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ヤマハマリンクラブ・シースタイル

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Vol.33 和歌山県・由良湾

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は和歌山県・由良湾のイサキ・カサゴほかをご紹介。

この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。

今回は和歌山県の中紀、由良湾の奥に位置するナカヤマリーナから釣査。日ノ御埼や白崎沖などの超一級エリアが近い、魅惑のホームマリーナだ。ボート倶楽部2011年9月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

房総ゆかりの紀州へ

学生時代は歴史といった分野に興味がなく、教科書を読むのも苦痛に思えた。そんな私も、いまではさまざまなものに対し、歴史やルーツをたどってみることがおもしろくなってきた。年を取ったせいだろうか?特にフネや釣りなど、興味があることに対しては時間を忘れ、夢中になって調べたりもする。
私がマイボートでよく浮かぶ千葉県・房総半島の海は、黒潮の恩恵で好漁場が形成され、古くから漁業がさかんに行われてきた。しかし、房総における漁業が発展したのは、ほかの土地のすぐれた漁法を取り入れたことも大きな理由の一つだと、以前訪問した安房博物館(現・館山市立博物館分館)で知った。
その代表例が、紀州(現在の和歌山県)漁師の漁法で、江戸時代に有能な紀州漁師が房総へ移り住み、最先端の漁法を広めたらしい。房総半島にある勝浦や白浜といった地名は、紀伊半島の地名から伝来したとする説がある。また魚料理に欠かせないしょうゆも、国内における発祥の地は紀州で、いまでこそ千葉県にはキッコーマンやヤマサ醤油などの大手メーカーが存在するが、元をたどれば紀州からの伝来物だとか。
いろいろ調べているうちに、無性に紀州へ釣行したくなってきた。よーし、今回の釣査エリアは、ホームゲレンデの房総と古くから深い関わりのある、和歌山に決定だ!
和歌山県内には、シースタイルのホームマリーナが5カ所ある。どこにしようか迷いながら、それぞれの土地の歴史を調べてみた。すると、そのうちの1カ所が偶然にも、しょうゆ発祥の地とされる日高郡由良町だった。今回の釣査は、由良町のナカヤマリーナに決定だ!

驚きの早朝出航

由良町は、中紀と呼ばれる、和歌山県のほぼ中央に位置する。以前ははるか遠い地のような印象を持っていたが、近年、阪和自動車道や湯浅御坊道路が発達したおかげで、アクセスが非常によくなっている。由良湾は天然の良港で、湾奥にある大きな造船所のすぐ横にナカヤマリーナは存在する。40年近くもこの地で営業している老舗だが、アットホームな雰囲気のマリーナである。
早朝の5時に訪問したが、中家社長と息子の賢治さんが「お待ちしていました」と笑顔で迎えてくれた。この時刻の訪問が、取材だから特別というわけではないから驚きだ。
ナカヤマリーナでは、日の出時刻からシースタイル艇の利用が可能となっている。「シースタイル利用のお客様は釣りを楽しむ人ばかりですから、朝早いほうが喜ばれるのですよ」と中家社長。
これは確かに釣り人にとってうれしい配慮。魚の活性が高い、朝マヅメをねらうことができる。また、真夏の暑い時期でも、早朝の涼しい時間帯に利用すれば暑さ対策にもなる。
乗船するYF-21がクレーンで海へ下ろされた。実はこのクラブ艇、前日に進水したばかりとのこと。新しいフネはやはり気持ちがいいものだ。ロッドスタンド、ロッドホルダー、ウインドラス、GPS魚探など、釣り艤装もバッチリである。
今回のロコアングラーは、マリーナの釣り名人である岡田恵司さんで、聞けば、昨シーズンのマリーナ釣り大会におけるマダイ部門のチャンピオンで、毎週末、マイボートで釣りを楽しんでいるつわものだとか。
あいさつのあと、取材の趣旨を簡単に説明すると、「こちらこそいろいろ教えてください」と、とても低姿勢でこちらのほうが恐縮してしまった。温厚で人当たりのいい岡田さんに出会えたことで、なんだか楽しい一日になりそうな予感がした。

