Vol.20 千葉県・東京湾
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は千葉県・東京湾のシーバス・コマセ五目をご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回は、豊かな浅瀬が広がる木更津マリーナから出港して、浅場の豪快なシーバスフィッシングと、東京湾の人気スポット、保田へのグルメクルージングという豪華二本立てでお贈りいたします。ボート倶楽部2008年6月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
春シーバスと聖地巡礼の旅1泊2日お楽しみプラン!?
ブヒッ! ......ゴシゴシ、う~、ブヒーッ! ......ゴシゴシ......う~......。
いやはや、今年も来ました花粉症の季節。学生のときから重症の隊長は、この時期になると、眼はかゆいしクシャミも連発。今シーズンは特にヒサンだ。海に出るとちょっとよくなるんだけど、春は花粉症の薬が手放せない。杉もお盛んですな、まったく。
花粉症だけじゃなくて、春は隊長にとって悩み多き季節である。「春に三日の晴れなし」のとおり、天気はめまぐるしく変わるし、強風も吹きやすい。おまけに釣りもいまひとつ。群れが固まる秋とは対照的に、散りゆく春は魚を追いかけるのも大変だ。魚もウキウキして気まぐれになるんだろうか。それにしては水温が低くて食いはシブめ。要はいろいろムラが大きいってわけですね。
さて、この春の釣査はどうしたものか。天気が荒れやすいから、やっぱ遠征はやめとこ。車で行ける範囲だと東京湾と相模湾が無難だな。充実した釣査が見込めるところは......と、シースタイルHPの「ホームマリーナ一覧」を見て目をつけたのが千葉県の「木更津マリーナ」。
木更津は富津岬の北側だから大シケやウネリをもたらす南風に強いだろうし、シーバスも釣れるはず。なにより目を引いたのは「ばんや」の3文字だ。そう、保田漁協直営のお店である。
保田は東京湾のクルージングの聖地。しかも、おいしい釣果はゼッタイ確実。隊長はまだ保田に行ったことがないから、今回は保田巡礼クルージング付きのお楽しみプランってことで、アクアラインを渡ってみました。
イケメンロコアングラー登場
神奈川県・川崎側から行くと、アクアラインを越えてすぐの木更津金田ICを降り、15分ほどで木更津マリーナに到着する。館山自動車道の場合は木更津南ICから約5分。千葉はもちろん、東京、神奈川からも便利な場所だ。
最初に出迎えてくれたのはロコアングラーの平田将士さんである。平田さんは木更津マリーナの母体である「セントラル」に「フラットフィールド」というショップを構えるエキスパート。TOKIOの山口達也似のイケメンで、釣り雑誌やテレビで活躍中だから、ご存じの方もいるのでは?平田さんがシーバスのガイドをしてくれるなら、釣ったも同然だね、こりゃ。
今回は木更津の釣りと保田クルージングという二本立てのため、釣査は2日間の予定。天気は快晴。ほぼ無風。一見、絶好のクルージング日和だけど、そこは春。天気予報によれば昼から南風が強くなるという。安全講習のあと、平田さんと相談して、初日はシーバスで、クルージングは翌日にした。
びっくり仰天の狂乱状態に遭遇
90馬力を搭載したAS-21は穏やかな海面を快調に疾走する。と思いきや、木更津の防波堤を越えてすぐ平田さんが急にスロットルを戻した。視線の先に目をやると、驚くべき光景が広がっていた。何十、何百というボラが次々に跳ねている。利根川のハクレンに負けずとも劣らぬ狂乱状態だ。これには平田さんもびっくり。
「いつもボラはいますけど、これほど跳ねてるのは見たことないっすね」
「なんでこんなに跳んでるんですか?」
「テンション高いんですよ、ヤツら。春ですし」
わかったようなわからないような答えだが、ボラの群れにはシーバスが付いているというので釣り開始。
水深は約5メートル。ポイントはボラ。いや、ボートの周囲360度だ。どこへ投げてもOK。ルアーは9センチ前後のシンキングミノー。アクションはそのとき次第なので、いろいろ試してみよう。タチ(水深)が深くても、ヒットゾーンはシャローだから、カウントダウンの必要はない。基本的にはミノーを遠投しては巻くエンカウンター(出合い頭)の釣りだ。よく言えば豪快で開放的。悪く言えば能天気?でも、隊長は嫌いじゃないゾ、こういう釣り。
高密度ウレタンとFRPによる一体成型三重構造「FOAMAP」を採用したAS-21は、小粒ながらも高い剛性が自慢の頼れるボート。釣りはもちろん、ウェイクゲート付きなので、ウェイクボードも楽しめるゾ。
シーバスのメインパターンはシャローフラットでのミノーイング。ボートの周囲360度、どこでもヒットする可能性がある。ミノーをロングキャストしては巻く豪快な釣りだ。
やっぱり吹いた強風に大苦戦
ところが、投げても投げてもシーバスは釣れなかった。このねらい方ではツボにハマるタチがかならずあるそうで、2メートルから7メートルの間のポイントをひととおり回ってみたものの、平田さんにショートバイトが2度あっただけ。前日はきっかり5メートルで入れ食いだったという。シーバスはいったいどこへ行ってしまったのか?
