Vol.27 千葉県・銚子沖
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は千葉県・銚子沖のヒラメほかをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回のフィールドは、関東地方のヒラメのメッカである銚子沖。マリーナから直々のご指名を頂戴して、名物のジャンボヒラメにチャレンジだ!ボート倶楽部2010年3月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
ご指名、いただきました
この連載の釣査フィールドは、いつも隊長が独断と偏見で決めさせてもらっている。シースタイルのHPにある全国の地図を眺めながら、「次はなにを釣ろうかなあ」って考えるのはとても楽しいんだよね。けど、今回はチト事情が違いまっせ。なにしろホームマリーナからお誘いを受けちゃったのだ。
「ぜひうちのマリーナで、シースタイル初のヒラメを釣っちゃってください!」
と、声をかけてくれたのは銚子マリーナだった。銚子といえば、関東地方のヒラメのメッカ。昨年春に銚子マリーナがシースタイルに加盟して以降、初の本格シーズンを迎えるあたり、釣査隊に白羽の矢を立てたってわけだ。
うれしいじゃありませんか。こんなふうに声をかけてもらったら、意気に感じるのが釣り人ってもの。すぐにでもすっ飛んでいきたいところだったけど、実は心に引っ掛かることがひとつあった。
銚子、鬼門なんだよなあ。
あれは隊長がまだボートフィッシング専門誌の編集長をしていた約10年前のこと。釣査隊のように各地の釣りを紹介する連載で、銚子に釣りに来た途端、ほかの人はどんどん釣っているのに、隊長だけ突然の"絶不釣"に見舞われた。その後、何度もリベンジに来たものの、なぜだかわからないんだけど、結局、隊長だけ魚が釣れなかったのだ。
何十年間も釣りをしてきた隊長にとって、そんな場所は銚子だけである。マリーナの期待に応えたいのはヤマヤマだけど、はたして鬼門の鬼は追っ払えるのか......期待と不安が半々で銚子に向かう今回の隊長でありました。
一人三役のロコアングラー
銚子の雰囲気は独特だ。途中で利根川の銚子大橋を渡るせいもあって、いつも島に来たような気がしてしまう。太平洋にどおんと飛び出した地形をはじめ、水平線を望める雄大な風景や、夏涼しくて冬暖かい気候なんかもやっぱり島みたい。こんな海だと、普通はいい釣りができるんだけどなあ......おっとマズイ。なんか今回は弱気だわ。
銚子マリーナには営業開始時刻の8時半に到着した。
「おはようございます!」
元気に言葉をかけてくれたのは、釣査隊を指名してくれた新行内 光さんである。実際に会った印象は、電話で話したときと全然変わらなかった。人当たりがよくて明るい新行内さんの声が、隊長の弱気を一気に吹き飛ばしてくれた(ような気がする)。
見た感じ腕っぷしが相当強そうだから、ひょっとして昔漁師でもやっていたのか思いきや、新行内さんは水泳の指導者だったという。その後、ボートのインストラクターに転向し、神奈川県の八景島でシースタイルの担当者を務めたのち、地元の銚子に戻ってきたとのこと。地元での釣りもボートの経験も豊富だから、今回はハーバーマスター兼レンタル担当兼ロコアングラーで、一人三役の大活躍である。
ハナダイ、ホウボウ、ヒラメ!
冬の日は短い。そして銚子沖は広い。規定の安全講習を終えてすぐに出航した。
さて、今回の一番重要なミッションは「ヒラメの泳がせ釣り」である。しかし、我々釣査隊としては、ほかの魚の状況も当然調べなければならない。前もって新行内さんと相談したところ、当日の種目候補に「"手堅い"ハナダイ、ホウボウのサビキ釣り」と、「"群れがいればイージーな"イナダ、サワラのジギング」も加えることにしていた。よって、ヒラメのエサとなるイワシを確保したあとは、基本的に3種目を同時にねらう。サオを出してみて、なにが釣れるかお楽しみってワケだ。
「一つのポイントでいろんな魚が釣れるのが銚子沖の特色なんです。逆に言えば、一つの魚種に的を絞るのはむずかしいし、なによりもったいないですよ!」と新行内さんも太鼓判を押す。
とにもかくにも、ヒラメ釣りのエサがなければ釣査は始まらない。まずはイワシ釣りだ。ポイントは、一年中イワシの溜まり場になっているというマリーナの目の前。ほかじゃイワシ釣りで苦労することも多いのに、なんて恵まれたマリーナだこと。
このエリアではコマセが禁止だから、釣り方は空サビキである。魚探を見たら、いるわいるわ。宙層に浮かぶリンゴみたいな真っ赤な反応に仕掛けを入れると、たちまちセグロイワシがヒットした。
イワシをていねいにイケスに仕込んだら、お次はマリーナから南西に延びる"アステロイドベルト"に向かった。フラットな砂地が広がる銚子沖のなかで、フィールドマップに描いたとおり、この筋と通称「牛小屋」から真南に延びたラインは、まるで小惑星帯のように根が多く、さまざまな魚のよりどころになっているのである。
このラインを走りながら魚探をかけてみたところ、たしかに銚子沖は地形の変化が少なかった。かなり走っているようでも、水深はなかなか変わらない。スケールが大きいのだ。水深15メートルくらいから270度で走り続け、おそらく1マイル以上走っただろう。水深が17メートルを超えたあたりから、ボトム付近にベイトの反応がポツポツ出てくるようになった。いよいよ本命のスタートフィッシングである。期待に胸が膨らむ(ような気がする)。
冬にもかかわらず、当日は絶好のベタナギに恵まれた。新行内さんによれば、こんな日は釣りにうってつけだという。「銚子はナギを釣れ」ってか。
イナダ、サワラ、ヒラメは?
