【その1】活けジメ
活けジメの工程は魚を美味しくいただくために必要なことなのです。
活けジメの工程は魚を美味しくいただくために必要なことなのです。 会報誌See Sea Style vol.26 [2018.03] 掲載 <文・写真:お魚かたりべ 山嵜清張>
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お魚かたりべ 山嵜 清張(やまさき きよはり)さん
明石に生まれ、明石で育ち、明石に育てられたからこそ昔ながらの明石の食「魚食」にこだわっている山嵜さん。2014年に水産庁から「お魚かたりべ」に任命された、正真正銘の魚のスペシャリスト。長年、魚の扱い方から美味しくいただく方法まで追及。魚食普及活動に精力を注ぎ、魚のさばき方教室、漁業や環境、食の講話などを続けている。
海、釣り、魚、楽しんでいますか。
心晴れ晴れと海へ出て、苦労した成果として釣り上げた大切な魚は美味しく味わいたいですよね。 ところがそれほど愛しい魚をどうしたら鮮度を保ったまま持ち帰れるのか、意外や釣り人だけでなく、魚屋、漁師までもがあやふやな思い込みの知識で魚の魅力を落としていることが現実です。
魚を美味しくいただくために、確保した魚の扱い方について紹介します。
もちろん魚は我々の食糧として、食べられるために生き、成長して来たわけではありませんので、海の中から船上に上げられるという環境変化にとても違和感と興奮を抱いています。ピチピチと暴れ跳ねることで、魚体内は体温が上がるがごとく血が駆け巡っています。そんな興奮状態のままクーラーボックスに投げ入れたり、氷水に漬けたりすると魚は緊張、突っ張った状態となります。人が長時間集中出来ないのと同じく、緊張が解ければ緩和し、後の魚の身は腐敗へと向かうだけとなります。
それを防ぐため、魚はいったん生簀(流水のため水、大きなクーラーボックスでもかまいません。その場合は太陽光が当たらないよう日よけの蓋を)に泳がせ、港へ着岸するまで活かしておきましょう。例え数十分であっても興奮が冷めることにより魚体内の血の気が引くのです。
クルージングを終え着岸してからこそが魚を美味しく食べられるかの技が問われます。
生きている魚=「活魚」を活けジメというある意味儀式を施し、食べもの「鮮魚」に変えるのです。生簀からすくい上げた魚は再び暴れること必至ですが、この時落ち着いて魚の眼を手のひらで覆いましょう。たったそれだけで魚の暴れが一時的に収まるのです。(歯が凶暴な魚では要注意)
魚の動きが止まったら体側線上目の後ろ側を鋭利なもので刺し動きを止めます。脳死状態にするのです。すぐさまエラぶたを開き、包丁を差し入れ、背骨(脊髄)を切断します。これは背骨内にある神経と血管を断ち切ることで、後の食材としての腐敗を遅らせ、味わいを良くさせる最も重要な工程となります。
更にすぐさま海水に漬け、数分置く「血抜き」をします。理想は流水のため水で、溜めた水に血の色が見えなくなれば「活けジメ」の完成です。
これらの工程を粗雑にすることで、魚の鮮度と味はいくらでも落ちて行くのです。せっかく手にした魚たちです。ぜひとも美味しく食べていただきたい。
この記事は、会員制マリンクラブ(レンタルボート)Sea-Style会員様向けの会報誌に連載された内容を紹介するものです。