Vol.45 北海道・苫小牧港
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は北海道・苫小牧港の根魚&カレイほかをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
北海道苫小牧市の「勇払マリーナ」を釣査!北海道の豊かな海で、北の魚に出合った!ボート倶楽部2014年9月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]
気持ち高ぶる北海道釣査
「出動!マリンクラブ釣査隊」の隊長となって、はや3年が経過した。その間、訪れたホームマリーナは12カ所に達するが、全国に約140カ所あるホームマリーナのうちの1割にも満たないのだから、その数の多さにあらためて驚いてしまう。
数あるホームマリーナから、今回の行き先に選んだのは、北海道苫小牧(とまこまい)市の勇払(ゆうふつ)マリーナ。選定理由はいたってシンプルで、同マリーナが、今年4月からヤマハマリンクラブ・シースタイルの運営をスタートしたという情報をキャッチしたからだ。
北海道と聞くと大旅行を想像しがちだが、飛行機を使えば東京からは2時間ほど。これなら週末を利用して出掛けられるし、今回の取材も、金曜日の夜から日曜日にかけて敢行した。
費用面が気がかりかもしれないが、特に北海道の場合は、航空券+宿泊+レンタカーなど、旅行会社の格安パックが多く設定されているので、上手に利用すれば、思いのほかリーズナブルな料金で旅を楽しめるはずだ。
どうせなら、ボートのレンタルまで格安パックに含まれればいいのに......、なんて思ったりもするが、日本では、まだまだボーティングがメジャーな遊びではないので、ちょっと難しいだろうか。でも、シースタイルなら現地での手続きも簡単だから、旅先でも手軽にボートフィッシングが楽しめる。
このように、北海道とて釣行計画を立てるのは難しくないが、出発までのワクワク感は、やはりほかの地域とは一線を画するものがあった。なにしろ北海道は、沖縄と並ぶ国内の旅行先としては有数の人気を集めるところであり、自然が豊かで食べ物がおいしい、という評判が高い。
まるで遠足前の子どものような気持ちのまま、金曜日の夜に羽田空港を出発。搭乗してからは正味90分ほどで新千歳空港に着いてしまうから驚きだ。さっそくレンタカーを借りて、さぁ出発!といってもすでに夜なので、この日は空港近くの宿に直行した。
一晩寝れば、北海道の大海原で釣り三昧......。数時間前まで東京で仕事をしていたのがウソのようだ。そう考えるとドンドン期待が高まり、目がさえてしまって寝付けない。結局、アルコールの力を借りて無理やり就寝した。
空港からマリーナは至近
翌朝、宿からクルマで30分ほどの勇払マリーナへ向かう。海に近づくと、南風が強く吹いていることが気になった。
マリーナに到着してハーバーマスターの鈴木雅貴さんに相談すると、強風だけでなく波高もあるため、出航は厳しい状況とのこと。午後に再度、状況判断をすることになった。
楽しみにしてきたのはもちろんボートフィッシングだが、遠征先ではそれ以外にも、ご当地グルメや現地の釣具店での情報収集が楽しめる。午前中は観光を兼ねて、マリーナの周辺をドライブすることにした。
向かったのは、マリーナからクルマで15分ほどのところにある「ぷらっとみなと市場」。北海道の海で獲れた新鮮な魚介類が数多く並んでいた。特にカレイや根魚が豊富で、釣り意欲をかき立てられる。
「苫小牧には回転寿司店がたくさんあるので、いかがでしょうか。苫小牧の回転寿司はおいしいですよ!」
と、鈴木さんに伺っていたので、昼食は回転寿司に。その言葉通り、市街地をクルマで走っていると、あちこちに回転寿司店がある。たくさんあって迷ってしまうが、それも楽しみの一つだろう。食事を済ませると風が弱まっていたので、マリーナに戻ることにした。
鈴木さんに出航の可否を聞いてみると、
「風を避けられる沖堤の内側なら釣りができると思いますが、どうされますか?」
早く釣りイトを垂らしたいとウズウズしていた私は、たとえ釣り場が限定されていても、
「よろしくお願いします!」
と即答。大急ぎで準備を済ませ、ロコアングラーとして取材に協力してくださった菊池伸治さんの操船でマリーナを出航した。
まさかの釣果にビックリ!!
