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Vol.53 福井県・北潟湖

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は福井県・北潟湖のマアジ・ブリほかをご紹介。

最終回となる今回は、「吉崎屋商会」を釣査!
ボート倶楽部2016年9月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

憧れの海で楽しむボートフィッシング

インターネットの普及によって、各地の釣り情報を簡単に入手できる便利な時代になった。自分が住む神奈川の海ではなかなか釣れない魚が、別の海域では簡単に釣れるなど、その違いに驚かされることもしばしばある。
"隣の芝生は青く見える"もので、無い物ねだりなのかもしれないが、いつかはそんな海に浮かんで、思う存分に憧れの魚と対峙してみたい......。そんな気持ちになってしまう。そういった憧れの海域が全国にはいくつもあり、北陸の海もその一つ。今回、本連載の釣査先が北陸方面に決定した際、私は思わずガッツポーズした。
クラブ艇の利用先は福井県あわら市にある吉崎屋商会で、シースタイルの運営は昨年11月から開始したばかり。とはいっても、マリーナの歴史は古く、この地で40年近く続いている地元に根付いたマリーナだ。
今回、ロコアングラーとして取材に協力してくれたのは、石川県加賀市在住の戸井良平さん(45歳)。鮮魚店を営みながらの兼業漁師で、仕事で使うヤマハ・ベイフィッシャー25を吉崎屋商会から購入し、マリーナとの親交も深いという。取材の1週間ほど前に、情報収集を兼ねて戸井さんへ電話を入れてみたら、
「今なら尺アジがいいですね。ほかには青ものもキャスティングでねらえますし、キジハタなどの根魚類もよく釣れます」
と、戸井さんが自信ありげに聞かせてくれた。自ら沖に出て、水揚げした魚を販売するというだけに説得力があり、ますます取材が楽しみになってきた。

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の企画、運営に携わる。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。

【今回のロコ・アングラー】

ロコアングラーの戸井良平さん(45歳)。地元の海を知り尽くす漁師で、ヤマハ・ベイフィッシャー25を所有している

魚種の選択肢が多くポイントも近い

取材1日目。吉崎屋商会は北潟湖のほとりにあった。付近一帯の美しい自然の風景に溶け込むようなたたずまいで、とてものどかな雰囲気に囲まれている。「毎回、こんなところでボート遊びができたら、さぞかし楽しいだろうなぁ」と、想像が膨らんだ。そんな思いに浸りながら美しい朝焼けを眺めていたら、
「朝マヅメを逃さないためにも、すぐに出航しましょう!」
と、戸井さん。
「昨日もスズキを釣りましたが、朝が勝負です。今日は昼前から風が強まり、沖上がりを余儀なくされると思うので、とにかく早めに出航しましょう」 
とのこと。
釣果情報といい、天候予測といい、説明に迷いがなく明快だ。きっと、漁業者としての経験が自信となって言葉に表れているに違いない。
そんなことに感心しながら、そそくさと荷物をクラブ艇に積み込んだ。出航後、ポイントに到着するまでに、戸井さんとあらためて自己紹介を交わした。
戸井さんは石川県加賀市の出身で、東京での大学時代はスキューバダイビングに明け暮れた。そのまま東京近郊でダイビング関係の仕事に就き、17年前に故郷へUターンしてきて、前述したように鮮魚店を営みながら漁師をしている。現在は素潜りでサザエなどを採ったり、自らが釣った魚を全国各地へ出荷したりしているそうだ。
そんな話をしているうちに、クラブ艇は大聖寺川を経て日本海に出た。向かったのは、海岸沿いに北へ15分ほど進んだ加佐ノ岬周辺のシャロー(浅場)。イワシなどのベイトフィッシュを追ってシャローにいるスズキをルアーでねらう。前日、戸井さんはここで4尾釣ったらしく、ベイトさえいれば期待できるとのこと。

