Vol.12 神奈川県・小坪
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は神奈川県・小坪コマセ五目釣りをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回のフィールドは湘南は小坪周辺。より広く、多くの人にマリンの楽しさを、というシースタイルのコンセプトにあわせて、名所見物がてらのお手軽五目釣りの巻。ボート倶楽部2006年6月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
祝!新装開店
え~、毎度おなじみの釣査隊ですが、今回からお題が変わることになりました。その名も「マリンクラブ釣査隊」。理由は簡単。4月から「ヤマハSRVレンタルボートクラブ」が「ヤマハマリンクラブ・シースタイル」にリニューアルしたからであります。
で、なにが違うかっていうと、実はあんまり変わってない(笑)。というのは冗談で、ぱっと見は同じようでも、中味はずいぶん変わってます。
特に充実したのが情報面。これまでは単なるレンタルボートだったのに対し、シースタイルになってからは、各マリーナの個性を打ち出しつつ、いろんな遊び方や釣り情報を発信中。サイトにはさっそく「海遊びプラン」がアップされたし、今後は最新情報をお届けする会報誌も登場。つまり、よりわかりやすく、より楽しくなったってわけ。また、24シエスタFV、YF-23、YF-23EXという1クラス上のフィッシングボートが加わったことも見逃せない。このサイズ、釣りにはゼッタイ効きますよ。
遊び&釣りの幅がぐんと広がるリニューアルは隊長も大歓迎。そこで釣査隊もタイトルを変えてみた次第。ま、釣り担当ってことで、釣査隊は相変わらずだけどね。
春のお手軽五目釣りはいかが
"よりわかりやすく、より楽しく"という新装開店に合わせて、今回のテーマは春のお手軽コマセ五目釣りにしてみました。出艇場所は神奈川県逗子の小坪マリーナー。前回の浦賀に続いて近場の理由は、手軽さに加えて、天候が不安定な早春だったこともある。春一番や春雷というように、天気の移り変わりが速くて荒れがちな春先。そんな時期に遠征するのはリスキーだもの。
小坪は逗子海岸と鎌倉の間にある小さな港町だ。湘南の海辺とはいえ、国道134号線が迂回しているから珍しく落ち着いている。アクセスもよくて、東京から車で1時間足らずで到着。出航可能時刻の10時前には全員集合した。
いつも頼れるロコアングラーをお迎えする釣査隊だけど、今回の林 悠二さんも強力ですぞ。なにしろ『スポーツニッポン』釣り欄のデスクだよ。スポーツ新聞の釣り欄担当といえば、隊長もうらやむお仕事のひとつ。毎日新鮮な釣り情報が飛び込んでくるし、時間も比較的自由なはず。現に逗子にマイボートをお持ちの林さんは、出勤前にちょいと出船なんてことは日常茶飯事とのこと。年間釣行回数を聞いたら、「そんなこと言えませんよ」だって。相当行ってるな、こりゃ。
安全講習を受けてからボートを出す流れは、シースタイルでも変わらない。マリーナを出てすぐは浅瀬があるため、きっちり220度の針路を保ち、右手に江の島、左手に葉山の赤灯を結ぶラインに来ると「交差点」の黄色いブイがある。それより沖に出たら釣り場へGO、と安全対策も明快だ。これならビギナーも安心だろう。
目指すは映画『稲村ジェーン』の舞台になった稲村ヶ崎の沖だ。正面には江の島と富士山が見える。いかにも湘南って感じの贅沢な風景。ゲストを連れてきたら喜ぶだろうなァ。
ポイントは30~50メートルの間の根周りである。もともと気楽に楽しむつもりだから、難しく考えずに、魚探の反応を見ながらテキトーにサオを出すことにした。今回は一応、乗っ込みマダイの可能性もある林さんのおすすめエリアへ行ったものの、葉山から江の島一帯の、30~50メートルラインの根周りであればどこでもいいらしいよ。
『稲村ジェーン』で歓迎会!?
