Vol.26 高知県・土佐湾
全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は高知県・土佐湾のニロギ・ネイリ・オオモンハタほかをご紹介。
この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。
今回のフィールドは、黒潮薫る太平洋に面した土佐湾だ。ビギナーからベテランまで釣りごたえたっぷりの、スケールの大きな土佐湾の魅力を特盛りでお届けします。ボート倶楽部2009年12月号 [ 文:齋藤海仁 / イラスト:名取幸美 ]
2010年は土佐ブーム!
「歴女」なんて言葉もあるように、最近は歴史モノが若い女の子に人気だそうで。大河ドラマの「天地人」でも、妻夫木 聡をはじめ、イケメンを並べたのはあきらかに女性人気をあてこんでのことだろう。そういえば、この号が出るころにはいよいよラストスパートですね、「天地人」(隊長は一度も見たことないけれど)。
でも、来年の大河ドラマはもっとずっと強力だ。なんてったって、福山雅治の坂本龍馬だもの。ただでさえ人気が高い坂本龍馬に、"イケメンの帝王"福山雅治の組み合わせ。欲張りっていうか、反則スレスレっていうか......。まるでタイラバーのハリにアオイソメをチョン掛けするようなもの!?(違うか) いずれにしろ、人気が出るのは間違いなさそうだ。来るよ、土佐ブーム。2010年は。
というわけで、流行を先取りすべく、我々釣査隊も土佐湾にねらいを定めたのであった。
なんて話は真っ赤なウソで、高知に来たホントの理由はほかにある。
まいど「北は北海道から南は沖縄まで~」と始まる釣査隊。だけど、四国だけはなぜか来たことがなかったんだよね。でもって、今年の4月に高知市の太平洋マリンが新たにマリーナを始めて、そのブログに注目していたら、釣果はネイリ(ショゴ)、マダイ、カツオ、万力(シイラ)、アオリイカ等々魅力的なことこの上なし。ほかではそうでもないニロギ(ヒイラギ)が大人気なんてところも興味深い。そんなターゲットと釣り文化に引かれ、高知にやって来たってわけ。
目の前は黒潮踊る太平洋
高知市は川と海の街だ。鏡川が市内の真ん中を流れ、その河口に浦戸湾があり、市の中心部から河口部までは数マイル。その途中にある太平洋マリンはアクセス良好で、高知ICから車で10分ちょっとで到着した。
浦戸湾の外に出れば、太平洋がどおーんと広がっている。名前こそ土佐"湾"だが、実質的には外洋そのもの。黒潮の影響も強いしなあ。こんなに簡単に外海に出られる県庁所在地はほかにないんじゃないかな。海の向こうはオーストラリアかアメリカか。さすが龍馬を生んだ土佐である。
ということで、隊長を乗せたクラブ艇のAS-21EXはもう太平洋に浮かんでいた。なにしろ今回はエリアが広く、ターゲットも盛りだくさん。2日間の予定とはいえ、もたもたしていると時間も誌面も足りなくなっちゃいそうなのだ。
ガイド役を買って出てくれたのは、ハーバーマスターの西沢史生さんである。ただし、マリーナを始めてまだ間がなく、周辺の魚の釣り方にはあまり詳しくないとのこと。で、おもなポイントとクルージングスポットだけをざっと案内していただくことになっていた。
そこで隊長がチョイスした釣法がルアーである。広いエリアを効率よくカバーするには、手返しの早いルアーが便利。青ものとマダイ、アオリだからターゲットもばっちり。ニロギもサビキ釣りなので似たようなもの。地元の人は基本的にエサ釣りが多いらしいけど、ブログを見ていたときから実はルアーがおもしろそうだと思っていたのだよ。ムフフフフ。
困ったときの流木頼み
土佐湾の海底地形は全体的に変化が少なく、点在する単独根や魚礁がおもなポイントになる。気まぐれな黒潮の影響も強く、どこが釣れるかはそのときになってみなければわからないという。したがって、2日間の釣査のうち、初日はエリア全体を回りつつ、ボートで立ち寄れる食堂でお昼を食べるプランを立てた。ま、様子見を兼ねたクルージングってとこだ。そして、ポイントを絞り込んだ翌日はがっつり釣りをする作戦である。
最初に向かった場所はエリア東端の手結沖だった。
ネイリをねらい、プロッターに登録されている水深20~40メートルの魚礁でジギングをするもノーヒット。アンカリングでエサ釣りをしているボートも軒並み苦戦中の模様。唯一、ネイリの姿を見たのは、遊漁船がヒットさせたときだけだった。それも一度きり。
