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ヤマハ発動機株式会社 Revs Your Heart

ヤマハマリンクラブ・シースタイル

Vol.44 静岡県・伊豆半島

全国のマリーナでボートをレンタルして釣行脚。今回は静岡県・伊豆半島の中深場五目ほかをご紹介。

この記事はヤマハマリンクラブ・シースタイルのレンタルボートでの釣行です。

今回は、豊かな自然が色濃く残る、静岡県・伊豆半島の「伊豆松崎マリーナ」を釣査!釣り・食・自然と伊豆の魅力を満喫!ボート倶楽部2014年6月号 [ 文:小野信昭 / イラスト:名取幸美 ]

手付かずの自然が残る伊豆半島・西伊豆

突然ですが、「半島」と「岬」の違いをご存じでしょうか?私自身、そんなことは、考えたこともなければ意識したこともなかったが、ネットで調べてみると、どちらも「陸地の一部が海などの水域に突き出た形になっている部分のことで、大きなものを半島、非常に小さいものを岬と呼ぶ」とのこと。当たり前......とも思える内容だが、その一方で、そういうことだったのか......と、妙に納得もしてしまった。
さらに調べてみると、日本には54の半島が存在するとのこと。みなさんは半島をいくつ言えますか?周囲を海に囲まれた島国・日本なので、身近なところに半島がある人も多いはず。また、半島には観光名所も多いので、ある程度は半島の名前を挙げられるのではないでしょうか。私が言えたのは、54のうち半数ほど。その中で真っ先に思い浮かんだのは、伊豆半島(静岡県)だった。
実は私の場合、幼少のころから家族旅行といえば決まって伊豆だったので、半島というと、無条件で伊豆半島を連想してしまうのだ。
そんな私が今回、釣査したのは、伊豆半島の西海岸に位置する伊豆松崎マリーナ。周辺は西伊豆と呼ばれ、手つかずの自然が残る地域で、海、山、川のどれもが美しく、映画やドラマのロケに使われることもしばしば。プライベート釣行で何度も訪れている私のお気に入りスポットで、今年に入ってからは伊豆縦貫自動車道が一部開通したこともあり、以前に比べてアクセスがグ~ンとよくなった。
取材当日、マリーナを訪問すると、マリーナのオーナーである濱田重久さんが笑顔で迎えてくれた。今回はロコアングラーとしても乗船していただく。
「風もなく、いい天気に恵まれましたね。僕はそんなに釣りが得意じゃないけど、オーナーさんが教えてくれたポイントがありますから。早速、準備して出航しましょう」
と、あいさつもそこそこに出航準備に取りかかる。
マリーナは那賀川の河口に位置していて、クラブ艇のヤマハYF‐21CCは河川に係留してある。荷物さえ積み込めばすぐに出航できる点は、釣り人にとってはうれしい。
好コンディションのときほど、一刻も早く出航したいと思ってしまうのが釣り人の性。さらに今回は、西伊豆の素晴らしいロケーションがその気持ちを後押しする。そんなワクワク感を抱きながら、クラブ艇は9時すぎに岸を離れた。

ゆかりのない土地でマリーナ業を始める

出航すると、そこには青く美しい駿河湾の海が広がっていた。海岸まで迫る山々の新緑も美しく、何度来てもここの景色は最高だと、変わらぬ自然に心が癒やされる。
ポイントに到着するまでの間、景色を楽しみながら濱田さんに話を伺ってみた。伊豆松崎マリーナの経営を始めたのは32年前のことで、もともとこの地にあったマリーナが売りに出て、それを買い取ったのだという。当時の年齢が30歳だったというから驚きだ。それまでの貯金をつぎ込み、いろいろとやりくりして手に入れたそうだ。
濱田さんご自身が松崎にゆかりがあったのかと思えばそうではなく、宮城県・石巻の出身だとか。30歳の若さで、ゆかりのない土地でマリーナオーナーになるということは、さぞかし苦労も多かったことだろう。
学生時代からヨットが大好きだった濱田さんは、マリーナ業を始めればいつだってヨットに乗れて、大好きな海で遊び放題!そう思って始めたが、実際には自分が海に出たいと思うような好条件の日には、艇を預かっているオーナーたちも海にやって来るので、その対応に追われ、自分が海に出られるような状況ではないという。理想と現実のギャップが大きかったと苦笑いしつつも、その語り口調からは、マリーナ業の道を選んでよかったということが、感じ取れた。ほかにも、いろいろと興味深い話を伺っているうちに、ボートは萩谷崎沖のポイントに到着した。

