Vol.49 兵庫県・明石
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は兵庫県・明石のマダイ、マダコほかをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
兵庫県神戸市の「須磨ヨットハーバー」を釣査!明石の豊かな海で、欲張りリレーだ。
ボート倶楽部2015年9月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]
明石のマダイとマダコ二大ブランドをねらう
梅雨入りを目前に控えた5月下旬、わが釣査隊は兵庫県神戸市にある須磨ヨットハーバーへ釣査に向かうこととなった。
ロコアングラーとして取材に協力してくれたのは、同マリーナスタッフの今津陽介さん。業務開始前にボートで釣りに出ることもあるという〝釣りバカ〟だ。
失礼。釣りバカと表現するのはいかがなもの......と感じる人もいるかもしれないが、同類の私は、釣りバカと言われることをうれしく感じるので、きっと今津さんなら許してくれると信じて、あえて釣りバカと書かせていただく。
さて、最近の釣果情報を尋ねるべく、事前に今津さんに連絡した。
「今の時季、クラブ艇の航行区域内では何がねらえますか?」(私)
「釣り場が明石海峡周辺なので、マダイやマダコ、それにアジやシロギスも釣れますよ」(今津さん)
「明石のマダイ、それにマダコ!?、二大ブランドじゃないですか〜!」(私)
と、早くも興奮気味の釣りバカな私。
マダイの釣り方については、この時季、タイラバとサビキ仕掛けに二分されるらしく、「お好きなほうを選んでください」とのこと。
ご当地釣法という意味ではサビキ仕掛けも魅力的だったが、慣れない海域であることを考慮し、慣れているタイラバ釣法に決定。釣りバカ同士の会話も弾み、取材日を指折り数えて過ごした。
取材当日は曇天のやや肌寒い朝で、午前中は風が強めの予報だった。
「明石のマダイとマダコを釣りに来ました。よろしくお願いします」
と、あいさつというより、勝手な願望を今津さんにぶつけた。
すると今津さんは、
「少し風が強いので、いいポイントに入れるか微妙ですねぇ」
と冷静沈着。とりあえず様子を見ようと、まずはアジのポイントを目指すことになった。
マリーナを出航すると、予想通り海面が波立っていて、今津さんはスプレーが掛からないように、ていねいな操船でボートを走らせてくれた。
マリーナから西に向かうと、すぐに明石海峡大橋が見えてきた。
淡路島って大きいなぁ〜。見慣れていない私にとっては、明石海峡大橋を挟んで、どっちが本州で、どっちが淡路島なのかわからなくなるくらい、淡路島は大きい。そんなことを感じながら、ポイントまでのクルージングを楽しんだ。
今回のクラブ艇は、115馬力の船外機を搭載したヤマハYF-24。さまざまな釣りに対応できる、使い勝手のいいモデルだ。電動マリントイレを装備
キャビン付きのボートに装備されているととても重宝する、アフトステーション。これがあると、実釣時の操船がとても楽だ
昨今は電動リールの小型化によって、さまざまな釣りで電動リールを使用するようになった。ボートに電動リール用電源があると、本当に助かる
十分な数のロッドスタンド。リールをセットしたサオを置いておけるため、海上でのセッティングによるロスタイムを減らせて、時間の有効活用にもつながる
マダコはテンヤ仕掛けでねらう。エサは、カニやイワシ、ブタの脂身など。私はカニを、今津さんはイワシ&脂身をセレクトした
明石海峡大橋の下をくぐり抜けてみると、その大きさに驚かされる。今もなお、世界最長のつり橋だとか
【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】
