本文へ進みます

Vol.50 北海道・絵鞆半島

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は北海道・絵鞆半島のカレイ、ロックフィッシュほかをご紹介。

今回は、北海道で北の魚を釣るべく、「室蘭エトモマリン」を釣査!
ボート倶楽部2015年12月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

約10年ぶりの再訪問 思い出がよみがえる

10年近く前のこと。マイボートの〈友恵丸〉(SKTパーフェクター13)をクルマに積んで北海道を旅した際、出艇場所の情報が欲しくて飛び込んだのが、室蘭エトモマリン(旧・岩佐マリン)だった。対応してくれたのは、岩佐健二社長だ。
「クルマで10分ほどのところに波静かな浜辺があるので、そこならボートの出艇に適しているはずです」
喜び勇んでその浜辺へ向かったが、私の不注意でマイカーを砂浜にスタックさせてしまった。脱出することができず途方に暮れていると岩佐さんが現れ、乗ってきたクルマでけん引してくれた。聞けば、出航場所を紹介した手前、気になって様子を見に来たとのこと。おかげで砂浜からの脱出に成功したが、もう出航する気分になれずにいた私の心を見抜いてか、
「よかったら、ウチのボートでクルージングに行きませんか?」
と、笑顔で誘ってくれた。そのクルージングで見た絵鞆半島の美しい景色は今も脳裏に焼き付いているが、それ以上に印象に残っているのは、へこんだ気分の私を気遣ってクルージングに誘ってくれた、岩佐さんの優しい笑顔だった。
以来、再訪問できないまま10年近い月日が流れたが、昨年、室蘭エトモマリンがヤマハマリンクラブ・シースタイルの運営をスタートさせたこともあって、本連載で訪問する機会を得た。
毎回、各地のホームマリーナを訪問するときはすごくワクワクするが、今回の室蘭エトモマリンに関しては前述した経緯があるため、いつも以上にワクワクし、訪問日を指折り数えて待ち続けた。
9月下旬、すっかり秋が深まった北海道、新千歳空港に降り立ち、レンタカーでマリーナへ向かった。
「いらっしゃい!」
と、迎えてくれた岩佐さんの笑顔は、10年前と変わらず健在だった。うれしさと懐かしさ、さらにあのときの感謝の気持ちがこみ上げ、目頭が熱くなった。
今回、ロコアングラーとして協力してくれたのは、マリーナが保有する遊漁船〈アグネス〉の船長・田中弘之さんと、スタッフの川俣清志さん。お二人とも、過去に私が訪問したときのことを覚えてくれていて感激したが、昔話に花を咲かせるのは沖に出てから......、ということで、さっそくクラブ艇のヤマハYF-24に乗り込んだ。

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の企画、運営に携わる。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。

