Vol.18 福井県・小浜湾
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は福井県・小浜湾のアオリイカ・シロギスをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回は福井県小浜湾に新しくオープンしたマリーナで、日本海のエキサイティングな釣りにチャレンジ。ボート倶楽部2007年12月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
日本海で大コーフン
秋――。
いい季節がやって来ましたネ。台風以外、海はあんまり荒れないし、魚の脂も乗り始める。なによりよく釣れるのがボートアングラーにはうれしいところ。その証拠に、釣査隊の過去の釣果は秋がダントツにいいんですな。ワラサが大当たりしたり、尺メバルがヒットしたり、ブッコミ五目でおいしい思いをしたり。シースタイルで初めて遠征釣行をするなら、はっきり言って秋がねらいめです。
そんな時期だから、釣査エリア選びにも力が入る。落ちのマダイに戻りガツオ。ワラサもいいし、アオリイカの新子もうまい。じんわり脂が乗ってくる底ものも捨てがたいなァ。
え?それは釣りじゃなくて味だろうって? そのとおり。でも、旬は釣りの好期でもある。なんといってもその魚がいちばん元気なときだからね。
で、例によってシースタイルのサイトで「ホームマリーナ一覧」を見ていたら、小浜湾の「うみんぴあ大飯マリーナ」に目が釘付けになった。担当者がこんなことを言ってるゾ。
「2007年4月1日にオープンした当マリーナでは、YF-23、YF-21、AS-21の3艇をご用意しております。少し船を走らせれば絶好の釣りポイントが点在! ......日本海でエキサイティングなマリンライフをお楽しみ下さい」
フィッシングボートが2艇あるのは釣りに力を入れている証拠。若狭湾なら魚種も豊富なはず。よし、今回はここに決めたっ。念のために言っとくけど、決してHPに出てくる女性担当者が美人だからではありませんヨ。
ブラック・ブラザーズ登場?
うみんぴあ大飯マリーナは、舞鶴若狭自動車道の小浜西インターから5キロほど。海沿いの国道を走ってすぐに到着した。
ロコアングラーのアテがあるというので、今回はマリーナに手配をお願いしておいた。レンタル担当の森内さんに聞くと、うみんぴあ大飯にフネを保管するエキスパートで、すでにボートに来ているという。さっそく桟橋に行ってビックリ仰天。見事に真っ黒なお方が2人。ごていねいに背格好からウエアまでお揃いだ。
「こちらがうみんぴあの保管艇オーナー第1号の前川さん。こちらが2艇目のオーナーの山本さんです」
うみんぴあのブルース?ブルックス?いや、ブラック?ブラザーズか!?紹介する森内さんの言葉を聞いて、隊長は思わず笑って自己紹介。そんな失礼にもかかわらず、関西ノリの2人は実にフランクだ。
「2人とも真っ黒なのは偶然ですわ」
「今日はアオリイカねらうってゆうてたからな」
「ぎょうさん釣れてるんですよ。マジメにやったら軽く100パイはいけますわ」
「せやけど2人ともホンマ同じ格好やな」
「"うみんぴあ1号・2号"って感じですね」
「隊長も言いよるなァ(笑)」
楽しい1日になりそうだ。
さすが23フィートのYF-23EX。アンカリングして3人でサオを出しても余裕たっぷり。バウとスターンのアングラーの距離も十分だから、多少風があっても釣りやすい。
夕暮れの小浜湾。右奥に見える山が通称"若狭富士"の青葉山。とことん美しい海だ。
沸いて出てくるアオリイカ
小浜湾は湾口をカニのハサミで囲んだような閉鎖的な形をしている。アオリイカのポイントは湾を出て東側、蘇洞門と呼ばれる断崖の磯際とのこと。
マリーナから20分ほど走り、湾の外に出ると、視界が大きく開けた。蘇洞門は右手に見える内外海半島の少し先だった。切り立ったリアス式海岸には、海食洞や大きな滝があり、壮観そのもの。さすが江戸時代から有名な景勝地だ。
釣り方はアンカリングしてのエギのキャスティング。投錨する水深は10メートル以内と浅く、この日はちょうど滝の前にアンカリングした。
秋はイカがまだ小さいので、エギのサイズは2・5~3号。キャスト後にいったん底までエギを沈めてから、チョンチョンチョンと小刻みに段をつけたシャクリでボート際まで探ってくる。秋はアオリが浮きやすく、探りの途中でまた底まで沈める必要はないという。
ホントに100パイも釣れるのかなあ、と内心疑いつつも釣りを開始して数投。1パイ目は隊長に来た。