ずっと魚探を見ていても、反応はイマイチである。なによりベイトフィッシュが薄いのがイタい。これは雲行きが怪しいゾ、と思い始めたそのとき、沖に流木を発見した。
ネイリが釣れずに困っていたところ、流木を発見。ジグミノーをキャストしたら、シイラがヒットした。おっと、高知では「万力」だったっけ。エギングタックルだから大変だったよ。
ひょっとしてシイラがいるかも、と駆けつけてジグミノーをキャスト。すると一発でヒットした。サイズはペンペンだが、万力の名のとおり、ヒキは相変わらず強烈。しかも、エギングタックルだったのでたっぷり楽しめる。やっぱり魚の顔を見ると安心するわ。土佐湾では昔から漁の対象魚だしね、万力は。
表層で小さなネイリの姿も確認したものの、流木で釣れたのはシイラだけだった。手結沖の魚礁もおもわしくないので、次は桂浜沖、宇佐沖と魚礁をチェックしながら西に移動することにした。
ニロギのヌメリは取らんきに
土佐湾の等深線は海岸線とほぼ並行で、沖に行くほど深くなる。よくいえば素直。悪く言えば単調?だから、単独根や魚礁がメインのポイントになるわけだが、結局、桂浜から宇佐沖まで1尾もヒットしなかった。
う~む。いくら2日間とはいえ、これはマズイ。魚礁めぐりは偶然に左右されすぎるし、もうちょっと地形が変化していて確実に釣れそうなところはないのかな?と西沢さんに聞いたら、浦ノ内湾の沖側に延びる横浪半島の沖が岩場だというので行ってみた。というか、残されたポイントはここくらいしかないみたい。
横浪半島沖はたしかに岩場で、見た感じ、いかにもアオリイカが釣れそうだ。"困ったときのアオリ頼み"で、水深10~15メートルでボートを流しながらエギングをするとすぐに乗ってきた。続いて西沢さんにも1パイ。やれやれ。
横浪半島の周りでは、このように磯と岩場が続いている。いかにもアオリイカが釣れそうでしょ。実際、アオリイカの好ポイントとのこと。
アオリイカのタナは水深10~15メートルとやや深めだった。ボートをドリフトさせながら底付近をねらったら乗ってきた。春は2キロ、3キロはあたり前のデカアオリが釣れるらしい。
時間はもうお昼をとっくに過ぎていたから、アオリの顔を見たところで浦ノ内湾に入り、海賊料理の「浮橋」でランチタイムに。おいしかったのはいいけれど、時間がかかってしまったので、残り時間で浦戸湾に戻ってニロギを釣った。
クルージング取材も兼ねた初日は、浦ノ内湾湾奥にある"海賊料理"のお店「浮橋」でランチを食べた。お店に桟橋があり、係留できるのがありがたい。
高知県須崎市浦ノ内東分3751
営業時間:午前10時~午後7時
定休日:1月1日、台風などで海上が荒れている場合
TEL:0889-49-0240
玉島の南側でサビキのハリにジャリメを付けてイトを垂らすと入れ食いになる。このニロギ、高知ではカツオもしのぐ人気の魚で、刺身はもちろん、丸干し、煮付け、お吸い物などで食べるとおいしいという。注意点は絶対に体表のヌメリを取らないこと。このヌメリがうまさのもとらしい。マジで!?と思わなくもないけれど、隊長は旅先で試せなかったのが残念。今度地元で試してみよう。
帰港時間になるまでニロギはよく釣れた。翌日、ネイリとマダイもこのぐらい釣れるといいんだけどなあ。
起死回生のモンスターイギス
翌2日目。まずはネイリをゲットすべく、もっとも釣れそうだった手結沖に直行した。
浦戸湾を出てから手結沖までは20分ほど。その間、魚探を見ていて驚いた。前日とは打って変わって反応がいい。状況は明らかに好転している。
目星をつけておいた水深35~40メートルの魚礁に到着すると、ベイトフィッシュがごっそり。これは期待できそうだゾ。
ジグを海底まで落とし、ワンピッチジャークを繰り返して4、5投目だった。ボトムから数回巻いたところでヒット。青もの特有のファーストランと元気なアジ科のヒキからしてネイリと確信。はたして、上がってきたのは30センチクラスのネイリだった。ほっ。
前日はとても苦労したにもかかわらず、この日は魚探に映るベイトの反応も多くて絶好調。
このあとすぐにもう1尾釣ったところで、ポイントを変えずにタイラバーにシフトした。もちろんマダイねらいである。
いやあ、いいときは簡単なんだよねぇ。釣りなんてさ。
タイラバーに替えた途端に、今度はなにやら良型の魚が食ってきた。マダイにしてはスピード感がないんだけど、根魚にしてはしぶとく引く。そして重い。ゼッタイに顔を拝みたいと思ったから、慎重に巻き上げて、海面に浮いた姿を見て二度びっくり。