イサキの活性は高いぞ

今回のメインターゲットは、好結果が続いていた大イサキ。今シーズン、すでに40センチ級のイサキを実際に何尾も釣り上げている岡田さんが水先案内人ということで、大船に乗った気分で出航した。
緑豊かなリアス式海岸の由良湾内を航行し、湾外に出たところで舵を南に向け、日ノ御埼方面へ向かった。空は快晴、湾外の海もベタ凪で気分は最高だ。
岡田さんイチオシのポイント付近には、すでに多くのボートが浮かんでいた。魚探でイサキらしき反応を見つけたら、風と潮流でフネが流される方向を考慮し、アンカー投入。魚探画面を見ながらロープを伸ばし、反応が現れた位置でクリートに固定する。
その際、他船との距離を確保するのは当然だが、この海域では、潮下へ仕掛けをかなり流すウキ流し釣法がさかんに行われているので、じゃまにならないようアンカリングする必要がある。
開始早々、岡田さんがウリンボウ(イサキの子ども)を釣り上げ、私もすぐ同サイズを釣り上げた。「もっと大きいのを釣らないと......」と岡田さんは苦笑するが、私はむしろイサキの活性が高いことがわかり、ホッとしていた。

ウリンボウが釣れ続けるなか、強烈なヒキがロッドを大きく曲げた。マダイかな?と慎重にやり取りしたが、テンビンを回収してハリスを手繰り始めると、横走りが始まった。釣れ上がったのはゴマサバ。しかし、丸々太った40センチ級なのでイケスにキープした。
辛抱強く2時間ほど粘って、岡田さんがようやく30センチオーバーのイサキを釣り上げた。「ホッとしました」と満面の笑みを浮かべる岡田さん。プレッシャーから解き放たれたような安堵の表情を浮かべていた。

その後は良型イサキが釣れないばかりか、ウリンボウの活性も下がったので、釣り場を白崎方面まで大きく移動した。
白崎を初めて見たが、石灰岩の岩肌はまるで氷山のようにも見え、和歌山の海に浮かびながらも南極の海に浮かんでいるかのような錯覚に陥った。
白崎の沖合にあるアシカ島周辺には、多くのプレジャーボートがアンカリングしていた。ここでもイサキの数釣りは楽しめたが、釣れ上がるのはやはりリリースサイズばかり。

午後1時過ぎ、風が強まり、波も高まり始めたので、由良湾内へ移動し、シロギスをねらうことにした。ここで驚いたのは、シロギスではなくチャリコ(マダイの子ども)が次から次へと釣れてしまうこと。
和歌山県では13センチ以下のマダイはリリースするルールがあるが、13センチにも遠くおよばない、5センチ程度のミニミニサイズばかり釣れ上がる。まるで釣具店のレジ付近で売っている、マダイのキーホルダーのような大きさだ。もちろん、弱らせないよう細心の注意を払いながらリリースするが、このサイズがこんなにたくさんいるということは、湾内に産卵に適したアマモ場があるに違いない。そして由良湾の沖合には、大きく成長したマダイが群れているはず......そんなことを思いながら翌日のマダイ釣りに期待して、午後3時過ぎに沖上がり。

