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ヤマハ発動機株式会社 Revs Your Heart

ヤマハマリンクラブ・シースタイル

Vol.31 愛媛県・来島海峡

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は愛媛県・来島海峡のハマチ・タチウオほかをご紹介。

この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。

続いた連載も今回で最終回。隊長がずっと行きたいと願っていた、激流走る来島海峡で、最後の任務を果たしてまいりました。ボート倶楽部2011年3月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]

記念すべき最終回です

突然ですが、マリンクラブ釣査隊は今回をもって終了することになりました。
あれ?前回の原稿で「もっと釣らせてください」ってお願いしなかったっけ。と、お怒りの隊長のファン(なんているのか?)にご説明申し上げます。ごめんなさい。連載終了はひとえに隊長のせいです。
実は水産庁から「日の丸釣査隊」の隊長に任命されて、長期の遠洋釣行に出るため、これまでのペースで釣査を続けるのが難しくなったのだ。これからは尖閣諸島や沖ノ鳥島でじゃんじゃん釣りまくるゾ!
てのはもちろんウソ。でも、いろいろあって日程が厳しくなったのは事実なんだ。なんとか続けられそうな気もするんだけど、中途半端な釣査はしたくないし、ホントに残念ながら、ひとまずお休みさせていただくことにいたしました。リニューアルしたばっかだってのに、人生、なにが起こるかわからないねえ。自分でもびっくりだよ。
というわけで、最終回は、隊長がずっと行きたかった場所のひとつ、来島海峡に決めた。
来島海峡の名前は、小型船舶免許を持っている人なら知っているはず。試験問題によく出るからね。ぼくが興味を持ったのも免許を取ったときだった。なにしろ、潮流はときに9ノット以上。そして、航路の進行方向が潮の向きによって変わるというユニークなルールがある。もちろん釣りでも有名で、モンスター級のマダイや10キロオーバーのブリが集まる瀬戸内海の特A級ポイントだ。

ターゲットは潮流次第

ホームマリーナの「来島マリーナ」は、驚くほど来島海峡に近かった。というか来島海峡そのものだ。目の前の海はすでにガンガンの激流。よくもまあこんなところにマリーナを造れたもんだ。
釣り支度をしつつ、海を眺めて感心していたら、ロコアングラーでマリーナスタッフの冨士原光徳さんが現れた。隊長の内心を察したのだろう、
「いい場所でしょ。岸壁からマダイが釣れることもありますよ。このへん一帯がすべてポイントです」
「こんな激流で?」
「いや、激流のなかでは釣りません。来島海峡では、なにをどう釣るかは潮次第なんです」
冨士原さんはマダイ釣りが大好きで、自分のボートを持ち、来島海峡でのキャリアは25年以上。地元の海にめっぽう詳しく、こんなに頼もしいロコアングラーはいない。こりゃもうマダイを釣ったようなもんだ、と思いきや、今シーズンの終盤はマダイが不調だという。でも、メジロやハマチは釣れてるし、タチウオもなんとかなるだろうとのこと。
潮が利いている間はハマチ、ほかの魚は潮止まり前後がいいらしい。なので、潮止まりまでハマチをねらい、潮が緩んできたらタチウオと一応マダイをやってみることにした。