まずはでっぷりと太った50センチオーバーのオオモンハタだったこと。一生に一度釣れるかどうかの記録級だよ、こりゃ。そして、二度目はその口から15センチくらいの半ば消化されたカサゴが顔を出していたことだ。
だが、サプライズは二度じゃすまなかった。
このあとに同じクラスのオオモンハタをなんともう1尾追加。さらに「今までタイラバーで魚が釣れるなんて信じられなかった」西沢さんが、隊長の釣果を見てタイラバーに挑戦し、2キロオーバーのマダイをキャッチしたのである。
聞けば、土佐湾ではまだタイラバーは一般的じゃないそうだ。
どんだけウブなんだよ。土佐湾。
釣れてびっくりの良型オオモンハタ。今日び、このサイズには滅多にお目にかかれませんぜ。こんな魚がいるのは、土佐湾がウブななによりの証拠だ。
その後もいろんな魚がヒットしたけど、雨が激しくなってきたところで釣査は終了した。釣果も十分だったしね。よしよし。
海は広いというけれど、そのスケールを手軽に満喫できると思えば、ニロギをはじめ、内海の釣りもしっかり楽しめる土佐湾は、ビギナーからベテランまで、釣り応えたっぷりの海でした。特にハタはすぐスレるから、タイラバーやるなら早めがおすすめですよ。
【隊長:齋藤海仁(かいじん)】
坂本龍馬の銅像が立つ桂浜公園でポーズを決める福山雅治。じゃなかった、隊長(書いてて悲しくなるな......)。腰に差したるはもちろん釣り人の魂の釣りザオです。
【今回のロコ・アングラー】
西沢史生(にしざわ・ふみお)さん
太平洋マリンの頼れるハーバーマスター。マリーナはオープンしたてのため、近場の釣りはこれから本格的に開拓するとのこと。実はバハマでボーンフィッシュを釣ったり、勝浦ビルフィッシュトーナメントで優勝したりするツワモノなのだ。
115馬力の4ストローク船外機を搭載したAS-21EX。高密度ウレタンとFRPによる一体成型三重構造「FOAMAP」のボディーは剛性も安心感も高く、スケールの大きな土佐湾のルアーゲームにぴったり。
標準装備のGPS魚探。これはプロッター画面。海岸線とほぼ並行に延びる等深線がわかるかな?魚礁の位置もしっかりインプットされてますぜ。
桂浜と浦戸湾の河口部を望む。防波堤の沖にはなにもさえぎるものはなく、太平洋が広がっている。龍馬はこの海を見て外国や新時代に思いを馳せたのかもしれないが、隊長が思いを馳せるのはもちろん海と魚のことばかり。
太平洋マリンでは基本的に安全レクチャーは行わず、このビデオ講習のみ。ただし、危険区域の説明などはしてくれる。浦ノ内湾に行く人は、特に危険な場所が多いので、かならず湾内の航行ルートをしっかり聞いておこう。
ちょうど浦戸湾を出るときの様子。目の前に太平洋が広がる開放感は格別。オープンボートでその気持ちよさは倍増する。
沖のポイントは点在する魚礁か根になる。この日は黒潮の反転流の影響のせいか、東から西の通称「下り潮」がけっこう速かった。
西沢さんもアオリをキャッチ。「今の時期は小さいけれど」と苦笑気味。でも、釣れればやっぱりうれしいよね。
初日、横浪半島のアオリイカポイントの近くで釣ったオオモンハタ。ルアーはタイラバー。まさか翌日にあんな大きなヤツが釣れるとは、このときは思ってもみなかった。だから、とてもうれしかったんだもん。
目の前で貝やエビを焼くスタイルで、新鮮な食材は豪華でおいしく、量も多くて大満足。
ランチが思いのほか長引き、残り時間も少なくなってきたので、初日のラストはニロギで締めた。ほかの地域ではそれほど人気はないんだけど、高知では超人気者。料理のコツは決してヌメリを取り除かないこと、と言われてもねえ......。
ネイリとファイト中の隊長。まだ姿を拝んでいないが、活発なヒキはいかにもネイリっぽかった。
2日目は最初に入ったポイントですぐにネイリをキャッチ。ねらったネイリが釣れてよかったよ、ホント。
タイラバーでもすぐに良型がヒット。ヒキでは魚種がわからず、慎重にファイトしてます。
オオモンハタが15センチほどのカサゴを吐いてさらにびっくり。
釣果カレンダー
土佐湾に生息する魚の種類はおよそ1,500種と日本最多を誇る。地形は全体に単調で、沖に行くほど素直に深くなる。そのため、磯際のアオリイカ、沖の浮遊物周りのシイラ、砂地のシロギス、湾内のニロギを除く魚のポイントはすべて魚礁か沖根で、あとは魚種によって水深が変わる程度。その意味では、ポイントを絞りやすい。ルアーならラン&ガンスタイルも有効だ。なお、魚礁は水深20~70メートルの間に多い。