空は曇っていたが、海に出られただけでも気分最高!さぁ、釣るぞ~!!
航程15分ほどで、苫小牧東港の沖堤付近に到着。堤防の内側に入ると南風はさえぎられてベタ凪状態。鈴木さんの読み通りだ。さっそく、2本バリのドウヅキ仕掛けにアオイソメを付けて投入した。
初日は朝のうち荒天だったが、14時すぎに風が弱まり出航できた。多少のウネリが残っていたが、菊池さんの的確な操船で安心だった。
ウネリを避けるために沖堤の陰に入ると、そこはベタ凪状態。もともとここは根魚のポイントでもあり、「ここでやってみて」と菊池さん。
すると、近くに浮かんでいた遊漁船が立て続けに40センチ級のクロソイを取り込んだ。がぜんやる気が出たが、当方にはなかなかアタリが届かない。それどころか、他船の釣果が気になり、よそ見ばかりしていたので仕掛けを根掛かりさせてしまう始末......。
近くに浮かんでいた遊漁船では、良型のクロソイが何尾も取り込まれるのを目撃した。うらやましい。
沖堤周辺の海底はゴロタ石や岩礁だが、ボートをゆっくり流しているので魚探の海底ラインはほぼフラットに表示されている。
ようやく1尾目のクロソイが釣れたが、サイズは15センチほどと小さく、迷わずリリース。その後もクロソイを数尾釣り上げたが、なぜかサイズがどんどん小さくなっていく。
ボートを流しながら釣っていることもあり、根掛かり防止のために仕掛けを少し上げ気味に待っていると、突然やや強いアタリが届いた。
グングンと強いヒキで、待望の良型クロソイがヒットしたものだと思い込み、根に潜られないようにサオの弾力を使ってやや強引に魚を浮かせた。途中から横走りが始まり、何度かスプールからラインが引き出される。
エーッ!? こんなに引く根魚って何だろう?とにかく慎重にやり取りした。
一進一退の攻防の末、タモに収まった魚はクロソイではなく、なんと銀色に輝くカッコイイ魚!
「サクラマスか、トキジャケのどちらかだと思うよ!」
と、菊池さんはやや興奮気味。釣り上げた直後は正確な魚種がわからなかったが、いずれにしても北海道らしい魚に出合えたので、なんだかとてもうれしい。
艇上で魚を撮影しているときも、「今、こっちのボートで50センチオーバーのサクラマスらしき魚が釣れたよ!」と、無線でやりとりしている自慢げな菊池さんの声が聞こえて、すごいものを釣ってしまったのかも......と、ますますうれしい気分になった。
その後も??2匹目のドジョウ?≠?釣ろうとしたが、そう簡単に釣れるはずもなく、小型のクロソイとニジカジカを追加するのみで、15時すぎに沖上がり。
マリーナに戻ると鈴木さんがサクラマスだと判定してくれた。少々季節外れのサクラマスを釣ってきたことに、マリーナにいたボートオーナーたちも驚いている様子。短時間でも海に出られたことを、本当にラッキーだと思った。
50センチオーバーのサクラマスを釣り上げて大よろこびしたが、実はこの時点では、まだ正確な魚種名がわからなかった。
北海道の海を堪能
2日目は、勇払マリーナで「ミニボートフェスティバル苫小牧」が開催されていた。その都合もあって、クラブ艇は午後からの出航に。
初日とは打って変わって波もなく、ソウハチガレイを求めて沖合を目指した。
途中、トリヤマができていて、ときどき大きな魚の背中が見える。えっ、何?と、ゆっくり近づいてみると、魚ではなくイルカの群れだった。
「まさか"イルカ"が"居るか"と思わなかった」
というダジャレを言おうかと思ったところで、
「観光客向けにイルカやクジラのウオッチングツアーもあるんですよ」
と菊池さんが説明してくれ、ダジャレを言うタイミングを失った。
そんなイルカの群れを横目で見ながら、さらに沖合を目指し、水深40メートル付近で釣りを開始。
初めて見るエラコ(ゴカイの仲間)をハリに付けて仕掛けを下ろすと、着底後すぐにアタリが届いた。あまり引かないけれどなんだろう?ワクワクしながらリールを巻くと、小さなカレイが掛かっていた。
「これがソウハチガレイですか?」