しかしながら、この日はベイトが少ない状況。小一時間ほどキャストを繰り返したが一度もバイトがなく、諦めざるを得なかった。
次第に風が強まる予報だったので、その前に沖合の一級ポイント"黒森"へ行ってみようということになった。だが、15分ほど走ったところで海況が悪化し始め、
「このまま向かっても、もう黒森では釣りにならないですね」
と、戸井さんはここでも明快な判断で、引き返すことを決断。風が一段と強くなったので、いったんマリーナに戻ることにした。
休憩スペースで作戦会議を行っていると、そこにはマリーナにボートを保管しているオーナーさんたちも集まり、最新の釣果情報を交換し合う、なごやかな空間が出来上がった。オーナーさんたちはいろいろなアドバイスをくれたのだが、その中の一つ、
「"芝政沖"でアジやチダイをねらうのが手堅くていいんじゃない?」
という言葉を信じ、コマセを積み込んで、14時すぎに再出航。風は弱まっていた。
マリーナから20分ほどで芝政沖に到着し、魚群探知機でマアジの反応を探してアンカーを打つ。すると、コマセを打ち始めて5分くらいで小さなアタリが届き、サオを立てると思いのほか強いヒキでサオが曲がった。

この日の初釣果なので慎重にリールのハンドルを回すと、水面下に良型のマアジが見えてきた。ヤッター! と抜き上げようとしたら、ハリが外れて水中へポトン。喜び勇んで、マアジは口元が弱いことをすっかり忘れてしまっていた。
気を取り直して仕掛けを再投入するとすぐにアタリが届き、今度は慎重にタモ取りして、30センチ級のマアジをゲット! 次の投入でもすぐに同サイズがヒットし、入れ食いタイムに突入した。右舷側からサオを出していた戸井さんは、チダイばかりを掛けていた。きっとタナが違うはず......。そう思ってやや低めのタナにしたら、私にもチダイがきた。戸井さんもタナを変更してマアジをゲットし、2人でマアジとチダイのフィーバーを楽しんだ。

そして、イケス内に多くの魚が入ったところで、日が傾いてきたこともあり、これにて納竿。
「今日の釣果だけでも、誌面を飾るには十分な魚種と釣果でしたよ。本当にありがとうございました」
と言うと、
「じゃあ、明日は海況もよさそうですし、"大物ねらい"という冒険をしてみましょうか!」
と、戸井さんから提案があった。
「いいですね〜!」
翌日へのワクワク感MAXで1日目が終わった。

トリヤマに遭遇!大物ゲットで大満足

2日目は予報通り、晴天で波も穏やかな絶好の釣り日和となった。沖合へ向けてボートを進めると、鏡のような海面がキラキラと輝き、夏の到来を感じさせる光景が広がった。でも、こんな日は案外、何も釣れない、いわゆる"凪倒れ"となるケースもよくあるんだよなぁ......と、心の中で一抹の不安を感じつつも、戸井さんがハンドルを握って向かう行き先へ目を向けていた。すると、途中でトリヤマを発見した。
「なにか小魚がいるんでしょうねぇ〜。下から大物に追われているみたいですね!」(小野)
「恐らくそうだと思います。ゆっくり近づいてみましょう」
と言って、戸井さんはデッドスローでトリヤマに近づいてくれた。すると、海面に時折大きな魚が水柱を立てているではないか!
「あっ、出てる、出てる! 大物がいますよ!」
と、大興奮する私。大慌てでルアーをセットし、バウ側でナブラめがけてルアーをキャストする。3投目でヒットし、リールのスプールが回転し、ラインが引き出された。思いのほか強いヒキに緊張が走ったが、事前に戸井さんから言われた通り、ブリを意識したタックルを用意していたので、安心してやり取りができた。