土佐湾のフィールドマップ
土佐湾は南に開けているものの、北西風が強くなる冬の間は荒れやすい。また、ウネリの影響を受けやすく、台風にも弱い。浦戸湾の出口は急カーブになっており、往来する船の進行方向がわかりにくいので、他船の動きをよく見よう。浦ノ内湾には危険な浅瀬が多く、かならずマリーナで注意事項をしっかり聞いてから行くこと。桂浜の沖にも浅瀬や干出岩がある。
タイラバーでホントに魚が釣れるの? と言っていた西沢さんが、本命のマダイを釣ってくれた。これから土佐湾のタイラバーを開拓するらしい。いきなりこの釣果じゃ、そりゃそうだろうな。
桂浜は月見の名所でもあり、土佐出身の作家、大町桂月の名前の元にもなった場所。桂月の「見よや見よみな月のみのかつら浜 海のおもよりいづる月かげ」の句碑も立つ。
カツオはまだ近場に寄ってないとのことで、今回は釣れなかった。というわけで、市内にある「ひろめ市場」の藁(わら)焼きカツオたたきの店「明神丸」でカツオをごちそうさま。目の前で藁焼きしてくれます。
土佐湾の魚を中心に、イルカ、アシカ、ペンギンなども展示する桂浜水族館。隊長的に一番の見どころはやっぱりアカメ! 左上に見える旅館が今回泊まった「国民宿舎桂浜荘」。桂浜を眼下に太平洋を一望できる眺めは極上だ。
初日の釣果。クルージング取材を兼ねていたとはいえ、かなり寂しい感じだった。
起死回生の2日目のおもな釣果。オオモンハタは土佐ではイギスと呼んで、ネイリやマダイの上をいく高級魚とのこと。
高知最大級の釣具店「フィッシングハヤシ」。品揃えの豊富さは圧倒的。もちろんエサも充実。イベントは多数開催。とにかく一見の価値アリの釣具店だ。
高知県高知市梅の辻5-1
営業時間:午前9時~午後9時(平日)
午前9時~午後7時(日祝日)
TEL:088-831-8888
http://www.f-hayashi.com
天然温泉なのに、大人650円とリーズナブルな料金がうれしい日帰り温泉の「高知ぽかぽか温泉」。これからの季節、冷えた体には温泉がたまらんぜよ。
高知県高知市北川添8番地20号
営業時間:午前8時から翌午前2時(ただし第3火曜日は午後5時から)
年中無休 TEL:088-861-1126
太平洋マリン
1964年創業と、高知県でいちばんの歴史を誇る老舗が今年からマリーナの運営をスタート。高知ICから車で10分強とアクセスがよく、釣り場にも近くてとっても便利。保管艇のオーナーはほとんどが釣り人で、ポイントの状況はもちろん、釣りの情報も充実している。
■交通アクセス
車利用:高知自動車道高知ICから車で10分強
■問い合わせ先
〒781-8125 高知市五台山字タナスカ4984
定休日:無休(年末・年始・お盆は除く)
営業時間:午前9時~午後6時
TEL:0120-51-7811
http://www.taiheiyomarine.com/
シースタイルのクラブ艇は1艇で、今のところウェイクのユーザーが多いというものの、土佐湾のポテンシャルからしたら、もっと釣り人が増えてもおかしくない。これからが楽しみなマリーナだ。高知観光のついでにもぜひどうぞ。よく釣れるよ。
レンタル担当の西沢美樹(にしざわ・みき)さんはハーバーマスターの奥様。にこやかな笑顔を終始絶やさず、大変温かい対応で、実に気持ちよく接してくれました。ヤマハが全国から厳選して認定したマリンライフアドバイザーのひとり。
今回使用したタックル
メインタックルはジギングとタイラバー用の2セット。ジギングのターゲットはネイリかマダイで、水深は70メートル以内。ジグの重さは100グラム以内だが、40~0グラムが中心なので、基本的にはライトクラスで十分。マダイの可能性もあったため、今回はベイトタックルを用意した。一方、タイラバーは60~80グラムが中心で、オールマイティーなライトゲームロッドが活躍した。
ジギング用が左のダイワ・リーディングXA64タイプIII+ミリオネアCVZ100 FL。ラインはPEの2号。タイラバー用が右のリーディングXA64タイプII+スポルザ150Lで、ラインはPEの1号を使用
ジグはダイワ・スピードジグRの60グラムにアシストフックを2本セット。タイラバーはベイラバーの45グラム。