上げは南流、下げは北流

いつものようにシースタイルの手続きを済ませてから、出航したのはゆっくりめの午前9時半ごろだった。
この日はほぼ11時に満潮。上げ潮は南向きの南流で、下げ潮は北向きの北流だ(風向きとは表現が逆)。向かったポイントは、小島の北西に延びるバンク。マリーナから北進するため、出航直後は来島海峡の激流をさかのぼる形になる。当日は大潮のため、潮流は大雨のあとの川のようなド迫力。
それでも、ポイントまでは近い。時間にして10分ほどで到着した。
ポイントはすぐにわかる。なぜなら、ボートがたくさん浮いているから。冨士原さんによれば、来島一帯ではなにかとボートが集まる傾向があるらしく、マダイでもブリでも船団が目印になるという。
漁師さんがいたら、邪魔にならないように配慮するのは当然だが、プレジャーボートの数がまあ多いこと。しかも、ボート同士の距離がだいぶ近いゾ。冨士原さんによれば、マダイの乗っ込みのときなんか団子状態だという。これは釣りをしてみてわかったんだけど、あっちで釣れたと見れば一斉にフネが移動し、こっちに誰かが移動したらまた追いかけて、どうやらポイントに密集するのがご当地の文化らしい。
とはいうものの、ターゲットは回遊魚の青ものだ。おまけにスパンカーを装備したボートが多く、隊長はちょっと離れて釣りをスタートした。
ご当地の釣り方はおもに二通りある。一つは生きアジを使ったノマセ釣り。もう一つはジギングだ。時間がないこともあり、隊長はエサいらずのジギングをチョイスした。
ジグの重さは100~250グラムが一般的で、重いジグはロングジグがいいという。なぜこんなに重さに差があるのかというと、潮の速さがポイントによって異なるため。しかも、流れが速いほど魚のサイズがいい。よって、ピンポイントの激流の瀬でブリをねらうなら、250グラム前後のロングジグ。一方、この日のように、潮の流れが比較的マイルドな広い瀬でハマチがメインであれば100グラム前後という二極化の傾向がある。ただし、なかにはブリ級の大物もいるので、ラインはあまり細くしないほうがいい。

最後の相手はドラゴン!?

小島の北西にあるバンクは水深15~30メートルほどでかなり広い。だらだらと流しながらジギングをするにはもってこいの場所だった。潮は濁り気味である。そこで、持ってきたなかで一番軽い120グラムの派手なジグをキャストし、ワンピッチジャークを繰り返すと、ほどなくハマチがヒットした。
周りを見てもハマチがボチボチ釣れている。ノマセでもジグでも関係なくヒットする。サイズはほとんどがハマチ級だけど、冨士原さんの知り合いが朝イチに釣った2尾を見せてもらったら、堂々たるメジロ級だった。いいなあ。
やがて潮止まりが近づいてきた。ハマチねらいのボートは早朝に出航し、ひと潮釣ったら帰港するそうだが、遅出のぼくらは岡村島沖のタチウオポイントへ移動する。
タチウオの仕掛けは、瀬戸内海でポピュラーなテンヤである。40号のテンヤに、冨士原さんおすすめの冷凍サンマを半分に切って尾側をセット。
ポイントの水深は50~70メートルだ。このへんは周りにボートがいなくていいな、と思っていたら、冨士原さんがぽつりとつぶやいた。
「船がいませんね。こりゃ厳しいかな」
結局、釣れるとすぐにボートが集まってくるため、船団=釣果のサインらしい。
だが、魚探にはタチウオの反応がしっかり出ていた。テンヤをボトムまで落としてから、水深の半分ほどまでスローに巻くのがテンヤ釣りのセオリーだ。ハマチではサオを持たなかった冨士原さんも、タチウオは好きらしく、一緒に釣り始めた。すると、冨士原さんにヒット。サオを持った途端に釣るのはさすが。
「やるときゃやりますよ。内心どうなるかと思ったんだけど(笑)」
と言いながら、カメラのレンズが向くと会心の笑顔を披露。冨士原さん、役者ですネ。
その後、タチウオの反応が消えたので周りを見ると、やや離れた場所にいつしか船団ができていた。
急げ!
魚探で地形をチェックしたら、水深80メートルから50メートルくらいまで急に浅くなる高根がある。タチウオの船団は、東京湾でもおなじみだから違和感はない。ぼくらも一番潮上側に入って流し始めた。
早く釣らないと、今度は引き潮が利き始めちゃうぞ。スケジュールが決まっているからあまりのんびりできないな。そう思って気合を入れたら、ギョギョ!オマツリしちゃったわ。ちぇ。
「冨士原さん、オマツリしてますよね」
「してないよ。タチウオじゃないの?」
返事をする間もなく、仕掛けがさらに軽くなった。おっ、こりゃ食い上げだ。あわててリールを巻くと、今度はずっしりとした手応え。で、ギュンギュン引き始めた。タチウオってこんなに引いたっけ、と首をかしげつつも慎重にファイトして取り込んだのは、指4本オーバーのグッドサイズ。冨士原さん、ありがとうございました!