確かにすぐ釣れた。でも、これほどとは思ってもみなかった。ずっと同じスポットに投げ続けていた前川さんがワンキャスト・ワンヒット劇場を披露。とめどなくイカが湧いてくるような釣れっぷりにしばしボー然......。これなら「100パイいけますわ」も納得だ。
「秋のアオリイカは同じところにエギを投げ続けていると集まってくるんですよ。いいときなんか、イカをイケスに移す間にエギを海に入れとくだけで乗りよる」
なるほど。それでずっと一カ所にキャストしてたわけか。
山本さんも隊長もぽつぽつとアオリイカを追加し、かれこれ1時間ほどたったころ。釣査隊的にイカはもう十分なので、次のメニューをお願いしたら、ブラザーズはまた過激なことをおっしゃる。
「シロギスをやりましょか」
「電動リールのシロギス釣りや。水深40~50メートルで、オモリは35号」
35号のオモリに電動リールのシロギス釣りなんて聞いたことない。
ポイントは蘇洞門の真沖で、移動はあっという間。今度は流し釣りだが、潮も風もさほどなく、操船しなくても大丈夫そうだ。
1尾目はまたもや隊長だった。水深40メートルでこのヘビータックルでもアタリとヒキはしっかり伝わってくる。上がってきたのはまずまずのシロギス。聞けば、深場を釣る理由は型がいいからとのこと。
シロギスでは山本さんが大活躍。仕掛けを上げるたびに良型をキャッチする。一方、アオリイカが絶好調だった前川さんは、なぜかベラばかり。1人だけベラしか釣らないのはどうして?それはそれで難しいと思うんだけど......。
ひとしきりシロギス釣りを楽しんだあとは、マリーナに戻ってお昼を食べることにした。クラブハウスの2階に人気のイタリア料理店があるという。とりあえず釣果は確保できたし、ランチのあとはグリと呼ばれる沖根周りでブリとマダイでもねらうとしよう。
アオリイカのポイントは、リアス式海岸が美しい蘇洞門前。奥には白糸の滝が。これまで訪れたシースタイルのゲレンデの中でも一、二を争う絶景だろう。今回はロコアングラーがいたので特別だったけど、湾外に出られるのは4回目の利用からになる。
右舷側で釣っている前川さんが入れ乗りになったと思ったら、山本さんまでノリノリに。タモ係も大忙しだ。
釣りを開始してすぐ1パイめをヒット。これでボウズはないとひと安心したんだけど、そんな心配はまったく不要だった。
アオリイカのポイントの沖、水深40~50メートルのエリアでシロギスが釣れる。流し釣りでねらうがご覧のとおり風も波も潮も穏やかだったので、操船は不要。豪快なシロギス釣りだった。
"礁"と書いて"グリ"
名物のオムライスはうわさどおりうまかった。特にソースが絶妙。パスタもピザもおいしくて、「カフェ・ティーポート」、小浜に来たらぜひお試しあれ。
なんて話をしてる場合じゃない。そろそろページも残り少なくなってきた。さっそく午後の部のポイントである高手礁へひとっ飛び。
高手礁の地形はこれぞ沖の単独根というくらい理想的で、水深50~60メートルから一気に20メートル弱まで立ち上がる。ターゲットはブリ、ヒラマサ、マダイ、キジハタなどが代表格。そこで釣り方はルアーを選択した。オキアミエサでも釣れるけど、外道がやたらに多いらしい。青ものはジギングでバッチリ。マダイとキジハタはタイカブラでOK。ちなみに、「礁」を「グリ」と読むのは若狭流ですね。
最初は全員マダイねらいでタイカブラにトライ。水深40~50メートルでの流し釣りだ。まずは潮流を見るために60グラムのタイカブラを投入。すると、なんてこった!潮がほとんど動いてない......。
「こりゃあかんなあ」
「せやけど、まあやってみましょ」
「そうやったわ」
条件は悪いのにブラザーズは意外にもやる気満々だ。どうも最近仲間の1人がタイカブラでいい思いをし、まだタイカブラで釣ったことのない2人としては「なにがなんでも1尾釣らなきゃ」ということらしい。
よって隊長がお2人に釣り方を教えて差し上げた。とはいえ、底まで落としてゆっくり巻き上げるだけだから、教えるもなにもないんだけど。アワセもいらないし。
スペースが残りわずかなので結果だけ書くと、タイカブラで釣れたのは隊長のカサゴだけ。あとはアタリがなくてシビレを切らした前川さんが(その気持ち、よくわかります)、ジギングでハマチを2尾キャッチ。それと、雑魚ねらいのサビキ仕掛けでキジハタが釣れた。残念ながら山本さんはノーヒットだったものの、超豪快な電動ジギングの勇姿はみなさんにお見せしたかったなァ。
