変えてもいい。ジギングのようにスピーディーな誘いが効く場合もあるし、ボートの揺れに誘いを任せる置きザオの楽チン釣法で釣れるときもあったりするから、いろいろ試してみよう。
  初めての場所なので、仕掛けを投入する前に魚探で地形をチェックすると、思ったとおり、緩やかに深くなる砂泥地だった。まずは水深60メートルあたりから流してみたが、アタリがまったくない。次に80メートルラインへ移動しようと沖へ出たら、途中で魚探にすごい反応が出た。単独根に魚がびっしり!
  こんなポイントを見逃す手はない。アマダイは無理とわかっちゃいても、あまりの反応に足を止めて仕掛けを投入、着底。と同時にダブルヒットだ。土屋さんの魚は特大のカサゴだった。こりゃウマそう。隊長の魚はというとサクラダイ。根付きの外道の王様ですな。いかにも釣れそうな反応がまだ魚探に映っていた。ちょっと離れたところにいるミニボートをふと見たら、サオが満月に曲がっている。なにやら大物を釣り上げた様子。なんだろう。近寄って声をかけてみた。 「なにを釣ったんですか?」 「ヒラメ。たまたまですけどね」と満面の笑み。ご謙遜を。大ビラメも釣れるのか。いいな。干物は無理だろうけど。 その後は本来の中深場五目に戻り、水深80メートルの砂泥地へ。60メートルラインよりアタリは格段に多い。ほどなくヒメコダイがヒットした。惜しい。ヒメコダイはアマダイに付きものの外道である。そこでアマダイまであと一歩と昼まで粘ってみたものの、アマダイは釣れなかった。

これぞボートフィッシング

 困った末に移動した先は......ここはなんて場所だ? ワラサ根と長根の中間だ。なんのアテもないので、ただ根と根の間に入ってみただけ。なにもないよりマシってことで。
魚探が描いた地形は水深60メートルから85メートルまでカケ下がって、その先はフラットだった。底質は全体に砂泥っぽい。潮は岸から沖へ流れている。サオを出す価値はあるだろう。
水深60メートルで仕掛けを投入後、すぐに極彩色のシキシマハナダイがヒット。「水族館系ですね」土屋さんが笑う。姿に似合わずうまいので、もちろんキープ。それを見て土屋さんがまた笑った。シキシマハナダイってことは、浅い側は岩場のようだ。70メートル台に移ったらタマガシラが釣れた。続いてクラカケトラギスの猛攻。よし。だんだんアマダイに近づいてきた感じだぞ。
85メートルのフラットまで流れると、アタリが少なくなった。ポツポツと隊長に釣れてくる魚は相変わらずのクラカケトラギス。だがあるとき、土屋さんが自分のハリに掛かった魚を見て、思わず声を上げた。「赤いですよ!」小さいながらもれっきとしたアマダイである。いろんな手掛かりをもとに、やっとの思いで手にした1尾だけに二人とも大感激。これだからボートフィッシングはやめられないネ。いい時期ならアマダイもある程度固まるんだけど、やがて外道のアタリすら消え失せてしまった。よって移動を決断。
でも、どこへ? 残り時間も少なく、この状況でイチから出直すのはチト厳しい。しょうがない。こうなったら奥の手だ。090...と。「もしもし、丸山さん?」〈丸丸〉でおなじみの丸山 剛さんに携帯でポイントを聞いちゃえ。丸ちゃんは大のアマダイ好きで、沼津にも詳しいのだ。イチ押しの場所は淡島と木負との間の60~70メートルとのこと。
到着してすぐの1投目だった。隊長と土屋さんの二人に今日イチのアタリが来た。またもやダブルヒット。土屋さんの魚はしっかり引いて、とてもアマダイっぽい。水面を割ったのは、さすが! 見事なアマダイである。土屋さん、丸山さん、どうもありがとう!
かたや隊長の魚はもぞもぞ動く足と巨大な頭がとてもSFチックなカナド。同じ赤い魚だけど、なんでかなぁ。
冬の一日は短い。結局、この日のおもな魚は以上で打ち止め。土屋さんがアマダイを2尾釣ってくれたし、初挑戦にしては上々の釣果と納得してマリーナへ帰航した。

自分の魚も大きかった

 上々の釣果なのに2日連続の出航にはワケがある。決まってるでしょ。天日干しですよ。そのために前夜がんばって全魚種開いてきたんだから。天気は絶好の干し日和。干しカゴをウェイクゲートにぶら下げれば、日当たりたっぷりで風通しもバッチリ。もちろん、釣りもするけどね。

 初日に目標を達成できたので、2日目は大物勝負に出ることにした。作戦は志下海岸沖でヒラメをねらいながらの五目釣り。エサはマリーナ近くの釣具店で売っているアオリイカ用のアジでいい。
土屋さんはこの日も付き合ってくれて、のっけからカサゴやイトヨリダイを快調に釣ってくれている。一方、隊長は相変わらずの絶不調。五目仕掛けにはまともな魚が全然ヒットしない。
そもそも干物作りが目的だから2日目は半日の予定だった。残り時間もあとわずか。今回はこれまでかと諦めかけたころ、エサのアジがにわかに暴れだした。ついにビッグチャンスが到来!?
サオ先を激しく揺さぶるアタリのあと、本アタリを待つまでもなくサオ先が海面に食い込んだ。すかさず合わせようとしたものの、サオが立つどころかラインが出される一方でなかなか海底を離れない。しかも、いったん底を離れてからはけっこうおとなしくなった。やった!このファイトはヒラメに違いない!
もうヒラメを釣ったつもりで土屋さんにネットをお願いし、魚を水面まで浮かせたら、あれ? 体が細いぞォ。ヒラメには特大の生きアジに食いついたそやつはなんと巨大なエソだとさ。ありゃま。
干物も上々に仕上がったし、最後にしっかりオチがついたところで沼津の釣査は一件落着。

