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Vol.47 広島県・瀬戸内海

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は広島県・瀬戸内海のイシモチ、シロギスほかをご紹介。

この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。

瀬戸内海でも有数の多島エリアに面した、広島県竹原市の「藤田マリーナ」を釣査!
ボート倶楽部2015年3月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

同じ瀬戸内海でもまったく違う海

マリンクラブ釣査隊隊長として各地のホームマリーナを訪問していると、「次回はどんな景色の中で釣りイトを垂らせるのだろうか?」とか、「何かご当地ではやりの釣法などはあるのだろうか?」など、普段通い慣れたゲレンデでは感じることのない楽しさを味わうことができる。
周囲を海に囲まれた日本なのだから、もっと各地の海を楽しまなくちゃ。せっかく全国に約140カ所もシースタイルのホームマリーナがあるのだから......。というわけで、今回もワクワク感を求めて出発だ!向かった先は前回(2014年12月号)と同じく瀬戸内海。
「えっ、また瀬戸内海なの?」
と、思われる方もいるかもしれない。確かにどちらも瀬戸内海だが、前回は兵庫県高砂市だったのに対し、今回は広島県竹原市。直線距離で約200キロも離れている、まったく別の場所である。
神奈川県に住んでいる私にしてみれば、兵庫も広島もどちらも同じ瀬戸内海として一緒くたに扱ってしまいがち。でも実際に地図を広げてみると、瀬戸内海はとても広く、ひとくくりにはできないことがわかってくるとともに、期待が大きくなっていった。
今回訪問するホームマリーナは、広島県竹原市にある藤田マリーナ。ここでクラブ艇を借り、芸予諸島東部を釣査するのだ。
これまでにも何度か瀬戸内海でのボートフィッシングを楽しんできたが、毎回感じるのは数多くの島々がある素晴らしい景色だ。普段、関東の海に浮かんでいる自分にとっては、遥か彼方の水平線は見る機会はあっても、多くの島々を見る機会などまったくない。
逆に普段、瀬戸内海に浮かんでいる人にとっては、外洋に対してある種の憧れを持っていることだろう。お互いに無い物ねだりで、隣の芝生が青く見えるのかもしれない。
今回、ロコアングラーとして取材に協力してくれたのは、藤田マリーナの吉本 慎さん。普段から瀬戸内海でマイボートフィッシングを楽しむ、根っからの釣り好きだ。
今回の釣りについて事前に問い合わせたところ、
「取材日は潮が大きいんですよね~(大潮)。厳しい釣りになると思いますよ~」
という第一声だった。大潮は潮が動くので釣りに適しているのかと思えば、現地ではそうでもないらしい。
「それでも何かしら釣れますよね?」
と尋ねると、
「この時期はイシモチをねらう人が多いですね。僕の場合はエサ釣りではなく、スロージギングでねらいます」
とのこと。
「えっ、イシモチをスロージギングで釣るんですか?本当ですか?」
と聞き直してしまうほど、私には想像できない情報だった。
そういえば、本連載では各地を訪問してさまざまな釣法を紹介してきたが、スロージギングについてはまだだった。よし、それでいこう!と即座に決定したものの、どうもターゲットのイシモチが引っ掛かり、半信半疑だった。
ところが話を伺っているうちに、吉本さんはスロージギング用のルアーを扱うブランド「DEEP LINER」のフィールドモニターをやっていることを知った。スロージギングのスペシャリストなら、イシモチもジグで釣ってしまうに違いない。

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の講師を務める。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。

【今回のロコ・アングラー】

吉本 慎さん(30歳)は、藤田マリーナに勤務する若手のホープ。ルアーブランド「DEEP LINER」のフィールドモニターでもあり、スロージギングを得意とするので今回の取材にはうってつけのロコアングラーだ。