今年は海水温が異常に高くて、このときでもまだ30度近くあり、青ものにもマダイにも時期が早かったようだ。あとひと月先だったら、ブリ、ヒラマサ、マダイ......きっとすごかったんだろう......残念。
好ポイントがたくさんありすぎて、足早にしか釣査できなかったけれど、小浜湾とその外に広がる若狭湾は確かにエキサイティングだった。緑濃いリアス式海岸はとても美しく、そんな美しい大地の近くには、当然、魚がたくさんいるに決まっている。うみんぴあ大飯マリーナにボートを置く、前川さんと山本さんがつくづくうらやましい。素直にそう思う隊長でありました。
隊長のタイカブラにヒット! ブラザーズが興味津々覗きこむ。
前川さんがジギングでハマチをキャッチ! まだ水温が高く青ものには時期が早いらしいが、秋が深まれば良型のブリ、ヒラマサがヒットするという。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
また食いものかよ!! でも魚がうまいとかまずいとかいつも言ってるから仕方ないか。魚屋 藤田商店でサバをぬか漬けにした若狭湾名物「へしこ」を購入。酒のつまみやお茶漬けに、ぜひ。
【ロコ・アングラー】
山本富三(やまもと・とみぞう)さん(右)と前川国康(まえかわ・くにやす)さん。お二人ともうみんぴあ大飯にボートを置くエキスパートアングラー。若狭湾歴はとても長く、ポイントも釣法も知りつくしていた。
【クラブ艇】
うみんぴあ大飯のクラブ艇は、AS-21、YF-21、YF-23EXの3種類。そのなかから、今回はロコアングラーがお2人いて、カメラマンも乗り込むので、広々キャビンとアフトコクピットで、釣りやクルージングがリッチに楽しめるYF-23EXをチョイスした。
クラブ艇のフィッシングボートのラインナップ中、もっともグレードの高いYF-23EXならではの充実したキャビン内。もちろん電動トイレも完備なので、仲間やファミリーにはとくにおすすめですね。
できたてホヤホヤのマリーナは、当たり前だけどどこもピカピカで気持ちいい。こんなマリーナならマイボートを置きたくなっちゃう。保管艇はまだ募集中だそうで。
シースタイルのサイトで見つけた担当者の森内かおりさんに受け付けをしてもらって、ちょっとうれしそうな隊長。役得です。
アオリイカはアンカリングしてねらった。ダンフォース型+チェーンで利きはばっちり。アンカーローラーもしっかりしていて、上げ下ろしは楽チンだ。
これナニに見える? 通称「夫婦亀岩」。う~む、確かにそういわれればそうだけど......。
大門小門、小山通洞など、海食洞がたくさんある蘇洞門。外海に面しているということで、以前は「外面」と表記したが、江戸時代に気取って「蘇洞門」と書くようになったそうだ。
ダブルヒットも何度あったことか。隊長はイカの代わりにタモでイェーイ!!
秋イカは寄せて釣るもの、と前川さん。恐れ入りました。
やや小ぶりだけど、この時期のアオリはとてもうまい。でも、釣りすぎには要注意。
イカのスミがボートに付いたらソッコーで掃除すべし。さもないと取れなくなっちゃう。クラブ艇にスミ跡を付けるのはマナー違反ですから。
オモリ35号で電動リールのシロギス釣りなんて初めて。これが意外にヒキが強くて、しかも、深いからファイトが長く楽しめる。いい場所に当たれば25~30センチがまとまるとのこと。
「いつもはもっとサイズがいいんやけど」と言いながらシロギスを連発した山本さん。参りました。
タイカブラに唯一ヒットしたのはカサゴ。残念ながらマダイは釣れなかったけど、うれしいゲストだ。
少しやりづらいけれど、窓から手を入れて手前船頭は可能。だが、手前船頭がメインならYF-23EXよりもYF-21がベターかもしれない。
2尾目のハマチ。魚探にベイトフィッシュの反応が出たとたんにヒットした。
マリーナのクラブハウス2階にある、明るくて広々とした「カフェ・ティーポート」の店内。料理がおいしいうえ雰囲気もいい。気軽に入れるので、地元で人気というのもうなずける。
「カフェ・ティーポート」イチ押しのオムライス。トマトソースとケチャップを混ぜたオリジナルソースがとてもイケてる。
ランチタイム:午前11時~午後2時(平日は午前11時30分~)、カフェタイム:午後2~5時、ビストロタイム:午後6時30分~午後10時 定休日:火、水曜 TEL:0770-77-2414
釣果カレンダー