「そうだけど、そんなに小さいのはなぁ......」
と、もっと大きなものが釣れるはずなんだけど、と言いたげな菊池さん。
その後もソウハチガレイは釣れ続いたが、手のひらサイズばかりで、なかなか良型に恵まれない。
私「これがソウハチガレイですよね」。
菊池さん「そうだけど、小さすぎるなぁ(笑)」
その後、ようやく、これまでとは異なる重量感の魚が掛かり、35センチ級が釣れ上がった。このサイズになると、肉厚で本当にうまそうだ。ところが、良型はこの1尾のみで、その後はまた手のひらサイズが続いた。
35センチ級のソウハチガレイをゲット!さすがにこのサイズとなると、肉厚でうまそうだ。
ポイントを外れてしまったのか、やがてカジカ類ばかりがヒットするようになった。これも北海道ならではの魚だ。
残り時間が少なくなったので、初日に釣ることができなかった良型クロソイを求めて、岸近くの沖堤まで大きく移動することに。
初日はドウヅキ仕掛けで根掛かりに苦しめられたので、釣具店で購入したブラー(フジワラ)を使用した。これが功を奏し、本命のクロソイではないものの、アイナメが連続ヒット!独特の首振りダンスを味わうことができた。
ブラーにソフトルアーをセットして、アイナメをゲット!
当日は、アオイソメをセットしたほうが食いがよかった。
結局、2日目も良型クロソイには出合えなかったが、ソウハチガレイやカジカ類、アイナメを釣り上げ、さらにはイルカまで見ることができたので大満足の沖上がり。
週末を利用した今回の釣行では、北海道ならではの魚や海を存分に楽しむことができ、非常に中身の濃い2日間だった。
また、北海道の冬は厳しく、ボートフィッシングは春~秋に限定されると思い込んでいたが、今回の取材で、苫小牧を含む道南地方では、周年ボートフィッシングが楽しめることを知った。そして、冬には冬のおいしい魚が釣れることも教えてもらい、飛行機の窓から遠ざかる北海道の夜景を見ながら、また別の季節にボートフィッシングを楽しむために訪れたい......。そう思いながら、帰路に就いた。
【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】
1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の講師を務める。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。ウェブサイト「気ままな海のボート釣り」
http://homepage3.nifty.com/miniboat/
【今回のロコ・アングラー】
ロコアングラーとして同乗してくださった菊池伸治さんは、勇払マリーナでヤード業務全般を担当する。釣りやすいように、ていないな操船を行ってくれた。
航空会社のカウンターで申告すれば、サオは長尺物の梱包箱へ入れてくれるので、安心して預けられる。
新千歳空港でレンタカーを借りれば、30分ほどで勇払マリーナに到着できる。この手軽さが何よりうれしい。
千歳市内で食べた「鮭節ラーメン」はうまかった。あとで調べてわかったが、行列のできる評判店とのこと。
クラブ艇は広い居住空間を持つマルチパーパスモデル、ヤマハFR-23LSを配備。キャビン付きのボートは、移動や雨天時でも快適に過ごすことができる。
船外機は150馬力で、トランサム周りにはロッドホルダーとドリンクホルダーが備わっていた。
マリントイレが装備されており、ゲストも安心して呼ぶことができる。
コクピット内にも両舷にロッドホルダーがあり、本当にありがたい。
今回用意した仕掛けの数々。マリーナで最新の釣況を入手し、適した仕掛けを準備した。
アオイソメと赤く染められたイカの短冊を付けエサとして用意した。
見たことのない魚が釣れた。かなり派手な模様の魚だが、北海道ならではなのか?あとで調べたらニジカジカだと判明した。
小型ながら本命のクロソイを釣り上げ、まずはひと安心。あとはサイズアップだが、何か手はあるのだろうか?
