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Vol.52 和歌山県・田辺

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は和歌山県・田辺の一つテンヤ五目ほかをご紹介。

今回は、南紀の「まるちょうボートステーション」を釣査!!
ボート倶楽部2016年6月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

恵まれた自然環境と頼れるロコアングラー

釣査隊隊長となって5度目の冬が訪れた。この時季になると、取材でどのホームマリーナを訪問するべきか本当に頭を悩ませることになる。というのも、やはり冬場は海が荒れやすく、さらに水温が低いために魚の活性もイマイチ。よって釣果が得られにくく、情報も少なくなるため、行き先の決定材料が乏しくなるからだ。
散々悩んだ末に今回選んだのは、和歌山県田辺市にある「まるちょうボートステーション(以下、MBS)」。理由は、MBSがリアス式海岸で囲まれた田辺湾内にあり、冬場でも比較的海況が穏やかな可能性が高く、湾内でも魚種が豊富だとの情報をキャッチしたから。
とはいえ、釣りに"絶対"という言葉が存在しないことを痛いほどわかっている私は、少しでも現況を把握したいと思い、MBSへ電話を入れた。
応対してくれたのは、ボートやカヤックのインストラクターを担当している大島克也さんで、いろいろな質問に対して明確に答えてくれた。
「決して好条件の時季とはいえませんが、海況次第で湾内、湾外を選べますし、そのどちらにも岩礁帯や砂地があるので、マダイや根魚など、さまざまな魚が釣れると思います。一つテンヤやタイラバが、多くの魚種に対応できるのでオススメの釣法です」
とのこと。私にとってこの電話は、不安から期待へと、気持ちが一気に180度転換するものとなったことは言うまでもない。
取材当日、現地へ到着すると大島さんが笑顔で迎えてくれた。やや風が吹いているものの、空は晴天なので、あいさつもそこそこにクラブ艇のヤマハYF-24で出航。

まず向かったのは、田辺湾内にある水深30メートル前後のポイント。エンジンを停止し、風と潮の影響でボートが流れる速さ、流れる方向を確認する。思いのほか船速がゆっくりだったので、ドテラ流しでも一つテンヤ釣法が可能と判断し、スピニングタックルに一つテンヤをセットし、尾羽を取った冷凍エビをていねいにハリ付けする。すると大島さんが、
「ここからボートが流れていくと、水深がいったん浅くなりますが、再び深くなっていきます。険しい岩礁が続くので根掛かりには注意が必要ですが、マダイをはじめ、オオモンハタなどが食ってくる可能性がある場所です」
と、アドバイスしてくれた。
まるで水中を見てきたかのような具体的な内容と的確なアドバイスに感心するとともに、なんだかとても釣れそうな気分になってきた。
ツリイトを垂らしながら、互いの自己紹介も兼ねていろいろ話していたら、釣り場の水中の特徴を的確に伝えてくれたことには理由があった。大島さんはかつて、オーストラリアのグレート・バリア・リーフでスキューバダイビングの水中ガイドを務めていたとのこと......。妙に納得してしまった。
そして、開始早々に大島さんのサオが曲がった。
「えっ、もう掛けたの?」とやり取りを見ていると、「イトヨリかもしれません」と、冷静な口調の大島さん。そしてなんと、釣れ上がった魚は予測通りのイトヨリダイだったので私はびっくり。

私は闘志を燃やすというよりも、大島さんがこの海のことや魚のことをよくわかっているなぁ〜と感心するとともに、とても心強く感じた。
「あっ、イカもいますね。今、テンヤのエビに抱き付いていますよ」という言葉に大島さんのサオを見ると、確かに穂先がもたれている。一つテンヤ仕掛けにはフッキングしなかったが、大島さんはすぐに仕掛けを回収し、テンヤからエギにチェンジして再投入した。しかし、残念ながらイカの乗りはなく、大島さんはすぐさま一つテンヤ仕掛けに戻した。その素早い釣法の切り替えを見ていて、大島さんは場数を踏んでいるテクニシャンだと実感した。

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の企画、運営に携わる。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。

【今回のロコ・アングラー】

ロコアングラーとして取材に協力してくれたのは、まるちょうボートステーションのボートフィッシング、カヤックフィッシング担当の大島克也さん。サービス精神旺盛な頼れるシーマンだ

浅場でもマダイがねらえる懐の深い海

イトヨリダイ以降、なかなか釣果が上がらないわれわれ2人だったが、1時間ほどすると、小気味いいヒキの小型マダイが私のサオに掛かった。しかし、その後はアタリが遠のき、
「風がやや強くなってきたので湾奥へ戻り、風裏で釣りましょう」と大島さんが案内してくれたのが、神島周辺の海域。
「神島は南方系の植物が多く生えていることから、天然記念物に指定されている島なんですよ。昭和天皇もいらしたことがあるんです」
と聞かせてくれた。
それにしても、ボートを止めた場所の水深が約10メートルと浅く、「この水深でマダイをねらうんですか?」と思わず聞いてしまった。
「そうなんですよ。意外に思うかもしれませんがマダイが釣れるんですよ〜」と大島さん。すると、私のサオに小さなアタリが届いたので即合わせすると、それなりの重量感が手元に届いた。
釣り場の説明を聞いた直後だったので、掛かった魚がマダイだと疑わなかったが、釣れ上がった魚がエソだったので、ガックリ肩を落とした。

その後もエソの活性が高く、ほとんど1投1尾のペースで掛かってきた。そんな中、大島さんが、「これはマダイかも」と言って、ニコニコしながらやり取りを楽しんでいる。その読みが当たり、25センチほどのマダイが釣れ上がった。さすがの大島さんもうれしかったようで、「少し肩の荷が下りました」と、安堵の表情を浮かべた。