最初に魚がヒットしたのはタイラバーだった。
「ハナダイの反応は底から水深10メートルくらいまでの範囲に出てきますよ。ホウボウのポイントも同じ。反応さえ見つかればすぐに食うはずです」
新行内さんはそう言っていたのだが、なぜかこの日はハナダイの反応がさっぱり。せっかく魚のサイズがわかるデジタル魚探まであるのになあ。もったいない。
そこで、ジギングロッドに持ち替えたところ、ときどきバイトがあってもフックアップせず。次にハナダイ、ホウボウも釣れてくるだろうと思って、タイラバーに替えたとたんのヒットだった。
青もののポイントはエリア全域。カツオとメジ以外はけっこう岸際まで寄ることがあるという。当日のヒットポイントは水深17メートル前後だった。
最初に顔を見せたのは、タイラバーにヒットしたワカシ?イナダ?なんか微妙な釣果だな~。もう冬なので、一応イナダってことにしておこう。
ん?ハナダイにしてはタナが浅いし、やけに突っ走るゾ。もしかして青ものか?正解。ちょうどワカシとイナダの間くらいのサイズだった。ボウズは免れたとはいえ、なんか微妙だな、こりゃ。
銚子マリーナのクラブ艇には、ロッドキーパーが4台セットできる。このロッドキーパーを利用してヒラメのサオを出しながら、その後もずっとハナダイ、ホウボウと、イナダ、サワラをねらってみたものの、釣れてくるのは相も変わらずイナダばかり。ほかのアタリといえば、二度、タイラバーのハリスがサワラに切られたくらいだった。
ハナダイ、ホウボウもねらってタイラバーもやってみたらなにかがヒット。海面でサワラの魚体を確認した途端にバレた。よく見たらハリスがスパッと切れていた。ま、サワラじゃ仕方ない。
新行内さんがキャッチしたイナダは、ハナダイ用のサビキにヒット。群れで回っているだけあって、イナダはじゃんじゃんバリバリ釣れる。
「おっかしいなあ。ヒラメとハナダイはどこ行っちゃったんだろう......」
エサのイワシが全然弱らないのと対照的に、ついに新行内さんまで元気がなくなってきちゃったな。このままじゃ、せっかく声をかけてくれた新行内さんに申しわけない。なにがなんでもヒラメを釣らなければ!
そこで、残り時間はハナダイもイナダも捨てて、ヒラメ一本に絞ることにした。中途半端なベイトの反応は全部無視。ポツポツじゃなくて、ベイトフィッシュが土砂降りみたいにいるポイントなら釣れるだろうと、とにかくひたすらベイトを探してみた。
そうやって走り回ってみると、あらためて銚子のスケールの大きさを痛感した。2本の"アステロイドベルト"はもちろん、ヒラメはハナダイ、ホウボウより比較的浅場にいるというので、新行内さんが知る実績ポイントを回ってみたら、はっきりした高根や魚礁がほとんどないんだよね。海底地形の印象は、見渡す限りの大草原って感じ。だから釣れないってことはないだろうけれど、1日でヒラメのいる小さな家を見つけるには時間も手がかりも少なすぎる。かれこれ1時間以上走り回ったところ、水深20メートル以下の浅場は全滅っぽかった。
冬の日は短い。そろそろ帰航時刻も迫ってきたゾ。イワシも残りわずか。こりゃヒラメは無理か? やっぱり無理なのか?それでもラストチャンスに懸けるべく、最後に1カ所だけ、水深20メートル以上の場所へ行ってみることにした。
目星をつけたのは、マリーナの真南にある、等深線が複雑に入り組だ場所である。
ポイントに到着して驚いたのなんの。魚探にはゲリラ豪雨級のベイトフィッシュの反応が出たではないか!おまけに、銚子マリーナのヒラメ名人である〈P丸〉さんがいて、ぼくらが釣果を尋ねるそばから、目の前でなななんとダブルヒットを見せつけたのだ。これは絶対釣れるパターンだよ! 残り時間はラスト10分。急いで仕掛けを入れなくちゃ!!