フィールドは大きく小浜湾内と湾外に分けられる。湾内はシロギス、アジ、カワハギなどが各所でねらえるが、全体に小ぶり。海はとても穏やかなので、ファミリーやビギナーにぴったりだろう。湾外はグリ呼ばれる根と人工魚礁のベイトフィッシュパターンがメイン。アオリイカ、カサゴ、シロギス、ヤリイカ、サワラ、カマスなどに関しては、明確なポイントはないのでまずは広範囲を探ってみよう。(※マリーナの規定により、湾外に出られるのは利用4回目以降から)
小浜湾周辺のフィールドマップ
東西20キロ弱、南北約7キロと広いのに、湾口部は2.4キロしかない閉鎖性海域のため、湾内は滅多に荒れない。12~2月は季節風が強く、湾外は荒れる日が増えるものの、湾内であれば冬でもほぼ出航OKだ。危険な浅瀬は鋸埼周辺くらいと少ない。湾内のイカダの近くを通るときは徐行がマナー。湾内の東端は係留艇が多いので侵入は遠慮しよう。
取材当日の釣果。アオリイカ、シロギス、ハマチの一部はリリースした。とても全部は持って帰れないからね。
山本さんがオキアミを付けたドウヅキ仕掛けを試したところ、チャリコ(マダイ)がヒット。
初日はタイカブラの釣果がいまひとつだったので、実は2日目も午前中だけボートを出した。前川さんはご覧のキジハタをキャッチ。
小浜湾の東端にある「魚屋 藤田商店」は、漁師から直接魚を仕入れていて、新鮮な魚が豊富。また近くで釣具店も営んでいて、ムシエサ、冷凍エサだけでなく、生きエサも扱っている。小浜湾周辺の釣り情報にもめっぽう詳しい。
■魚屋 藤田商店
福井県小浜市阿納尻60
TEL:0770-52-2236
営業時間:午前9時~午後5時 不定休
■藤田釣具店
福井県小浜市甲ヶ崎24-33
TEL:0770-52-5098
営業時間:夜明け~午後8時 不定休
うみんぴあ大飯マリーナ
07年4月にオープンしたばかりで、ボーティングの施設が充実しているのはもちろんのこと、今後さらにホテル、温浴施設、大型映像シアター、こども家族館などがオープンする予定。若狭湾の一大アミューズメントスポットになるのは確実だ。海上係留、陸上保管ともにまだ空きがあるので、関心のある方はお早めにどうぞ。
■交通アクセス
車利用=舞鶴若狭自動車道小浜西ICから約5km
■問い合わせ先
〒919-2107 福井県大飯郡おおい町成海1-16-2
TEL:0770-77-2410
URL:http://www.uminpia.com/
海上係留104艇、陸上保管70艇のキャパを誇る大型マリーナ。シースタイル利用者は施設使用料500円で駐車場やシャワーなどが利用可能。使用後の洗艇、フラッシングが無料でお願いできるのはありがたい。
サブマスターの阿部 弘(あべ・ひろし)さんは、外国航路の船員という経歴もあるベテランシーマンだ。
今回使用したタックル
秋のアオリイカはサイズが小さく、水深も浅いので、エギは2.5~3号が標準。ロッドはエギのサイズに合わせた専用ザオがベスト。ボートではやや短めが使いやすい。その他の釣りでは、ねらえる魚種が豊富なため、守備範囲の広いサオが便利ということで、汎用性の高いドウヅキザオをチョイスした。これにリールを替えて使い回せばさまざまなターゲットに対応できる。
【ROD】ダイワ「リーディングXA-64III」は、しなやかさ、感度、操作性のバランスが絶妙な6対4調子のライトゲームロッド。ターゲットが自在に選べるボートフィッシングでは、その汎用性の広さが最大のメリットとなる。今回も当初予定していなかった深場のシロギスやタイラバーなどで大活躍。迷ったらぜひ持っていきたい1本。
●全長:1.90m ●継ぎ数:1本 ●自重:145g ●オモリ負荷:20~60号
【REEL】ダイワ「シーボーグ150S」は、手持ちの釣りが多いボートフィッシングには最適な、超小型軽量電動リール。片手でタナ取りから巻き上げまでできる操作性は、手前船頭をしながらの釣りには最大の武器になる。強度がアップした新世代のPE2号を200メートル巻いておけば、幅広い釣りに対応できる。
●ギア比:1対4.8 ●イト巻き量:PE2号200m ●自重:425g ●ボールベアリング:19個 ●空巻きHIスピード:150m/分
片手でしっかりホールド、操作ができるシーボーグ150S。コードレスバッテリーBM2000を使用すれば、釣り座を自由に移動できる。ボート釣りでは浅場でも電動リールの使用が安全面などに有利。当日はアルミラウンドノブTYPE-IIIを装着。
タイカブラのときは、ダイワの超軽量小型両軸受けリール、「スマック・レッドチューン」を使用。左手でボートをコントロールする場合、右手でサオをホールドできる左手巻きリールが使いやすい。