1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の企画、運営に携わる。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。
【今回のロコ・アングラー】
ロコアングラーとして明石海峡周辺海域を案内してくれたのは、須磨ヨットハーバーの今津陽介さん(38歳)。ボートオーナーにすすめられて釣りを始め、すっかりのめり込んでしまったとか
サオに重みが伝わるマダコ釣りの楽しさ
航程30分ほどでアジのポイントに到着したが、海面が波立っていて、釣りには少し厳しい状況だ。
「もう少し先のマダコのポイントなら風の影響が少ないので、マダコをねらいに行きましょう」(今津さん)
明石海峡大橋をくぐって明石方面へ移動した。
「ここがあの有名な明石のマダコをねらえるポイントなのか〜」
と、しみじみ言うと、
「マダコ釣りが禁止のエリアもあるので、事前にその情報を知っておく必要があるんです」
と、今津さん。続けて、資源保護や漁業者と共存していくためにも、ルールを守っていくことの必要性を聞かせてくれた。
水深20メートルほどのポイントで実釣スタート。タコテンヤ仕掛けを投入して5分もしないうちに、「乗りました」と、まるで独り言のように今津さんがつぶやいた。400グラム前後の、正真正銘の明石のマダコだ。
タコテンヤの50センチほど上には、マダコにエサの存在をアピールするために有効な飾りをセット
開始早々に1パイ目を釣り上げた今津さん。サイズに不満があるのか、あまり浮かない表情だ
うらやまし〜! と眺めていると、私のサオに重みが伝わった。
「多分、マダコが乗りました」
やや自信なく言うと、それを聞いた山岸カメラマンが水中カメラを構え、船べりから身を乗り出してスタンバイ。そうまでしてもらって、マダコじゃないものが上がってきたらどうしよう......、バラしたらどうしよう......と心配になったが、とにかくラインを緩めぬよう、一定のペースで巻き上げた。
そして、水面に姿を現したのは、憧れの明石のマダコ!エイッ!!と抜き上げた。明石のマダコを釣ったぞ〜!
記念すべき、私の初「明石のマダコ」を、山岸カメラマンが防水ハウジングをセットしたカメラで、半水面での渾身の1枚を撮影してくれた
もっと大物が釣れるらしいのだが、この日のアベレージは500グラム前後だった
その後もマダコはポツポツ釣れ上がった。サオに重みが伝わる感触がなんとも楽しい! これが、この地域のアングラーが愛してやまない、明石のマダコ釣りなのか!妙に納得する私だった。
イワシ&脂身エサで数を伸ばす今津さん。私もカニエサから変更しようかと思ったが、釣れるのは、エサではなく腕の問題だったようだ
そんな楽しいマダコ釣りだが、そればかりを続けていられないのが、この釣査隊のミッション。本連載では一つの魚種をたくさん釣るよりも、「釣査したホームマリーナで、いろいろな魚がねらえる」という内容を紹介したいのだ。
正味1時間ほどでマダコ釣りを切り上げ、いったん昼食をとるため、神戸フィッシャリーナ(こうべたるみ海の駅)を目指すことにした。
ここに一時係留すれば、隣接する三井アウトレットパーク マリンピア神戸にすぐ行けるので好都合だ。
レストランが豊富にあり、せっかくだからご当地グルメを食べたいと探していたところ、目に飛び込んできたのが「神戸ドッグ」。迷わずオーダーした。
ところが、「神戸ドッグなんて初めて聞きましたよ」と、今津さんがつぶやいたので、私は固まってしまった(笑)。
昼食のため、神戸フィッシャリーナ(こうべたるみ 海の駅)に寄港した。要事前予約
TEL:078-707-1530
神戸フィッシャリーナに併設しているマリンピア神戸で神戸ドッグを食べた。うまかったが、どうやら"ご当地グルメ"ではないようだ