稲村ヶ崎沖で水深30メートルラインをなぞると、よさげな反応があった。魚探のボトムライン(尾引き)がいきなり分厚くなるのは砂地のなかの根の証拠。いい兆候ですね。
相模湾では流し釣りが一般的だが、この日は風が強いためアンカリングした。遊漁船の迷惑にならないように周囲を見渡して、アンカーを投入する。風が適度にあるおかげで位置を決めやすく、一発で成功。海底の上5メートルくらいまでちゃんと反応があるゾ。これは期待できそうだ。
でもって、1投目から隊長にクククッと小走りするアタリがきた。このヒキはアジっぽい。と思ったら、やっぱりアジだった。驚いたのはその魚体。まだ春で、しかも水深30メートルの近場なのに体高があって太ってる。まるで沖のアジみたいだ。すごいね。
すぐに林さんもヒット。「こっちもアジだよ」と言ったけど、上げてみたら小さなマダイ。もちろんリリースする。
その後も魚の食い気はまったく衰えず、デッキ上は釣査隊始まって以来の入れ食いに突入。ところが、林さんにはマダイが釣れるのに、なぜか隊長にはさっぱり。おかしいなあ、と思って林さんの釣り方を見たら、バンバンコマセを撒いて、しっかり合わせてる。ムムぅ?ポロポロコマセで向こうアワセというコマセダイのセオリーと違うぞ。そのわけを林さんに聞くと、「コマセはたくさん撒いたほうがいいよ。それから、アタリがあったら合わせないと、小さなマダイは掛からないからね」
遊漁船と違って、ひとフネあたりの量が少ないから、多めにコマセを撒いたほうがいいという。また、大きなマダイは向こうアワセでよくても、小さなマダイは合わせないと掛からないそうだ。おまけにそのほうがアジも釣れる。なるほど、それでハリスが3ヒロと短めなわけか。
つまり、積極的に寄せて掛けるのが林流ってこと。さっそく隊長も真似してみたら、ホントにマダイが釣れました。さすが林さん。
積極的に釣るコマセダイ釣法はなかなか楽しい。それにしても、この釣れっぷりはどういうことよ!? お魚さんたちが新装開店の大歓迎会でも開いてくれてるんだろうか、と喜んだのも束の間――。南西の風が飛ぶように吹いてきた。こりゃマズい。急いでアンカーを上げてマリーナへ。
結局、正味1時間ほどで釣りは終了。釣果だけなら大満足とはいえ、釣査としては物足りない。そこで、翌々日に再釣査を決定(翌日はもっと荒れました)。春はこれがあるからなあ。近場にしといてよかったよ。
一荷でマダイを釣りあげた林さん。「小さいのがいるってことは」っていうから、てっきり「大きいのもいるはず」と言うのかと思ったら、「来年が楽しみだね(笑)」だってさ。ジョークもお上手なようで。
カワハギは『失楽園』で
スポーツ新聞のデスクが同じ週に2度も付き合えるほど暇なはずがない。ということで、翌々日は隊長だけの単独釣査である。
この日は打って変わって穏やかな晴天。天気よし、海よし。とくれば、もちろん柳の下のアジ&マダイをねらって稲村ヶ崎沖へ――。
しかし、海ってのは面白いねぇ。海況がすっかり変わったこの日はマサバの猛攻に遭遇。アジとマダイはその間にポツポツって感じだ。この前はシケ前の荒食いだったのか......ま、珍しく丸々太ったうまそうなマサバだからいいんだけど、"ばっかり"ってのも飽きてくる。よってポイントを移動。
近くの30メートルラインでボートを走らせると、魚探のボトムラインがいきなり5メートルも立ち上がった。これはいったいナニ?魚礁でも沈めたのかな。アジとおぼしき反応もしっかりある。よし、ここで釣ってみよう。
風が弱かったし、根も小さかったのでここは流し釣りが正解。すると、根際でググッと勢いよく締め込む激しいアタリ。マダイか!?