しっかり天日干しにした干物はもちろん全部家でたいらげました。どれもおいしかったけど、やっぱりいちばんはアマダイかな。みなさんも沼津の中深場干物五目、ぜひどうぞ。すごくおいしいですよ。都心からけっこう近いのに、緑が多くて静かな雰囲気の沼津の海。浅場から深場まで、ほどよい広さにいろんな要素がぎゅっと詰まっていて、四季それぞれにいろんな釣りが楽しめそうだ。次は夏にこれまた大好物のメジとカツオをねらいに来よう。

隊長:齋藤海仁(かいじん)

【隊長:齋藤海仁(かいじん)】

初日の釣査を終え、宿に戻って全魚種を開く隊長の図。うれしそうでしょ。だって干物が好きなんだもの。自然と笑みもこぼれます。追伸:編集長殿、増ページありがとうございました。

ロコ・アングラー

【ロコ・アングラー】

土屋忠士(つちや・ただし)さん
地元沼津の出身で、釣り好きが高じてマリーナで働くようになったボートフィッシングフリーク。今回は隊長の代わりに大活躍。以前は沖縄の小浜島でフィッシングガイドをしていた、なんともうらやましい釣り歴の持ち主。

釣果カレンダー

釣魚カレンダー

内浦湾の特徴はなんといっても深さ。岸から少し離れただけですぐに水深30メートルを超えるような場所がほとんどだ。そのため沖の根周りでも、マダイやイサキ、アジ、イナダのほか、思わぬ深場の魚がヒットすることもあり、中深場以上の魚種の豊富さはピカイチ。アマダイをはじめとする中深場のターゲットや、夏にはメジ、カツオも手軽にねらえるユニークなエリアである。

内浦湾周辺のフィールドマップ

内浦湾周辺のフィールドマップ

内浦湾は北、東、南の三方を山に囲まれており、比較的穏やかな日が多い。唯一弱いのが西寄りの風。特に冬は西風が吹きがちのため要注意。岸沿いには養殖イカダが多く、地元の小船が舫うこともあるが、クラブ艇の係留は厳禁だ。また、淡島周りでは、往来の激しい水道部分と、定期船の航路は避けて釣りをすること。なお、ボートによる淡島への上陸は禁止されている。

ヤマハマリーナ沼津

都心から 2時間圏内のわりには静かで落ち着きがあり、どことなく隠れ家的なムードが漂う。マリンクラブ会員には、施設使用料525円で駐車場とシャワー、クラブハウスなどの上質なサービスを提供。オーナー艇は全艇陸上保管で、大型艇の比率が高い。オーナーを対象に釣り大会を年4回開催するなど釣りにも力を入れている。

■交通アクセス
車利用=東名高速道路沼津ICから国道414号を通り約15km  
電車利用=JR沼津駅からタクシーで約20分<

■問い合わせ先
住所:〒410-0103静岡県沼津市江浦514
TEL:055-939-0311
URL:https://numazu.yamaha-marina.co.jp/

今回使用したタックル

アマダイを積極的に誘って釣るスタイルには、操作性が高いながらも食い込みのよい8:2調子程度のサオが使いやすい。中深場の手前船頭には、片手でクラッチのオン/オフからチョイ巻きまでこなせる小型電動リールが必須だ。仕掛けは吹き流しの2本バリで、ハリスは2.5~3号が定番。スタイルの多様化にともなって、市販仕掛けのバリエーションも増えてきている。釣り方とあわせていろいろ試してみよう。

【ROD】
ダイワ・リーディング XA-82 (左)は、軽さと感度を重視した8:2の先調子設計。積極的に誘うアマダイはもちろん、さまざまなターゲットに使える汎用ドウヅキロッド。
●全長:1.90m
●継ぎ数:2本
●自重:160g
●オモリ負荷:40~130号

ダイワ・リーディングXA-55 205III(右)は、5:5調子のワンピースムーチングロッド。マダイ、アジ、イサキ、ワラサなどのコマセ五目や、手持ちのヒラメにも最適。
●全長:2.05m
●継ぎ数:1本
●自重:165g
●オモリ負荷:25~130号

【REEL】
ダイワ・シーボーグ300FB (左)は、PE4号が300m巻けて、楽に手持ちで使える小型電動リール。コードレスバッテリー「BM2000」をセットすればストレスフリーの釣りが実現。
●イト巻き量:PE4号300m
●自重:530g
●ボールベアリング:18個

ダイワ・ミリオネアCV-Z250SF(右)は、アルミニウムの超精密オールマシンカットフレームによる小型両軸受けリールの最高峰。中深場やヒラメ釣りなどにも幅広く対応。
●イト巻き量:PE3号240m
●自重:350g
●巻き取り長さ60cm/回転

今回はコードレスバッテリー「BM2000」専用のカバーを使った。3ミリ厚のネオプレーン素材が傷や破損を守るほか、保温効果により厳寒期にも電圧の低下を防ぐ。バッテリーの落下を防ぐベルトも付属。

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