神戸フィッシャリーナの事務所で、係留手続きと係留料の支払いを行う。「アウトレットモールが併設しているので、海からの来場者も多いですよ」とのこと
明石のマダイにタイラバ釣法で挑む
食後はいよいよ、明石でマダコとブランドを二分するマダイねらい。海況も穏やかになって、いい感じだ。
今津さんは転流(干満によって潮流の向きが変わる)時刻を調べた上で、当日の状況に合った実績ポイントに案内してくれた。
タイラバ釣法の場合、マダコのようにポンポン釣り上げることができないことは重々承知していたが、憧れの明石海峡なので、いやが応にも期待が高まる。
明石海峡大橋をバックに、タイラバ釣法でマダイ釣りを楽しむ。「潮流の関係で、釣れる時間がハッキリしています」(今津さん)
アフトステーションがあれば、キャビン内に操船席があるボートでも、ロッドを片手に操船できる。船尾を風に向けるトモ流しでタイラバ釣法を行う今津さん
開始から小一時間が経過し、やはり、明石といえどもマダイはそう簡単には釣れないのか......と感じ始めたそのとき、「きたきたきた〜!」と、今津さん。
振り返ると今津さんのサオが大きく曲がり、マダイらしき縦に長いストロークのヒキをいなしている。
「大きそうですね!」と言うと、「潮流が速いので、サオが大げさに曲がって見えるんですよ」と、いたって冷静だ。
それでも、無事タモに収まったときは満面の笑みがこぼれ、「実は、(この取材に)とてもプレッシャーを感じていました」と、本音を打ち明けてくれた。
釣れ上がったマダイは50センチ級で、最もおいしいといわれるサイズ。1日で明石の二大ブランド魚に出合えるとは、本当に素晴らしい。
私もその幸せを味わいたい......。そう思ってタイラバを巻き続けたが、その後1時間ほどで、同行していた編集部の清水記者から、無情にも次なるターゲットへの変更指令が。
「釣査隊のミッション、わかっちゃいるけど、もう少しマダイをやらせてくれよ〜」
と、心の中で叫びつつ、再びアジをねらうことにした。
今津さんにヒット! 潮流が速いのでロッドが大きく曲がっていたが、慎重なやり取りの末、無事、タモに収まった
マダコに続きマダイもゲットできたので、次なるターゲットを求め、笑顔でポイント移動
正真正銘「明石のマダイ」だ。うらやましい〜。このマダイは私がクール便で自宅へ送り、おいしくいただいた
兵庫県の海ではコマセ(まきエサ)の使用が禁止されているので、コマセで寄せて釣ることができない。つまり、アジがいる場所へボートで行って、そこに仕掛けを下ろす必要があるのだ。
今津さんが当日の潮の状況から釣れそうな場所を割り出し、過去の実績ポイントの一つを選ぶ。すると、サビキ仕掛けのオモリが着底するやいなやアタリが届き、25センチ級のマルアジが釣れ上がった。
その様子を見ていた今津さんが、
「〝鬼アジ〟じゃないですね」とひと言。
「鬼アジってどんなアジですか?」(私)
「居着きではなく、夏に回遊してくる40センチオーバーのマアジで、地元で人気の釣りものです」(今津さん)
「なるほど〜、そのサイズのマアジは魅力ですね!」(私)
鬼アジではないものの、マルアジが1投1尾のペースでよく釣れる。イケスの中にはマダイにマダコ、さらにマルアジが加わり、取材は順調に進行していく。
ここで、またしてもターゲット変更。残り時間をシロギス釣りにあてることにした。
「シロギスは、浅場よりもやや深い場所のほうがよく釣れるんですよ」
と、今津さんが案内してくれたのは、水深40メートルのポイント。
潮流が速いので、仕掛けの着底時点ではラインが50メートル以上出てしまうという、驚きのシロギス釣りだ。
こんな状況で本当に釣れるのかなぁ? もっと浅場に行ったほうが釣りやすいんじゃないのかなぁ?なんて思っていたら、明確なアタリが届いた。いつも通りに軽く合わせる。
シロギスにしては重いなぁ〜と感じていたら、20センチ級が一荷で掛かっていて、正直、驚いた。シロギスも、投入のたびにアタリが届く。