と思いきや、全然ヒカない。姿を現したのはでっぷり太った良型のカサゴだった。そのコンディションのよさにはびっくり。あとで5センチくらいの小魚を2尾吐き出してたよ。
コマセ釣りでそこそこ型を見たあとはカワハギにチャレンジした。林さんいわく、葉山から江の島一帯の沖は基本的に砂地になっていて、砂地に点在するツブ根のフチをねらうとカワハギやシロギスが釣れるらしい。
ってことで、せっかくだからもうちょっと江の島寄りへ行ってみた。今度は『失楽園』で有名になった鎌倉プリンスホテル沖の25メートルの根際を探ったら、小さいながらも2尾キャッチ。エサ盗りがうまくてマニアックなイメージもあるカワハギだけど、アタリが多いし、人よりたくさん釣ろうとカリカリしなきゃ素直に楽しめる。エサもアサリだし、ビギナーにもいいと思うよ。
2日目でもあることだし、この日はこれで店仕舞いにした。あまった時間でお次は裕次郎灯台のある葉山沖までクルージング&写真撮影。沖にはディンギーやセールボードなんかも浮いていて、お洒落な湘南の海を満喫しちゃいました。
ポイントはシンプルでわかりやすいし、釣りもお手軽。おまけに、名所がめじろ押しのロケーション。名所見物がてら、たまにはこんな釣りはいかが?ベテランからビギナーまで、十分楽しめます。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
最近、ブログを開設しました。タイトルの「かいじんだもの。」で検索するとヒットします。ぜひご覧ください。あ、小坪マリーナーではアミコマセと付けエサ用のオキアミも売ってるから、コマセ五目のエサはここで買えばOKですよ。
【ロコ・アングラー】
林 悠二(はやし・ゆうじ)さん
『スポーツニッポン』釣り欄のデスク。4・7メートルの和船で、毎日のように(?)海に出ているらしい。当然、釣りの知識も技術も相当なもの。マダイ、イサキ、カワハギ、マルイカなどテクニカルな釣りを得意とする。
【クラブ艇】
今回のクラブ艇はヤマハYF-21CC。風流れの影響を抑えるウェーブスラスターブレードは、アンカリング時にも有効。ボートの挙動が安定しているおかげで快適に釣りが楽しめる。
利用前に毎回安全講習の「ホームマリーナ・ガイダンス」を受けるのは以前と同じ。船の扱い方や水域の説明などをわかりやすく教えてくれるので安心だ。
ちょっと荒れ気味の初日は、アンカリングしてサオを出した。センターコンソールタイプのYF-21CCの釣りスペースはとても広く、2人なら余裕でサオを出せる。
小坪マリーナーを出航する。暗礁を避けるため、江の島と葉山新港の赤灯を結ぶラインの沖まで針路220度で直進だ。
ご覧のようにフィールドは江の島から葉山という湘南のなかでも超人気エリアの沖。名所を海から眺めるのもまたよし。
今回はマアジとマルアジが混じったけど、この号が出るころにはもっとおいしいマアジが釣れるよ、とのこと。
「小さいマダイは合わせないと釣れないよ」と林さんに教わってようやく掛けた1尾。リリースサイズだけど、うれしかったな。
林さんがダブルでアジを掛けた。
さすが、よく釣ります。
コマセ五目では意外なゲストのカサゴだけど、これだけコンディションのいいグッドサイズなら大歓迎。刺身で食べたら、最高に脂が乗っていてとてもうまかった。
海がすっかり穏やかになった2日目は、得意の手前船頭でピンポイントを攻略。
かの有名な江の島を海から眺める。この白灯が航行区域の西端
釣果カレンダー
地形的には単純だが、シーズン、水深、エリアを変えていろんな釣りが楽しめる。マダイとアジ、サバのポイントは水深30~50mの根周りで共通。シロギスとカワハギのエリアも同じで、根際ならカワハギ、砂地ならシロギス。5月過ぎにイワシの群れを追いかけて入ってくるヒラメは、イワシに付いているので、ヒラメサビキでねらうと効率がいい。マダコとイイダコは水深8~10mをテンヤで探る。
小坪周辺のフィールドマップ
小坪港周辺には暗礁が広がっている。入出港の際は必ず安全講習での指示にしたがうこと。また、名島や江の島をはじめ、座礁の危険もあるので陸地には近づかないように。エリア内には定置網のほか、ペットボトルなどのエビ網用の小さなブイも多く、注意が必要だ。5~12月にはシラス網漁船が操業する。150mほどある長い網を曳くのですぐ後ろを横切らないこと。