2日目は午後からベタ凪の海となり、沖合の砂地でソウハチガレイをねらった。
航行中にイルカの群れに遭遇した。小魚を追っているらしく、取材時の6月中旬は、よく見られるとのこと。
菊池さんがエラコの付け方をレクチャーしてくれた。アオイソメよりも匂いがキツく、釣れそうな予感がした。
エラコは筒状の巣の中にいる。巣を破って取り出し、ハリに付ける。
勇払マリーナではエラコを販売している。購入する場合には在庫確認が必要。
トゲカジカも釣れた。この魚で作る汁物のうまさに、つい鍋をつつきすぎることから、??鍋壊し?≠ニいう地方名もあるらしい。
マリーナでは発泡スチロール箱と氷を販売しており、クール便にて発送が可能。遠征者にとって大変ありがたいサービスだ。
2日目の釣果はソウハチガレイとアイナメ、そのほかカジカ類が数多く釣れ、北海道の海の豊かさを実感した。
釣果カレンダー
アイナメやソイ類は移動が少なく、根に付く魚なので周年ねらえるが、そのほかの魚は季節が限定されるものが多い。サクラマス、スケトウダラ、マダラは冬から春先まで、カレイ類は真冬を除く、春から秋までのロングランでねらえる。キチジ(キンキ)、スルメイカは夏場で、サバ、イナダなどの青ものは秋に限定される。いずれにしても、釣り場や釣り方はマリーナや釣具店で最新の情報を入手し、効果的な仕掛けとエサを準備して臨みたい。
勇払マリーナ周辺のフィールドマップ
苫小牧は北海道を代表する工業・港湾エリアで、海から眺める陸の景色は、お世辞にもよいとはいえない。しかしながら、自然豊かな海は魚影が非常に濃く、冬季もクローズせずにボートフィッシングが楽しめる、道内では貴重なフィールド。特筆したいのは、新千歳空港から勇払マリーナまでのアクセスのよさ。レンタカーを借りれば30分ほどでマリーナに到着できる点は、大きな魅力の一つだ。
勇払マリーナは「とまこまい海の駅」として認定され、ボートやヨットの寄港地となっている。
苫小牧周辺の国道沿いには回転寿司店が非常に多く、その中から1店舗を選ぶのも、楽しみの一つだろう。
マリーナからクルマで15分ほどのところにある「ぷらっとみなと市場」。鮮魚店や食事処が豊富。
市場の中には、北海道ならではの魚介類がズラリ。事前にこれを見たことで、自分で釣ってやろうと決意を新たにした。
新千歳空港と苫小牧を結ぶ国道36号沿いには「道の駅 ウトナイ湖」があり、お土産はここで購入した。
道の駅の裏手がウトナイ湖。鳥獣保護区に指定され、渡り鳥の楽園となっている。
勇払マリーナ
北海道の苫小牧港内に造られた公共のマリーナで、苫小牧港管理組合が関連施設を整備し、同組合のもとで、マリーナジャパンが運営業務を行っている。保管ヤード、係留桟橋を合わせた計画収容隻数は約450隻と大規模なマリーナといえる。「とまこまい海の駅」にも指定されており、広々とした港内のスペースは、ビジター利用の際も安心だ。
■交通アクセス
新千歳空港から国道36号線、国道234号線、道道781号線を経て車で約30分
■問い合わせ先
北海道苫小牧市勇払376
TEL:0144-56-4771
営業時間:
5~8月 平日:8時~17時、 土日祝日 6時~17時
11~2月 9時~17時 そのほか 8時~17時
定休日:火・水曜日(定休日の当日が祝日の場合は、翌日、翌々日に振り替え)
http://www.yufutsumarina.com/
スロープの一般開放や遊漁船の係留受け入れなど、柔軟な運営方針の勇払マリーナ。
ハーバーマスターの鈴木雅貴さんは物腰が柔らかで、さまざまな相談にも親身になって対応してくれるマリーナの顔だ。
今回使用したタックル
ドウヅキ仕掛けによる根魚とソウハチガレイねらいには、7:3調子の汎用ロッドに小型両軸受けリールをセットした。水深40メートル付近でのソウハチガレイねらいでは、魚影が濃くアタリも多かったので、手返しを考えると小型電動リールがオススメ。浅場の岩礁地帯にて根魚をねらう場合はブラーが有効で、軽くキャストして広範囲を探るなら、一つテンヤ釣法用のスピニングタックルなどがオススメ。