そして、15時に沖上がり。釣果をMBSと同じ敷地内にある海鮮問屋「丸長」に持ち込み、お造りと煮付けに料理してもらった。
さすがにプロの料理人が腕を振るった料理はおいしく、とても満たされた気分になった。全国約140カ所のホームマリーナでも、このようなサービスを受けられる場所はまれであり、利用者にとっては大変魅力的なものだと、釣りたての料理に舌鼓を打ちながら感じた。

2日目は湾外で実釣 南紀の海を満喫

2日目も晴天に恵まれた。そして、なによりうれしいことは、吹き続けていた風がやんでくれたこと。
「この状況なら、少し遠くまで足を延ばせそうですよ」と、大島さんが案内してくれたのが、千畳敷と三段壁といった、断崖絶壁の岩肌が美しい観光名所の沖合。
まずは、三段壁の南西方向の沖合、水深50メートル付近からドテラ流しをスタート。海の色が前日の湾内とは明らかに異なり、いやが上にも期待が高まる。

「この付近では大型のオオモンハタが釣れることがありますからね〜」
と大島さんが聞かせてくれた。
実は私自身、5年ほど前に南紀でオオモンハタを釣り上げたことがあり、あの強烈なヒキを再び経験したいと思い、とてもワクワクしていた。前日に引き続き一つテンヤ釣法で挑むと、開始早々に私のサオにアタリが届いた。
縦に長いストロークのヒキなのでマダイを確信し、慎重にやり取りしたが、釣れ上がったのはメイチダイ。マダイを期待していただけに少々残念な気持ちになり、その気持ちが表情に出てしまっていたからなのか、
「メイチダイはマダイと同様においしい魚で、和歌山では釣れると喜ぶ魚なんですよ〜」と大島さん。

岩礁地帯を中心に攻めているので根魚類がよくヒットしたが、いずれも成長が遅い魚なので、小型で元気が残っているものはリリースした。
そんな中、大島さんが掛けたウッカリカサゴは30センチを超えていて、文句なしのキープサイズなのでうらやましかった。

私は一つテンヤのスローな降下を演出するため、サミングしながらフォールさせてみたところ、コツっというアタリが届いたので即合わせすると、かなりの重量感が手元に届いた。一瞬根掛かりかと思ってしまったが、その直後に強烈なヒキが届いて、リールのスプールが回転し、ラインが引き出される。
急に真剣モードとなった私は、このヒキはもしかしたらオオモンハタなのかも......と思ったが、あえて口には出さなかった。
一進一退の攻防を続けていたら、まるで自分のことのように喜びながら、「良型のオオモンハタかもしれませんよ!」と、大島さん。
そういえば、前日も大島さんは魚のヒキ具合から魚種を予測し、イトヨリダイやマダイ、カサゴ類などをことごとく当ててきたので、「オオモンハタかも」という発言には説得力があった。
5分以上かかっただろうか。ようやく魚体が水面に近づいてきたが、一向に弱る気配が感じられない。それどころか、オオモンハタらしからぬ横走りが始まった。そして水面下に見えてきたのは、イナダ(ブリの若魚)。オオモンハタを釣って、クライマックスは私がいただき......というつもりでいただけに、イナダ君には悪いが、少々ガッカリした気分になった。
このタイミングでボートの返却時刻が近づいてきたので、切りもいいし、沖上がりすることにした。

今回の取材では2日間の日程に対し、この時季にしては十分な実釣時間が確保できた。やはりそれは、MBSを選んだことによる恩恵が大きいと感じた。そしてまた、再訪問したいと思えるホームマリーナを見つけることができ、とてもうれしい気持ちになった。

釣果カレンダー

田辺湾内は冬場でも比較的海が穏やか。砂地も岩礁帯も存在するためターゲットが豊富で、年間を通してボートフィッシングが楽しめる。黒潮が近くを通ることから、比較的水温が高めなので、周年ねらえる魚種が多いのも特徴で、マダイやアオリイカ、オオモンハタなどは特に人気のターゲット。また、黒潮が接岸する時季には、湾外で大型青ものをねらうこともでき、全国からアングラーが集まる人気の海域だ。

まるちょうボートステーション周辺のフィールドマップ

和歌山県の南西部に位置する田辺の沿岸部は黒潮の影響を受け、比較的温暖な気候である。付近一帯はリアス式海岸になっており、千畳敷(せんじょうじき)や三段壁(さんだんべき)は名勝として知られ、海側から眺めると絶景だ。黒潮の恵みにより好漁場が形成され、年間を通して魚種が豊富で一級ポイントが多い。また、多少風が吹いても湾内の釣り場を選ぶことができるので、ボートアングラーにとっては魅力的なフィールドだ。

まるちょうボートステーション

「たなべ海の駅」に指定され、海上釣り堀や海鮮料理店など、さまざまなメニューが楽しめる。ボートやカヤック、釣り堀で釣った魚は、三枚におろし、真空パックにしてくれる有料サービスもあり、遠方からの来場者にも大人気(土日祝日のみ) 。シーカヤックのガイドツアーも開催されていて、風光明媚な田辺湾の景色を満喫できる。

今回使用したタックル

冷凍エビをエサとして使う一つテンヤ釣法では、マダイ以外にもさまざまな魚がねらえる。ただし、ボートが速く流れるときや潮が速いときは、ラバージグを使ったいわゆるタイラバ釣法のほうが釣りやすくなる。今回持ち込んだロッドはその両釣法に対応できるよう、スピニングリールと両軸受けリールの両方を使えるもので、荷物を減らしたいボートフィッシングに好都合のロッドだ。

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