単独釣行での釣果。初日に比べればアジとマダイは少ないものの、カサゴとカワハギが釣れてバラエティー豊かに楽しめた。
葉山名物の裕次郎灯台。陸側にも灯台があって、その間が航路になっている。名島周りはアオリイカやカサゴ、マルイカなどの好ポイント。
事前にエサを買うなら地元の釣具店「愛古堂」が便利。各種のエサや仕掛けが豊富に揃っている。
住所:神奈川県逗子市逗子5-4-28
TEL:046-871-2875
URL:http://www.aikodo.jp/
■営業時間 午前7時半~午後7時 木曜定休
小坪マリーナーでは釣った魚を料理してくれる日本料理店「潮騒料理 哉吉」を紹介してくれる。カウンターのある店内はとてもお洒落で、味に定評のある名店だ(釣魚料理はマリーナの紹介時のみ)。
住所:神奈川県逗子市逗子1-8-3
TEL:046-873-9910
URL:http://daikichi.ne.jp/
■営業時間 午前7時半~午後7時 不定休
小坪マリーナー
1965年創業の、湘南では歴史のあるマリーナ。地元密着型でアットホームな雰囲気が好ましい。釣り人だけでなく、漁師さんからの釣り情報もばっちり手に入る。簡単な釣り道具、仕掛け、オキアミとアミコマセを販売。また、シャワーも無料でアフターフィッシングも快適だ。2階にある素泊まり3,500円の部屋は利用価値が高そう。
■交通アクセス
車利用=横浜横須賀道路「朝比奈IC」または「逗子IC」から約20分
電車利用=JR鎌倉駅から小坪経由バスで小坪下車、徒歩約5分。またはJR逗子駅から小坪経由バスで小坪海岸下車、徒歩約4分
■問い合わせ先
〒239-0821 神奈川県逗子市小坪4-27-12
TEL:0467-23-1516
クラブ艇はYF-21CC、UF-21HTカディ、エアロスポーツ21、SRV20の4艇と充実。ゴールデンウイークから10月いっぱいまでは2階でレストランも営業。
シースタイル担当の平井義久さん。小坪生まれ小坪育ちの釣り好きで、漁師にも知り合いが多く、周辺の海と釣りを知りつくしている。
今回使用したタックル
水深が30~50mと浅く、潮流もさほど強くないので、ヘビー級のビシで汗をかくのではなく、軽めの仕掛けで手軽に扱えるライトタックルがスマートだろう。オールラウンドタイプのサオに小型電動リールを組み合わせれば、いろんな魚種に対応できるうえ、"寄せて掛ける"積極釣法も快適にこなせる。また、手前船頭や安全対策にも有効。ちなみに、マダイのタナはビシダナで底からハリス分プラス1mが基準。アジはもっと上でも食う。
【ROD】
ダイワ・リーディング-XA55 205III(右)は、細身肉厚、5:5調子のワンピースムーチングロッド。205?Vはマダイ、アジ、イサキ、ワラサなど近場のコマセ五目や手持ちのヒラメにも最適。
●全長:2.05m
●継ぎ数:1本
●自重:165g
●オモリ負荷:25~130号
ダイワ・極鋭カワハギ1324(左)は、超弾性チタン合金製のスーパーメタルトップによる超高感度が話題のカワハギロッド。元ザオ脱着の1ピース設計。
●全長:1.80m
●継ぎ数:2本
●自重:113g
●オモリ負荷:20~35号
【REEL】
ダイワ・シーボーグ250FB(右)は、手前船頭の流し釣りに最適な超小型電動リール。ハンドル1回転の巻き取りが72cmと、手巻き時もストレスなく使える。
●イト巻き量:PE3号300m
●自重:515g
ダイワ・スマック100R(左)は、ロッドを握っている手でクラッチのON/OFFや、イトフケも巻き取れる、手前船頭のボート釣りにピッタリの小型両軸受けリール。
●イト巻き量:PE2号150m(エコノマイザー使用時100m)
●自重:250g
●巻き取り長さ:67cm/回転
コードレスバッテリー「BM2000」なら、コードが動きを妨げないので船内の移動も自由自在。写真のようにバッテリーのキャップをベルクロテープでロッドに固定すれば落下の心配がない。
●容量:2Ah