そうこうしているうちに、南のほうに白波が見えた。と思ったら、あっという間に強風がやって来た。突然の変わりようはさすが春。保田に行かなくてよかったよ。みなさんもかならず出航前にも予報をしっかり確認しておきましょう。
焦ったのは平田さんだ。すんなり釣れると思っていたシーバスが音信不通。おまけに状況は悪くなる一方である。ま、取材ではよくあることぐらいに隊長は思っていたけれど、釣らせ役として気をもむのはごもっとも。
厳しい表情の平田さんは、意を決した様子で移動した。
次に入ったポイントは岬状に沖に突き出た水深2メートル以浅のドシャローだった。ボートを風に乗せて流し、平田さんと隊長は風下側にキャスト。すると、高速リトリーブ中の平田さんのロッドが激しく躍った。ヒット!ときどき勢いよくラインを引き出しながら上がってきたのは元気なグッドサイズ。パターンをつかんだ平田さんはすぐに2尾目を追加。なんと、シーバスはこんな浅場にいたのである。
ようやく平田さんがシーバスを掛けた。ヒットゾーンはなんと水深2メートルにも満たないドシャロー。ほとんど波打ち際だ。
こうなればしめたものだ。余計な小細工はまったく不要。水深が浅いおかげで、猛然と横っ走りするファイトは超ゴキゲン。ブンッとロングキャストするたびにゴンッ、ジィー!と良型のシーバスがドラグを滑らせる。男っぽくていいねェ。シャローのオープンウオーターの釣りってホント、楽しいわ。
ところが、残念なことに風がますます強くなってきた。水深が浅いため波も高い。いかんせん、このまま釣り続けるのは厳しいと判断してシーバスは終了。風裏にポイントがあるメバルをねらうことにした。
メバルのポイントは君津製鉄所の岸壁際である。ちょうど風裏で釣りはしやすかったけれど、ルアーでもエサでも一向にアタリは訪れなかった。翌日のクルージングもあるし、風も風なので、この日は早々に切り上げることにした。
今回は(も)平田さんにおんぶにだっこ。隊長もこのとおり釣らせてもらいました。
春の嵐のち一転して絶好のクルージング日和
翌朝になると、風はすっかり落ちていた。予報もばっちり。今度こそ間違いなく絶好のクルージング日和である。
航行区域上、保田まで行けるのは2種類のクラブ艇のうち24シエスタFVだけ。いくらなんでも24シエスタFVに隊長1人では寂しすぎる。そのため、この日も平田さんに同乗していただいた。
マリーナを出航したら木更津航路を抜けて針路を240度に取り......なんて前はやったけど、今はGPSがあるからわかりやすい。富津岬まではノリ棚を示す黄色いブイの沖側を走り、第一海堡と第二海堡との間を抜けたら浦賀水道航路に入らないように南下する。天気がいい日のクルージングは最高に気持ちがいい。この開放感はほかではゼッタイに得られません。家族でも友だちでも、まだ味わったことがない人がいたら、ぜひとも体験させてあげたいよね。
保田までは約20マイルなので、まっすぐ向かえば1時間ほど。往復で2時間でも、せっかく保田まで行くなら、やっぱり余裕のある6時間コースがおすすめだ。
というわけで、しっかりアオリイカとウイリー五目のタックルを積み込んだ隊長と平田さん。まずはキャスティングでエギングに挑戦したものの、潮色を見るとまだ時期が早いようで空振り。続いて根周りでウイリー五目をやってみた。結局、釣れたのはベラとトラギスとネンブツダイだけ。たぶん、寄せエサの効果が高いアンカリングができれば釣果は違っていたはず。でも、金谷、保田は流し釣りエリアのため、アンカリングはご法度だ。加えて、24シエスタFVで2人きりで流し釣りするのはけっこう大変。作戦自体にちょっと無理があった気もするな。とはいえ、クルージングのついでとしては全然OK。なにせ、魚探を見てサオを出すだけでも楽しい人種だからね、隊長は。
保田に寄港して帰るだけじゃもったいないので、当然、釣りをする。金谷沖でアオリイカとコマセ五目にトライ。
昼前からすっかり穏やかになり、流し釣りでもアフトコクピットで2人でサオを出せた。釣りスペースも余裕の広さだ。