【今回のロコ・アングラー】

今回のロコアングラーは、ロック仙人こと田中弘之さん(左)と、マリーナスタッフの川俣清志さん(右)。お二人とも経験豊富で、頼りがいのあるアングラーだ

「クリオネ」でねらう 室蘭沖のカレイ

「シースタイル会員の方は、どんな釣りをされる人が多いんですか?」(私)
「最近はブリをねらう人が多いですね。ただし、釣果はナブラ次第です」
真っ黒に日焼けした川俣さんが話してくれた。
「一応、なんでもねらえるように準備してきましたが、ブリよりも、どちらかといったら、北国らしい釣りものをねらいたいのですが......」(私)
「でしたら、カレイかロックですね。特にロックなら近場でねらえるし、今日みたいにやや風が強い日でもなんとかなるから」
田中さんは自信ありげだ。
「どんな種類のカレイですか? 北海道には多くの種類がいると思うんですが」(私)
「この時期に浅場でねらえるのはイシガレイやマガレイ、運がよければマツカワガレイかな」(田中さん)
「えっ、超が付く高級魚、マツカワガレイがねらえるんですか? 釣れたらうれしいなぁ。〝ロック〟は、岩礁周りに生息する根魚(ロックフィッシュ)のことですよね?」(私)
「そう、このあたりだと主にアイナメやクロソイ、メバルのことで、間違いなく釣れますよ!」(田中さん)
「田中さんは74歳ですが、ソフトルアーを使った釣りが得意で、釣果では誰もかなわないんですよ。周りでは、田中さんのことを〝ロック仙人〟とも呼んでいるんです。この風貌ですし......」 と、川俣さんが笑いながら教えてくれた。
確かに白髪で長い髪、そしてベテランアングラーのオーラがあり、仙人と呼ばれるのも頷ける。でも私から見れば、田中さんは〝ロック〟と口ずさんでいるし、サングラスを掛けたその姿は、どう見てもロックシンガーの内田裕也さんにしか見えない。そのことを川俣さんにこっそり話したら、「確かに!!」と、妙に納得し、大笑いされていた。
でも、そんな田中さんがただ者ではないことに気が付くのに、それほど時間はかからなかった。そして、一般的には年配の人がエサ釣りで、若者がルアー釣りという傾向が強いので、ソフトルアーについて熱く語る田中さんが妙に新鮮であり、脅威を感じた。
「今ハマっているのが、水中カメラを沈め、魚がソフトルアーに食いつく様子を撮影することです。その映像からヒントを得て、カレイ用のオリジナル仕掛けを作っているんですよ」(田中さん)
「え〜っ、そんなことまでされてるんですか!?」
と驚く私に、
「これがその一つで、まずはこの仕掛けを使ってカレイをねらってみましょう!」
と、田中さんが見慣れない仕掛けを手渡してくれた。
ハリは、両テンビンの先端と、テンビンの中央から出したハリスに1本ずつ、そしてミキイトから出したエダスに1本の計4本。ハリすべてにソフトルアーが取り付けられていた。
「改良を重ねて、たどり着いた一つの完成形なんです。〝クリオネ仕掛け〟と名付け、マリーナのメンバーにも浸透しています」
田中さんは自信ありげだ。
そんな話で盛り上がっているうちに、ボートは室蘭港を出て南下し、水深30メートル付近に到着した。シーアンカーを投入し、さっそくクリオネ仕掛けを沈めて実釣スタート。
前日まで続いた荒天の影響で底荒れしているのか?なかなかアタリが届かない。しかも、シーアンカーを入れているにもかかわらず、思いのほかボートが速く流れてしまう。
何度かシーアンカーを回収してコースを変えてみると、水深25メートル付近で、田中さんがイシガレイを釣り上げた。
その直後に私、川俣さんにも、立て続けにヒット。どうやら、イシガレイはピンポイントに集まっているらしい。再度そのポイントを流したかったが、風が強まったので、風裏となる室蘭港方面へ戻ることにした。

ロックフィッシュをキャスティングで攻略

「川俣マンションに行こう!」
と、田中さんが操船中の川俣さんに告げた。いったん上陸して、川俣さんのお住まいにお邪魔することになるのかな?なんて思っていたら、港の防波堤の間近でボートが止まった。
聞けば、川俣マンションというのはポイントの名称で、ロックフィッシュの魚影が濃く、川俣さんが過去に何度もこのポイントで大釣りしたので、仲間内でそう名付けられたそうだ。
ここは岸が近いので、シーアンカーを使わずにボートを流すことにした。テキサスリグにソフトルアーというシンプルな仕掛けをキャストし、消波ブロックや捨て石周りに潜むロックフィッシュをねらうのだ。

開始早々から、田中さんが良型アイナメを連発した。私も見よう見まねでアクションを加えるが、根掛かりばかり......。
「この釣りでは根掛かりがつきものですから」と言う田中さん。諦めずに続けると、ようやく私もアイナメやトゲカジカをキャッチし、イケス内がにぎやかになったので、1日目はこれにて終了。

田中さんも川俣さんも、強風のため沖合での釣りが十分にできなかったことを悔やんでいたが、私にしてみればイシガレイにアイナメ、さらにトゲカジカなど、北国らしい魚に出合えたので大満足。一つ心残りがあるとすれば、クロソイに出合えなかったことくらいか。翌日に期待しよう。