二人ともタチウオの顔を見たので、潮止まりにできるメニューを全部こなすべく、すぐにマダイのポイントである小島周りに移動した。が、やはり気配すらなく、あっという間に激流になってタイムアップ。
本格的な釣査はこれで終わりにして、その後は馬島の潮陰で五目釣りをやってから、「いまばり・みやうら海の駅」のある大三島に行ってみた。その大山祇神社には、なんと全国の国宝・重文甲冑の8割が収められている。海事博物館もあるし、ここは釣りの時間を削ってでも見る価値はあるよ。
念願の来島海峡は、風光明媚で名所もあって、なにより釣りがめちゃくちゃおもしろかった。複雑な地形に潮流の影響が重なって、実に攻略しがいがある。近くに住んでたら、ゼッタイ通うわ。それぐらい奥の深いエリアでした。
さて、2003年の12月号から始まった釣査隊は、これでいったん解散します。ご愛読していただいた読者のみなさま、長い間ありがとうございました。でも、シースタイルには乗り続けるので、次は海の上でお会いいたしましょう!

隊長:齋藤海仁(かいじん)

【隊長:齋藤海仁(かいじん)】

1968年、神奈川県生まれ。三浦半島鴨居の海辺で育ち、学生時代から鴨居のマダイやスミイカをはじめ、沖釣りに入れ込むと同時にボートフィッシングにも傾倒。16歳になると同時に船舶免許を取得。釣具店の店員、ボート釣り専門誌編集長を経て独立。現在、沖釣り情報誌『つり丸』にて「ボート釣りに行こう!」を連載中(冬季は休業)。著書に『ボートフィッシングバイブル』(舵社刊)がある。

今回のロコ・アングラー

【今回のロコ・アングラー】

冨士原光徳(ふじわら・みつのり)さん
シーズンオフの2月と3月以外はずっと手釣りでマダイをねらっている、超マダイフリーク。メーターオーバーのマダイが目標とのこと。

釣果カレンダー

釣魚カレンダー

ご当地のメインターゲットはマダイ、ブリ、ハマチ、キジハタなど。来島海峡では潮流の速度によってターゲットを釣り分ける。速潮のなかで釣るのは、ブリ、ハマチで、ほかのターゲットは潮止まりの前後か、あるいは島陰などの潮裏が基本だ。ブリ、マダイに関しては、釣れているとほぼ必ず船団ができるので、ポイント探しにはあまり苦労しない。その代わり、手前船頭は厳しいかもしれない。

来島海峡のフィールドマップ

来島海峡のフィールドマップ

航路内は大型船がひんぱんに通るのでくれぐれも気をつけること。来島海峡では、馬島の北側の「中水道」を進む船は常に潮と同じ方向に、馬島の西側の「西水道」は常に潮と逆に進む「順中逆西」というルールがあり、「中水道」を進む船は特にスピードが速い。また、四方八方を島に囲まれているため、よほどの風が吹かない限り海は荒れないが、5~6月は濃霧が発生するケースがあるので要注意。

来島マリーナ

釣りには抜群のロケーションに加え、島に囲まれているおかげでシケにめっぽう強い。出航できない日は台風並みの強風が吹く日ぐらいという、スーパー好条件を誇る。そのため、ボートを保管できるのはボートを買った人だけという会員制にしているが、シースタイルなら利用可能なところはおトク度高し。

■交通アクセス
しまなみ海道、今治北インターより車で5分

■問い合わせ先
愛媛県今治市砂場町2-7-30
TEL:0898-23-5922
営業時間:(平日)午前8時30分~午後5時30分、(日曜・祝日)午前7時~午後5時30分
※シースタイル利用時間は午前9~12時、午後1~4時、午前9時~午後4時(料金は6時間分)の枠のみ
定休日:木曜日、年末年始(12月30日~1月3日)
http://www.kurushima-marina.com/

今回使用したタックル

ブリとハマチはジギングでねらった。激流の瀬でブリをねらうなら、250グラム前後のロングジグがおすすめ。もっと流れが緩やかなポイントで、ハマチがメインなら100グラム級のジグでもいいが、予期せぬ大物もいるので、ラインは最低でもPEの3号はほしい。潮止まりの前後にねらうタチウオのタックルは、ごく一般的なものでOK。専用ロッドもあるが、隊長はタイラバーや五目釣りとも兼用できるゲームロッドを使った。

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