海は荒れ模様でも楽しみが豊富なエリア

12月上旬の取材当日、広島地方はとても冷え込んだ。出航する9時になると予報通り東寄りの風が吹き始め、やや強い風の中での釣りとなりそうだ。
まずはその東風を避けるように、高根島(こうねしま)の西側にボートを進めて実釣スタート。
「瀬戸内海では時間帯によって潮の流速変化が大きく、状況に応じてジグの重さをセレクトする必要があります。まずは60グラム前後のジグがいいと思います」
吉本さんのアドバイス通りのジグをセットし、第1投。着底と同時にリールのハンドルを半回転して止め、ジグの重みでサオ先が曲がったらサオの反発力でジグをアクションさせ、続けてジグをフォールさせる。

始めからそう簡単には釣れないと思っていたが、開始から2時間たっても、イシモチどころか、ほかの魚も釣れないことに不安が大きくなっていった。
「いったん、ほかの釣りものに変更したほうがいいのでは?」
喉元までこの言葉が出てきていたが、ロコアングラーを信じないで何を信じるというのだ......。そう自分に言い聞かせ、出かかった言葉をのみ込んだ。
その直後、「きました!」という声が聞こえ、振り向くと吉本さんがロッドを曲げ、真剣な表情でハンドルを回していた。釣れ上がったのは本命のイシモチで、
「あまり大きくはないですけど、とにかく釣れてホッとしました」
と、安堵の表情を浮かべほほえんでいた。

その1尾で俄然やる気が出た私は、吉本さんのアクションをまねるのが釣果への近道だと判断し、横目でチラチラと見ながらアクションした。このアクションが功を奏したのか、ついに私のサオにもアタリが届く。しかしながら、ハリの掛かりどころが悪かったのか、やり取りの途中で外れてしまった。
数少ないアタリを釣果に結び付けられなかったと悔やんでいたところへ、再びアタリが届いた。今度こそバラすまいとやり取りを開始すると、サオ先の重みがフッと軽くなってしまった。またしても外れてしまったか?と思ったが、途中から再びヒキが伝わってきた。何なんだ、このヒキは??そんな期待と不安の中、釣れ上がったのはなんとタチウオ。長さは70センチほどで、太さは指3本分しかないので大物とはいえないが、思わぬゲストに船上は活気づいた。

しかしながら、そんな盛り上がりもつかの間で、再び沈黙の海となってしまった。強まってきた風と波を避けつつ、13時すぎまで粘ったが一向に好転しないので、冷え切った体を温めるべく、昼食のために岩城島(いわぎじま)に上陸することにした。
岩城島はかんきつ系果実の栽培が盛んで、「青いレモンの島」というキャッチフレーズでも知られている。今回は島の南西部に位置する菰隠(こもがくし)温泉の桟橋にボートを着けた。
う~ん、島への上陸も瀬戸内海ボーティングの醍醐味(だいごみ)なんだよなぁ〜、なんてしみじみ思いながらレストランへ向かった。
レストランでは、ご当地名物の「レモンポーク丼」を注文。
「この島の養豚は、飼料にレモンなどのかんきつ類を混ぜるので、レモンポークと命名されたみたいです」
と吉本さんが聞かせてくれた。肉は柔らかく、とてもジューシーだったのでブッタまげた......ブタだけに(笑)。
昼食後は14時を過ぎていたこともあり、余裕を持ってマリーナへ戻ることにした。
帰港航程もひと味違うのが瀬戸内海の特徴だ。「伯方(はかた)の塩」の名前の元となった伯方島を通り過ぎると、しまなみ海道の多々羅(たたら)大橋をくぐり、瓢箪(ひょうたん)島を見て、大三島(おおみしま)を回り込む。帰港時だけでも見どころがいっぱいで、クルージングの楽しさを味わいながら帰港した。