室蘭サイズのアイナメとダイナミックな景観に感動

2日目は、残念なことに東寄りの風が強いままだった。風裏となるマリーナの西側の沖合、水深30メートル付近で実釣スタートとなったが、沖へ出ると、風裏でも少なからず風の影響を受けることになる。
少しでも釣りやすい状況をつくろうと、川俣さんは自身のサオは置きザオにして、トモ流しの操船に徹してくれた。それに応えようと頑張るものの、そう簡単に掛かってくれないこの日の魚たち。
悪戦苦闘を続けていたら、
「小野さん、サオを頼みます! 僕は操船がありますから」
という川俣さんの叫ぶ声。振り向くと、川俣さんのサオが大きくしなっていた。急きょ、私がサオを手に取り、魚と対峙した。川俣さんのサオに掛かった魚をバラすわけにはいかない......というプレッシャーの中、慎重なやり取りの末に上がってきたのは、35センチ級のクロソイ。初日は顔を見ることができなかった魚種だけに、とてもうれしかった。

その後、やや風が弱まったタイミングで、南東側の〝地球岬〟方面へボートを進めた。残念ながら、風の影響で地球岬までは到達できなかったが、断崖絶壁の景観美で知られる〝銀屏風〟の前でサオを出すことができた。ダイナミックな岩肌が目の前に広がる中でのロックフィッシュねらいは最高だ。
やはり、ここでもロック仙人の田中さんが本領を発揮し、アイナメを連発した。特筆すべきは50センチオーバーのアイナメ!
「関東地方では良型アイナメのことをよく〝ビール瓶サイズ〟といいますが、それを通り越した、〝一升瓶サイズ〟ですね」(私)
「ようやく室蘭らしいサイズがきましたよ〜。でも、この海には60センチ級もいますからね」 
と、田中さんに聞かされ驚いた。

正午すぎ、再び風が強まったので、無理をせずに沖上がり。ロコアングラーのお二人は少々残念がっていたが、私自身はこの素晴らしいロケーションで釣果を得られたので大満足。
今回の釣行では、仕掛け、釣果、景色、そしてロコアングラーのお二人......。そのどれもが目からウロコの落ちる思いの連続だった。近い将来、再訪問するに違いない。そう確信する室蘭釣行だった。

釣果カレンダー

おいしい魚種が数多くねらえる点が魅力で、そのどれもが魚影が濃いことも、この海域の特徴だ。なかでもロックフィッシュは釣期が長く、大型が多い。スケトウダラは冬から春先まで、カレイ類は真冬を除く春から秋までのロングランでねらえる。スルメイカは夏場、ブリやサバの青ものは秋に限定されるが、近年は安定しているそうだ。いずれにしても、マリーナで最新の情報を入手し、万全の準備で臨みたい。

室蘭エトモマリン周辺のフィールドマップ

北海道の南西部に位置する室蘭は、太平洋と内浦湾(噴火湾)の境に突き出した絵鞆半島があり、天然の良港を作り出している。港内は鉄鋼業を中心とした工業地帯や市街地が広がるが、絵鞆半島の外側は手付かずの自然が残り、特に銀屏風、金屏風、地球岬へとつながる海岸線の景観はとてもダイナミックで素晴らしい。北海道でありながら年間を通じてボートフィッシングを楽しむことができ、魚種、魚影が濃い魅力的なフィールドだ。

室蘭エトモマリン

保管艇オーナーの多くがボートフィッシングにハマっている、ユーザーの"釣り活性"が高いマリーナ。クラブハウスには釣果自慢の写真が多く飾られ、スタッフに釣り好きが多いことから、最新の釣果情報も随時発信されている。2014年9月からヤマハマリンクラブ・シースタイルのホームマリーナになった。

今回使用したタックル

カレイねらいには小型両軸受けリールを7:3調子の汎用ザオにセットし、田中さんが考案したオリジナル仕掛けを使用。ロックフィッシュねらいには、キャストしやすいようにスピニングリールを7:3調子の汎用ザオにセットし、ブラーやテキサスリグを使用した。カレイ、ロックフィッシュともに、ハリにはソフトルアーを装着し、状況に応じて変更できるよう、色、形が異なるものを数種類用意した。

ページ
先頭へ