で、結果はですね、いつもの隊長なら(たぶん)ここでミラクルを起こせたはずなんだけど、銚子に限ってはやはりそんなことはありませんでした。一度アタリが来たのに、ヒラメはなぜか食い込まず。それで虎の子のイワシがジ・エンド。時間もちょうど底をつき、一番大事なミッションは達成できなかった。新行内さん、ごめんなさい......。
「だれか隊長の代わりにシースタイルでヒラメを釣ってくれ~! ヒラメはたくさんいるからさああああ!」
あれ?10年前の記事もこうやって終わったような......。
とかいって、ホントは土壇場でヒラメをキャッチ!なんてことはまったくなくて、これは銚子マリーナのヒラメ名人〈P丸〉さんに借りた魚。しかも、ダブルヒットしたうちの1尾。たくさんいるんだけどな~、ヒラメ。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
なにしてるのかって?吠えてるんだよ。場所はどこかって?もちろん犬吠埼。セリフはなに?最後まで本文を読めばきっとわかります。
【今回のロコ・アングラー】
新行内 光(しんぎょうじ・みつる)さん
銚子のポイントに精通するボートのインストラクター。地元出身のハーバーマスターだけあって、漁業関係、プレジャーの両方の釣り情報に詳しいエキスパートだ。
YF-23の船底中央に見える出っ張りがヤマハお得意の造作であるウェーブスラスターブレード。風流れを抑え、乗り心地を向上させる効果がある。船名は〈海来来〉と書いて「ミラクル」。はたして隊長はミラクルを起こせるのか!?
クラブ艇にはマリントイレがあり、安心してゲストも呼べる。カディはけっこう広くて、いろいろな意味で快適。
銚子ポートタワーからの眺め。銚子の町並みから太平洋の水平線までを眼下に見下ろす景色は雄大だ。
安全講習では毎回ビデオ講習を受講する。初回時に限り、危険海域の説明をはじめ、インストラクターが同乗していろんなことを教えてくれるので安心だ。
イワシのポイントはマリーナを出てすぐ。ナブラや濃い反応がたしかにあって、びっくり仰天!
波とウネリの波長が大きな銚子の海にはこのYF-23がベストマッチ。静止安定性が高く、コクピットは広々していて、とても釣りやすかった。
まずはヒラメ用にイワシを確保する。この日釣れたのはほとんどセグロイワシだったけど、マイワシやウルメイワシも釣れるとのこと。
標準装備のGPS魚探に加えて、魚のサイズがわかるフルノの8.4型魚探FCV-585も。2周波併用しても画面が見やすくて実に快適。
これだけイナダがいたら、たしかに"イージーに釣れる"わな。ジグを落とせばタダ巻きでOKだから、ビギナーでも十分釣れるよ。なんだかんだいって、魚がたくさん釣れると、うれしくなってつい調子に乗ってしまうのだ。
後ろに見えるは「東洋のドーバー」の異名を持つ屏風ヶ浦。銚子の風景は独特。海から見ると、北海道を思い出す。ドーバー海峡に行ったことがないもので。ちなみに、犬吠埼もビューポイントです。
クラブ艇にはしっかりしたロッドキーパーが左右2台ずつ、計4台も取り付けられる。それを利用して、ずっと置きザオで最重要ミッションのヒラメ釣りをやっていたのだが......。
「これはワカシかな? イナダかな?」、「ワカチコ、ワカチコ」、「なに、それ?」、「"ゆってぃ"知らないの?」、「知らないなあ」、「どっちにしても微妙......」。
クラブ艇のロッドキーパーは、エサ釣りにはとっても重宝する。広範囲を探るため、ヒラメの泳がせ釣りは、置きザオでヨコタ流しが銚子流だ。
ラストに入ったポイントでヒラメのアタリがあり、手前船頭中の隊長。でも、なぜかこのときだけ風が強く吹いて、すぐに離されてしまった。逆神風?で、タイムアップ。さすが鬼門(泣)。
釣果カレンダー
本文にも書いたとおり、銚子周辺には目立つ高根や魚礁がほとんど存在しない。そのせいで魚種を釣り分けるのが難しく、イワシエサを使うヒラメ以外では、五目釣り感覚で臨むのが得策だ。また、ワカシ、イナダ、サワラは地形に付かないので、ナブラ、トリヤマ、ベイトフィッシュが目安となる。メジ、カツオは、近づいてもエリアの南限あたりまで。こうした大規模回遊魚の釣果は年によって変動が大きい。