おっと、保田に行けば「おいしい釣果はゼッタイ確実」と書いたのは誰かって?よくぞ聞いてくれました。実は「ばんや」で売っている干物が安くておいしいと評判なのだ。実際に行ってみると、アジ、サバ、イナダ、サワラ、イワシ、なかにはタチウオなんてのもあって、見ただけでヨダレものの極上品ぞろい。ここまでの干物は素人にはちょっと無理だわ。おまけに、昼めしもしっかり堪能し、「おいしい釣果」をばっちり仕込めて大満足。
平田さんによれば、季節が進めばシーバスの活性はもっと高くなるというし、クルージングもますます快適になるだろう。釣ってよし、クルージングもよし。充実メニューでおなかいっぱいの木更津マリーナでありました。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
千葉県・保田の「ばんやの湯」前にて。ラムネ温泉とは、人工炭酸温泉のこと。入浴料は大人500円。「入浴シーンでもいいよ」って隊長は言ったんだけど、カメラマンが「それだけはかんべんしてください」だってさ。
【ロコ・アングラー】
平田将士(ひらた・まさし)さん
18歳から本格的に釣りを始め、翌年からボートからのシーバスやメバルに熱中するうちに、ショップを構えてしまったというツワモノ。シーバスのシャローゲームを得意とする。『釣りビジョン』や釣り雑誌でも活躍中。
【クラブ艇】
木更津マリーナのクラブ艇はエアロスポーツ21(AS-21)が3艇と、24シエスタFVが1艇の計4艇。静止安定性にすぐれ、センターウオークスルーのデッキレイアウトを採用したAS-21はキャスティングの釣りにぴったりだった。
24シエスタFV。余裕のベンチシートを採用した広く明るいキャビンは、走っても停泊していても実に快適。幅広の艇体は静止安定性にすぐれている。ロングクルージング&フィッシングも、このボートなら楽々こなせる。
シースタイルの利用手続きをする隊長。ノリ棚、浅瀬、大型船など、注意すべきことが多いので、安全講習はしっかり受けましょう。女性が受付だと、この場面が使われることが多い気がするのは気のせい?
木更津マリーナの快適なクラブハウス。利用手続きや安全講習はここで。無料のコーヒーがとてもおいしかった。隣の修理ヤードには、サービスマンだけでも8人いるというから驚きだ。
強風が吹きだしてからは、風裏を求めてメバルをねらってみた。メバルは魚探の反応次第で、岸壁ぎりぎりでなくてもOK。岸際をねらえば、シーバスやアイナメもヒットする。
たまたま近くにいた同じマリーナのボートがジグで釣ったアイナメを借りて撮影。メバルはどこかへ行ってしまったようで、この日、岸壁で釣れていた魚はこの1尾だけだった。
パターンをつかんだ平田さんは60センチ級を連続ヒット!このサイズがシャローのミノーイングでイージーに釣れるんだから、木更津ってすごい。
シャローで掛けると、一気に横走りするファイトが強烈で楽しいゾ。
2日目は24シエスタFVで保田へGO!このクラスになると、ロングクルージングでも余裕しゃくしゃく。スプレーをかぶらないし、揺れがマイルドで、体への負担が少ないから全然疲れなかった。
キャビンのなかはご覧のとおり明るく広々。大人3人がゆったりと座れるベンチシートを採用。長さにゆとりがあるので、横になってくつろぐことも。実を言うと、帰航中、平田さんはバウバースで熟睡してましたよ。
唯一まともなサイズの魚がヒット!ヒキからして十中八九サバだったけど、すぐにバレちゃった。はぐれサバだったのかな?
まいどおなじみの岩場の外道、ベラとネンブツダイがこの日のゴールデンコンビだった。
保田漁港に入港。ボートを桟橋に留めたら、漁協の2階に行って利用手続きをする。1艇1,000円だけど、500円の「ばんや」の割引券が付くので、食事や入浴をすれば実質500円也。
ここが噂の保田漁協直営の食事処「ばんや」。さすが漁協直営。この格好で入っても全然OKなのがありがたい。
隊長は「朝獲れ寿司」、平田さんは「えび天重」を注文。漁協直営ならではの新鮮なネタがウリ。
イカがたっぷり入った名物の「イカかき揚げ丼」はボリューム満点。
2日目の「おいしい釣果」。千葉特産のノリ、漁師手作りの塩辛、サバ、イカ、イワシの干物など。どう?ウマそうでしょ?