大自然に育まれた西伊豆の海を堪能

まず案内してくれたポイントの水深は90メートル。
「ここはキダイがよく釣れるポイントでね。早速やってみましょう」
ということで、実釣スタート。無風ベタ凪なので、操船は一切不要。中深場の釣りながらラインが立ち、とても釣りやすい状況だ。すると、オキアミをエサにしてキダイをねらう濱田さんのロッドが、早々にアタリをとらえた。
「大きくないですよ」
と謙遜する濱田さんだったが、サオ先には小気味いいヒキが届いている。自分の釣りはそっちのけで固唾を飲んで見守ると、青く美しい海からキラキラと輝くキダイが上がった。そこから濱田さんは投入ごとにキダイを釣り上げ、さらにはアマダイも追加する。
一方、サバの切り身をエサにしてオニカサゴをねらっている私には一切アタリがなく、エサがかじられた形跡さえも残らない。オキアミエサで快進撃を続ける濱田さんが次第にうらやましく思えてしまった。

私にアタリが届かないことを申し訳なく思ったのか、濱田さんはポイント移動を提案してくれた。向かうは松崎沖の一級ポイント「大根」方面。ここは春先になると多くの釣り船がマダイねらいで集まる人気スポット。今回はオニカサゴねらいなので大根の西側、水深70メートル付近で釣りを再開した。
気を取り直して誘いを繰り返すと、私にも待望のアタリが届き、小型ながらも本命のオニカサゴが上がった。経験上、オニカサゴは、1尾釣れたポイントの近くには複数いるはずなので、手返しよく仕掛けを投入する。これが功を奏し、本命オニカサゴが3連続ヒット。素晴らしい景色の中、浮かんでいるだけでも気分はいいが、釣りイトを垂らす以上は、釣れたほうがいいのは当たり前。ひと回り大きなサイズのオニカサゴも交じって、気分は最高潮に。

その後は濱田さんもサバエサでオニカサゴねらいに切り替え、2人でオニカサゴやアヤメカサゴをポツポツ釣ったが、ビッグサイズにはなかなか出合えない。
14時すぎ、南西からの風が吹き始めたので、ボートのただ流しではミチイトが立たなくなってきた。ギアをバックに入れて風に対して後進させる、いわゆるトモ流しで対処した。これでミチイトを立てることには成功したが、GPS魚探を見ながら同一ポイントを流し直してもアタリが遠のいてしまったので、15時前には沖上がりした。
帰港後、ボートのイケスから釣った魚を出して並べてみた。大物こそいないものの、赤く見栄えのする魚ばかりで、なかなかのもの。思わずニンマリしてしまった。
赤といえば、マリーナから宿へ向かう途中に立ち寄った、堂ヶ島から見る夕景は素晴らしかった。駿河湾のはるか遠方に沈む夕日が海を赤く染め、手前にある島々のシルエットが黒く浮かび上がる......。この夕景を見るだけでも西伊豆に来る価値はあると、しみじみ感じた。「今日の素晴らしい一日をありがとう!明日もよろしく!!」と、夕日に向かい、心の中でつぶやいた。