銚子沖のフィールドマップ
マリーナが南向きのため、南風が強いと出航は難しい。風速8メートル、波高2メートルが一応の目安。長崎鼻は沖まで浅く、衝突や座礁の可能性があるので、岸から最低1マイルは離れて航行しよう。岩の位置を熟知している漁船のマネをしてショートカットするのは禁物。また、漁船はオートパイロットで見張り不足の恐れがあるため、かならずこちらから避けること。
おみやげを買うなら銚子ポートタワーや銚子漁港近くの「ウオッセ21」でどうぞ。魚と水産加工物をはじめ、銚子のみやげ物が各種そろっている。
千葉県銚子市川口町2-6529-34
TEL:0479-25-4500
営業時間:午前8時30分~午後5時30分 年中無休。
隊長は「ウオッセ21」で練り物を買いました。閉店間際の特売で、とてもオトクにゲットできてラッキー♪
銚子名物の「ぬれ煎餅」も各種売ってます。
釣りのあとに温泉に入るなら、雑誌の日帰り温泉人気投票にランクインしたという「犬吠埼観光ホテル」がおすすめ。入り口前の足湯(無料)も気持ちいいよ。
大浴場:午前11時~午後8時30分(受け付け終了)
入浴料:大人、子ども1,000円(平日) 大人1,200円、子ども1,000円(土、日、祝日)※ハイシーズンは別料金の場合も
千葉県銚子市犬吠埼10293 TEL:0479-23-5111
当日の釣果。ずっとイナダをねらっていればもっと釣れたけど、あんまりたくさん釣っても仕方がないからね。
もちろん、ヒラメもいる。これは〈P丸〉さんからお借りしたヒラメ。ハナダイ、ホウボウ、ヒラメも自分で釣りたかったなあ。
マリーナの近くには小さな釣具店しかないので、エサをはじめ、釣り具の購入には、24時間営業の「アタック5」銚子芦崎店が便利だろう(ドラッグストアと併設)。
千葉県銚子市芦崎町橋本455
TEL:0479-30-1352
年中無休、24時間営業
広い敷地を利用して、銚子マリーナはドッグランも併設している。テラス席にはワンコ連れでもOKのカフェもある。犬好きなら、こんな場所も見どころかも。初回のみ1犬800円で1日出入り自由(営業時間内)。
※要各種予防接種証明書
銚子マリーナ
黒潮と親潮がぶつかる海域に張り出したロケーションは、釣りに絶好。敷地はとにかく広くて、余裕のスペースを誇る。夕日のきれいなマリーナとしても有名だ。また、「銚子ビルフィッシュトーナメント」をはじめ、釣りのイベントも開催している。
■交通アクセス
車利用:東関東自動車道潮来ICから国道124号線を通り約1時間
■問い合わせ先
〒288-0025千葉県銚子市潮見町15番地
定休日:火曜日
営業時間:(4~9月)午前8時30分~午後5時30分、(10~3月)午前8時30分~午後5時
TEL:0479-25-7720
マリーナの敷地は水域面積が13ヘクタール、陸域面積が10ヘクタールととにかく広々。都市近郊のマリーナとはひと味違う雰囲気が味わえる。
ハーバーマスターの新行内さんが直々にシースタイルを担当してくれる。基本的には安全講習、操船講習なども新行内さんの担当だ。新行内さんはとても気さくで話もおもしろいから、ぜひ利用してみてください。
今回使用したタックル
航行区域内のポイントは比較的水深が浅く、ターゲットもワカシ、イナダ、サワラなのでライトジギングのセットが快適。スピニング、ベイトどちらでもOKだ。エサ釣りには、オールマイティーなライトゲームロッドがあればヒラメとハナダイ、ホウボウからタイラバーまでカバーできるので、銚子での釣りには1本あると便利。ただし、本格的にヒラメをねらうなら、3m前後の専用ザオを激しくおすすめします。
ジギング用が左のスピニングロッドで、ラインはPE2号にリーダーはナイロンの30ポンド。右のサオはタイラバーが結んであるけれど、エサ釣り用のライトゲームロッド。
今回のヒットルアー。上がデュエル・ソルティラバー60g。下はダイワ・サクリファイスリーフの60g。
エサ釣りには市販の仕掛けを使った。ハナダイ、ホウボウはサビキで、チダイ用のサビキも市販されているが、新行内さんによれば、写真のようなアジ用でも十分とのこと。