由良湾湾内でも楽しめる

2日目は、いまにも雨が降り出しそうな曇天で、風も初日以上に強かった。タイラバーか一つテンヤ釣法でマダイをねらおうと出航したが、やはり外は大荒れなので、湾内に戻って根魚をねらうことにした。
一つテンヤに冷凍エビを付け、投入すると高確率でカサゴがヒットした。ねらう人が少ないのか、それとも湾内が魚にとっての楽園となっているのか?とにかく魚影が濃く、短時間ながら数釣りが楽しめた。
沖上がり後、中家社長にマリーナの特徴を尋ねると「とにかく釣り場までが近いこと」と明確な回答が返ってきた。ロコアングラーの岡田さんに尋ねても、まったく同様の回答だった。
確かに、日ノ御埼やアシカ島などの一級ポイントまでマリーナから航程20分程度なので、急に海況が変化しても安心して戻れる距離だ。このことは保管艇のオーナー以上に、シースタイル利用者にとっては大きな安心に違いない。
私がもう一つ魅力に感じたのは、荒れにくい波静かな由良湾の湾内においても、十分にボートフィッシングが楽しめる点だ。これは遠方からの利用者にとってはムダ足を踏むというリスクが少なくなり、とても大きなメリットだと思う。
そしてなにより、釣り人の気持ちを理解した利用時間の設定が、利用者やリピーターを増やす原動力になっていることは間違いない。
今回、房総半島との歴史的関わりが深い場所として訪問した和歌山だったが、それは単に訪問先選びのキッカケに過ぎなかった。
私自身、リピーターとしてナカヤマリーナを再訪する日はそう遠くないと思っている。そんなマリーナに出合えたことも、今回の釣査における収穫の一つだ。

隊長:小野信昭(おの・のぶあき)

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年東京生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の企画・運営に携わる。著書に『必釣の極意』(舵社刊)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。本誌に「Nonoの旅」を連載中。ウェブサイト「気ままな海のボート釣り」
http://homepage3.nifty.com/miniboat/

今回のロコ・アングラー

【今回のロコ・アングラー】

岡田恵司(おかだ・けいじ)さん
ナカヤマリーナにヤマハYF-21CCを所有。毎週末、大阪府貝塚市から1時間かけて由良までボートフィッシングを楽しみにやってくる、根っからの釣り好きだ。

釣果カレンダー

釣魚カレンダー

付近一帯はリアス式海岸になっており、海岸から沖へ向けて複雑な海底地形が延びている。ところどころに高根が存在し、潮流によって運び込まれる豊富なエサにより多くの魚が集まり、豊かな漁場を形成している。今回の釣査ではイサキをメインターゲットとしたが、1年を通して多くの魚種がねらえる海で、特に夏から秋にかけてはブリをはじめとした青ものの宝庫となり、エサ釣り、ジギングの両方で楽しめる。

由良湾のフィールドマップ

由良湾のフィールドマップ

日ノ御埼や白崎周辺などの紀伊を代表する一級ポイントへ、マリーナから航程20分ほどで行ける。複雑な海底地形が連なるので、GPS魚探を使いこなして自分だけのポイント探しも楽しそうな海域だ。今回の釣査では途中から海況が悪化し、由良湾の湾内をねらったが、魚種によって湾内も好ポイントであり、外海が荒れても十分にボートフィッシングが楽しめるフィールドである。

ナカヤマリーナ

由良湾の湾奥に位置する、創業40年近い老舗のマリーナ。釣り場までの距離が近いのが最大の魅力で、シースタイル利用者も大半が釣り好きだとか。予約すれば日の出時刻からの出艇が可能であり、リピーターが多いのもうなずける。2010年3月、「きいゆら海の駅」として登録された。

■交通アクセス
湯浅御坊道路広川IC→国道42号線で15分

■問い合わせ先
和歌山県日高郡由良町江ノ駒1
TEL:0738-65-1248
営業時間:午前8時~午後5時(クラブ艇の利用時間は予約により、日の出時刻~午後4時)
定休日:火曜(その他不定休あり、要確認)
http://www.n-marina.com/

今回使用したタックル

コマセ五目には、ライトゲームロッドに手返しの効率を考えた小型電動リールの組み合わせ。コマセバケツなどで足元が狭くなるので、コードレスバッテリーをセットした。さまざまなターゲットに適応する、釣査には欠かせないタックルだ。エギングにはスパイラル釣法と中オモリ釣法の両方に対応できる、汎用性の高い一つテンヤ用ロッドをチョイス。

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