ボートフィッシングの魅力と難しさを再認識

2日目はサビキ仕掛けや青イソメをボートに積み込み、まずはメバルねらいで出航した。広島県ではコマセの使用が禁止されており、魚を寄せて釣ることができないので、アングラーのほうから魚に近づいて仕掛けを下ろす必要がある。
魚群探知機で魚を探し、ここぞと思うところで仕掛けを下ろし、釣れなければ次なる魚の反応を探して移動し、仕掛けを下ろす......。いわば、ラン&ガンで釣っていくスタイルだ。
低速で航行中、宙層に魚群反応が見つかったのでサビキ仕掛けを下ろしてみると、5センチほどのカタクチイワシが鈴なりに釣れ上がった。
しめしめ、このサイズのイワシならこのまま仕掛けを海底まで沈めれば、サビキ仕掛けだけの状態よりもメバルが食ってくる可能性が高いぞ。そう心の中でほくそ笑んではみたものの、メバルからのアタリはまったく届かない。
次から次へと場所を変えていくことで、ようやくそれらしいアタリをキャッチした。大して重くはないが、小気味いいヒキを楽しませてくれたのは、20センチほどのマダイだった。

この1尾を機に、本格的なマダイポイントへ行ってみようということになり、島と島の間の水路のような場所に吉本さんが案内してくれた。そこでは数多くの釣り船が潮流に合わせてボートを流しながらマダイをねらっていた。
早速、われわれも交じってマダイをねらったが、潮流のあまりの速さに悪戦苦闘。用意したオモリを複数付け足しても仕掛けが吹け上がってしまい、まったく歯が立たないまま時間だけが過ぎていった。
正午すぎ、今度はシロギスをねらうために生口島(いくちじま)の南側へ移動した。幸いにもすぐに本命が釣れ上がり、ホッと胸をなで下ろした。

しかしそんな喜びもつかの間で、ボートが流れてポイントを外れると、シロギスさえもまったく釣れなくなってしまう難しい状況だ。
おそらく、入り組んだ地形によって複雑に流れる潮の影響で、海面に浮かぶわれわれ以上に、海中の魚たちは変化に対して敏感に反応しているに違いない。
結局、2日目も釣果的にはパッとしないまま終わってしまった。吉本さんが第一声で放った「取材日は潮が大きいんですよね~。厳しい釣りになると思いますよ~」という言葉の重みをかみしめながらの帰港となった。
ボートフィッシングは自然が相手の遊びだ。思い通りにならないからこそ、挑み続ける永遠の魅力があるということを再認識する釣行となった。

釣果カレンダー

瀬戸内海は1年を通してボートフィッシングが楽しめ、海底地形の変化に富んだ芸予諸島周辺ではさまざまな魚をねらうことができる。釣期に合わせたターゲットをねらうのはもちろんだが、地域特有の潮流次第で魚の活性が大きく変わるので、それらの情報を考慮に入れた釣行計画を立てる必要がある。また、コマセの使用が禁止などのローカルルールもあるので、事前にマリーナで確認しておこう。

藤田マリーナ周辺のフィールドマップ

瀬戸内海の芸予諸島東部が主な航行区域で、区域内には数多くの島々が存在する。自然の美しさの中に、しまなみ海道に代表される人の手による建造物が絶妙なアクセントとして存在しており、ボートからの見どころが多い。海底地形も複雑で、それによって複雑な潮流が発生するため、好漁場を形成している。水深変化も大きく、島と島の間の水路には浅瀬も多いので、マリーナで情報を入手し、航行には十分注意すること。

藤田マリーナ

竹原港の南端に位置する藤田マリーナは、保管艇以外に、周辺漁業者の漁船の修理依頼にも対応している。マリーナは瀬戸内海の中でも特に多くの島が存在する芸予諸島が近く、釣りを目的としたボーティングが盛んに行われている。クラブ艇の利用者も釣り目的がほとんどで、県外からの利用者も多い。

今回使用したタックル

スロージギングには長さ6.5フィートの専用ロッドに両軸受けリールをセット。ラインはPE1.5号に、リーダーはフロロカーボン4号を6メートル。ジグは小型のもので、60〜150グラムまでを水深や潮流に応じて使い分けた。シロギスねらいのキャスティングや、メバル&マダイのサビキ釣りには一つテンヤ用のスピニングタックルをセレクトした。一つテンヤ用ロッドは穂先の感度が高く、バット部分のパワーもあるので、ボートフィッシングにおいては万能ザオとして使えるのでオススメ。

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