釣果カレンダー
シーバスのポイントは沿岸全域。基本はベイトフィッシュパターンだ。シャローの場合は、特にカケアガリの肩や落ちきるあたりがねらい目で、日によってヒットする水深が決まっているという。最初は手早く広く探ってみて、水深がわかったら集中してねらってみよう。イシモチとアジも魚探で反応や根を探して釣る。アジはコマセなしサビキで手早くねらうやり方も有効だ。
木更津沖周辺のフィールドマップ
9~4月に多数設置されるノリ棚は接近禁止。近づかないように細心の注意を払うこと。盤州と呼ばれる浅場は座礁の危険がある。水深が2メートルよりも浅くなったら、それ以上進入しないのが賢明だ。大型船もよく航行しているので、船はもちろん、曳き波にも要注意。特に朝夕は往来が激しい。また、作業船も多い。注意を受けたら素直に移動しよう。
木更津マリーナよりさらに港の奥へ行ったところに「セントラル」がある。海の駅に指定されており、目の前の桟橋に着岸可能。ボートで「Flat Field」にも立ち寄れる。
セントラルのなかにある平田さんのショップ「Flat Field」。直接の名前の由来は「平田」からだけれど、シャローフラットな木更津の地形にもかけているとのこと。ソルトルアー関係が充実。オリジナルロッドもある。
初日の夕食は、連載でおなじみの森山利也さんの激ウマ居酒屋「はいから屋」へ行った。木更津マリーナからなら、車で20分ほど。森山さんは、実は隊長が釣り雑誌の編集をしていたころからの古い仲なのだ。
「はいから屋」
千葉県富津市青木1646TEL:0439-87-9408
エサを買うならこの「宮川丸」がおすすめ。遊漁船や渡船もやっているので、釣り情報は万全。木更津マリーナから出航すると言うと、ていねいに教えてくれる。2日目のエサはここで購入した。
「宮川丸」 千葉県木更津市中央3-15-22
TEL:0438-23-4891
http://www.miyagawamaru.co.jp
セントラル(木更津マリーナ)
千葉県内房を代表する老舗マリーナ。新艇、中古艇の販売をはじめ、メインテナンス、保管、免許教室の開催など、マリンライフをトータルにサポートする。保管艇はすべて陸置きで、7月から拡張するため、保管艇を大募集中。大型艇もOKだ。シースタイルの会員は駐車場とシャワーを無料で利用できる。
■交通アクセス
車利用=館山自動車道木更津南ICより約5分。東京湾アクアライン木更津金田ICより約15分
■問い合わせ先
住所:千葉県木更津市木材港2-1 TEL:0438-37-2091
営業時間:午前9時~午後6時
定休日:月曜日(祝祭日の場合は火曜日定休)
http://www.central-boat.co.jp
7月の拡張に向けて、新たに70トンクレーンを導入。東京湾にしては保管料はリーズナブル。保管場所を検討中の人はぜひ問い合わせてみてください。
レンタル担当者の成田 茜さん。好きな魚はマグロ!とか。もちろん釣るんじゃなくて食べるほうだけど。明るくて笑顔の素敵な看板娘です。
今回使用したタックル
今回は平田さんがシーバスタックルを、隊長がエサ釣り用を用意することにしたので、ウイリー五目用の2セットを持っていった。水深は深くても水深40メートルまでとにらみ、仕掛けは30号のビシを使ったライトウイリー。電動リールではなく手巻きの小型両軸受けタイプを選択。ライトゲームタイプのロッドと組み合わせて、感度と操作性、そしてなによりフィーリングを重視した。
【ROD】ダイワ・A-トリガーライトゲーム180M(右)/アナリスターライトゲーム180S(左)は、操作性の高い軽量・高感度モデルながら、大物が掛かってもサオ全体で吸収するパワーを持つ、ボート釣りに広く使える6対4調子のライトゲーム用ロッド。困ったときの1本にも最適。
「A-トリガーライトゲーム180M」 ●全長:1.80m ●継ぎ数:2本 ●自重:105g ●オモリ負荷:20~60号
「アナリスターライトゲーム180S」 ●全長:1.80m ●継ぎ数:2本 ●自重:130g ●オモリ負荷:10~40号
【REEL】ダイワ・スポルザ150L(右)は、ワンプッシュONクラッチを搭載した、1回転で71cm巻き上げるハイスピードモデル。ダイワ・スマックレッドチューン100L(左)は、片手でクラッチのON/OFFとチョイ巻きができるスマック機構を搭載した超軽量モデル。
「スポルザ150L」 ●ギア比:6対3 ●イト巻き量:2号200m ●自重:275g
「スマックレッドチューン100L」 ●ギア比:6対3 ●イト巻き量:2号 150m ●自重:200g
デビューしたばかりのダイワ・A-トリガーライトゲームと同スポルザの強力タッグ。ロッドアクション、巻き上げ感、ドラグの滑り、トータルバランスなど、いずれも極上のフィーリング。