そして、戸井さんが出してくれたタモに収まったのは、6キロ級のブリ。戸井さんとがっちり握手を交わし、大物ゲットの喜びを分かち合った。
同行した清水記者が、まるで自分のことのように喜んでいたので、
「このルアーを使って投げてごらんよ!」
と手渡すと、即ヒットし、同サイズを釣り上げた。もっと釣れそうな雰囲気はあったが、たくさん釣ることよりも魚種を増やしたかったわれわれは、次なるターゲットの底物をねらうため、魚礁周りの釣り場へ移動した。

ここではジギングタックルにインチクをセットし、海底付近を中心に攻める作戦だ。インチクは着底と同時に跳ね上げないと根掛かりする恐れがあったので、とにかくそのことだけを注意し、リフト&フォールを繰り返した。このアクションがよかったのか、アコウ(キジハタ)とアイナメを立て続けにゲットできた。
まぁ、この釣果も、戸井さんによる魚探を見ながらの、きめ細かな操船のおかげだが......と、こんな感じで、2日目は順調に釣果が得られ、当初の予定よりも早い沖上がり。大満足の結果に終わった。

釣果カレンダー

魚種が多く魚影が濃い海域なので、一年を通じて魚が釣れる。しかし、海が荒れやすい12月から3月までがオフシーズンとなるので、実質的には4月から11月までの8カ月間が、ボートフィッシングのオンシーズンとなる。釣りたい魚の好期を狙って釣行すれば満足のいく釣果が得られる確率が高く、豊かな海を求めて関東や関西方面からも熱心なアングラーが集まる人気の海域だ。

吉崎屋商会周辺のフィールドマップ

マリーナの所在地は福井県だが、ちょうど石川県との県境付近に位置する。そのため、ボートフィッシングを楽しむフィールドは石川県の沖合であったり、福井県の沖合であったりするが、この海域は加賀沖と呼ばれている。航行区域の西側には見事な岸壁の景観が有名な東尋坊(とうじんぼう)や雄島(おしま)があり、東側には加佐ノ岬がある。なお、この海域では、全体的に砂底地が多く、魚を寄せるための人工魚礁が多く沈められている。

吉崎屋商会

福井県あわら市にある吉崎屋商会は、40年近く前からこの地でボート関連の販売、整備、保管などを行っている。シースタイルを始めたのは2015年11月からと歴史は浅いが、釣り場までの距離が近いことと、豊かな海に恵まれていることもあって、クラブ艇利用の人気は上々とのこと。また、早朝利用にも柔軟に対応していることも、アングラーにとっては魅力的であり、リピーターが多い理由だという。

今回使用したタックル

ブリをトップウオータールアーでねらうキャスティングタックルは、10キロ級の魚がヒットしても耐えられるロッドとスピニングリールを用意した。一方、根魚をねらうインチク用には、バーチカルジギングタックルを流用した。図示していないが、ほかにもサビキ仕掛けでのマアジねらい用として7:3調子の汎用(はんよう)ザオに、小型電動リールとコードレスリチウムイオンバッテリーを用意した。

シースタイルで楽しむ島国日本の海

実は、本連載は今回が最終回。本誌2003年12月号から、初代釣査隊隊長の齋藤海仁さんによってスタートした当連載は、11年6月号から私が隊長を引き継ぎ、約5年間かけて、22カ所のホームマリーナを訪問させていただきました。
各地で出会ったロコアングラーやマリーナスタッフ、さらには保管艇オーナーさんたちとの楽しい会話など、思い出がいっぱいです。
連載が終わっても、この楽しさは継続して味わいたいので、今後はシースタイルの一会員として、各地のホームマリーナを巡っていきたいと思っています。
こんな、旅とボートフィッシングの両立ができるのは、全国約140カ所でクラブ艇を利用できる、ヤマハマリンクラブ・シースタイルならでは。島国日本を思う存分楽しめる、素晴らしいシステムだと思うので、少しでも多くの人にこの楽しさを知っていただきたい......と切に願いつつ、ペンを置きます。ありがとうございました。

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