なんだか、今回の釣査は目からうろこが落ちることの連続だなぁ、なんて思いつつ時計を見ると、ボート返却の時間が迫っていたのでストップフィッシング。
〝鬼アジ〟(夏場に回遊してくる40センチ級のマアジ)は釣れなかったが、25センチ級のマルアジがコンスタントに釣れた
第4のターゲットにはシロギスを選んだ。30メートルを超える水深と潮流で釣りにくいポイントだったが、良型が入れ食いだった
今回は短時間にもかかわらず、マダイ、マダコ、マルアジ、シロギスの4魚種をゲットできた。
明石海峡が豊かな海であることに間違いはないが、この海を知り尽くした今津さんがロコアングラーとして取材に協力してくれたことで、この釣果が得られたことも紛れもない事実である。
一つ思い残したことがあるしたら、私自身がマダイを釣っていないということ。もう、再訪問するしかない!と心に誓い、帰路に就いた。
明石のマダイとマダコ、そしてマルアジとシロギスが今回の釣果。明石海峡周辺の豊かな海を堪能できた
釣果カレンダー
明石海峡周辺では、春から秋にかけては特に魚種が豊富で、なんでもねらえると言っても過言ではない。ただし、1日のうちでも潮流によって釣れる時間帯と釣れない時間帯がはっきりしている。潮流と釣果には密接な関係があるので、情報収集が不可欠だ。また、マダコ釣りが禁止されているエリアや、100グラム以下のマダコは採ってはいけないというローカルルールがある。詳細はマリーナに確認しよう。
須磨ヨットハーバー周辺のフィールドマップ
航行エリア内では、フィッシングはもとよりクルージングも存分に楽しめる。フィッシングでは、須磨ヨットハーバーから20分ほどの明石海峡付近に好ポイントが多い。クルージングでは、世界一のつり橋・明石海峡大橋を間近で見たり、神戸フィッシャリーナに寄港すれば、マリンピア神戸で買い物や食事が楽しめる。さらに、あわじ交流の翼港海の駅へ寄港して、淡路島に上陸するもよし。ボーティングをトータルで楽しめる、魅力的なフィールドだ。
翼港からは徒歩5分で淡路島に上陸できる。国営明石海峡公園は、2000年に「ジャパンフローラ2000」(通称・淡路花博)が開催された会場だ
今回の釣査では、淡路島にある「あわじ交流の翼港海の駅」(TEL:0799-74-1000)へも寄港した。係留には、事前の申し込み手続きが必要
須磨海浜水族園の道向かいにある、「風風」のタコ焼きを食べた。明石のマダコが入っているかどうかは不明だが、とてもうまかった
須磨ヨットハーバーからクルマで5分のところには、須磨海浜水族園がある。17時まで開園しているので、ボーティングのあとでも立ち寄りやすい
大阪湾岸エリアに多くの店舗を構える釣具量販店のフィッシングマックス神戸ハーバー店に立ち寄り、今回の道具やエサを調達した
須磨ヨットハーバー
大阪からもアクセスがよく、周辺には須磨海水浴場や須磨海浜水族園、さらにマリンピア神戸があり、海辺のレジャーをトータルで楽しめるロケーション。明石海峡という日本屈指の海の名所に近いため、フィッシングに限らず、クルージングでも見どころがいっぱいだ。
マリーナスタッフの木村正憲さん(左)と吉川正彦さん(右)。お二人とも釣り好きで、釣場の状況に詳しかった
須磨ヨットハーバー。保管艇が海上と陸上に機能的に配置されている。取材当日は週末ということもあり、出航するフネが多かった
今回使用したタックル
マダコは手巻きリールで問題ないが、今回はアジ釣りと共用するために小型電動リールをセレクト。サオは50号のタコテンヤを背負っても小突くことのできる、胴のしっかりした先調子の汎用タイプ。マダイとシロギス釣りは同じタックルを使用し、穂先の感度がいい7:3調子のサオに小型電動リールをセット。クラブ艇には電動リール用の電源があったが、私は持参したコードレスタイプのバッテリーを使用した。