釣りだけじゃない西伊豆の魅力

宿泊先は以前から泊まってみたいと思っていた松崎の隣町、仁科のペンション「たーこいずぶるー」。ペンションのオーナーで漁師でもある小宮哲幸さんが、地元の海で捕れた新鮮な魚介類を出してくれるという評判のペンションだ。
あとで知ったことだが、濱田さんとも親しい間柄だという。そのことにも驚いたが、それ以上に驚いたのは、夕食がとても豪勢だったこと。3人前として出されたと思っていた刺身の盛り合わせが、なんと1人前でビックリ! そのうまさに舌鼓を打ち、至福のひとときが流れていった。
また、食後に小宮さんが聞かせてくれた、西伊豆は魚の宝庫であるという話と、その魚たちと対峙するための仕掛け作りのこだわりなど、普段はめったに聞くことができない漁師目線の話が聞けて、大変有意義な時間を過ごすことができた。
翌朝は晴天に恵まれたものの、思いのほか風が強く、ボートの出航が微妙な状況に感じられた。できることならもう1日、西伊豆の海に浮かびたい......。そんな気持ちを胸に、ペンションをチェックアウト。
マリーナへ向けクルマを走らせたが、道中、「今日の出航は無理だな」と思わざるを得ない光景を目の当たりにした。穏やかだった昨日とはうって変わり、海はとても荒々しい表情で、ヤル気満々だった私の気持ちを折るには十分だった。
マリーナに到着すると濱田さんが、「今日は無理ですね。自然が相手ですから仕方がないです」と苦笑い。落ち込んで、「そうですね......」としか返答できない私に対し、「お手製のピザ窯があるので、みんなでピザ作りをしましょう!そして、昨日釣った魚でブイヤベースも作りましょう」と、元気づけてくれた。
ピザ作りは思いのほか楽しく、そして想像を絶するおいしさだった。同行していた清水記者はピザ生地のばしにハマり、山岸カメラマンは生地作りの素材について真剣にメモ書きしていた。
むろん、オニカサゴで作ったブイヤベースは言うまでもなく絶品。空腹が満たされたころには、強風で出航できなかったことを悔やむより、むしろ、普段なかなか経験できないことにもチャレンジでき、充実した時間を過ごすことができたと感じた。自然とお客様の両方を相手にするマリーナ業。さすが、濱田さんは百戦錬磨で、そのツボをしっかり押さえていた。

「お客様の対応に追われ、自分が海に出られるような状況ではない」という濱田さんの言葉を前述したが、裏を返せば、それは濱田さんのプロ意識が高い証拠であり、事実、今回のように出航できない場合でもお客様に楽しんでもらえるよう、さまざまな"お・も・て・な・し"を、苦労を惜しまず行っている。
これはサービス業として当たり前のことなのかもしれないけど、なかなかできることではないと思う。そんな濱田さんのもとへは、保管艇オーナーのみならず、その友人たちも集まってくるそうだ。シースタイルの利用者にもリピーターが多く、はるばる遠方からも来るという。
西伊豆の魅力は豊かな大自然であることは以前から知っていたが、今回、伊豆松崎マリーナを初めて利用し、お客様本位のマリーナの素晴らしさを実感した。また一つ、再訪問したいマリーナが私のリストに加わったのだった。

隊長:小野信昭(おの・のぶあき)

【隊長:小野信昭(おの・のぶあき)】

1963年生まれ、神奈川県在住。DAIWAフィールドテスター、FURUNOフィールドテスター、ヤマハマリン塾「ゼロから始めるボートフィッシング講座」の講師を務める。著書に『必釣の極意』(舵社)、共著に『魚探大研究』(同)など。ダイビングの経験も豊富。ウェブサイト「気ままな海のボート釣り」
http://homepage3.nifty.com/miniboat/

今回のロコ・アングラー

【今回のロコ・アングラー】

ロコアングラーとして松崎の海を案内してくれたのは、伊豆松崎マリーナのオーナー、濱田重久さん(62歳)。もともとヨットマンで釣りの腕は大したことないと謙遜していたが、決してそんなことはなかった。

釣果カレンダー

釣魚カレンダー

周年いろいろな魚がねらえるが、西風が吹きやすい12月から翌年3月までは、同マリーナではクラブ艇の貸し出しは行っていない。4月には深場で越冬したマダイが、産卵のために浅場で活発にエサを追う乗っ込みシーズンで、地元アングラーをはじめ、多くの人がマダイをねらう。同時期に、浅場の岩礁帯ではイサキもねらえる。夏から秋には砂地でシロギスやアオリイカ、浅場~中深場の岩礁帯では種類豊富な根魚類が周年楽しめる。

伊豆松崎マリーナ周辺のフィールドマップ

伊豆松崎マリーナ周辺のフィールドマップ

クラブ艇の航行エリアは、北は黄金崎から南は波勝埼まで。このエリアはリアス式海岸線が続き、波の浸食でできた島々や断崖絶壁が大変美しい。中でも堂ヶ島周辺は特にその景観が美しく、遊覧船も運航している。沿岸域の海底は起伏に富み、沖合に向かうと水深がすぐに深くなり、短時間で深場のポイントにたどり着けることも、ボートアングラーにとっては魅力の一つだ。

伊豆松崎マリーナ

静岡県・伊豆半島の南西部に位置する伊豆松崎マリーナ。抜群のロケーションに恵まれ、ボートから見る西伊豆の海岸線は、一見の価値がある。釣りターゲットも豊富で、ドン深な周辺海域は釣りポイントまで非常に近い。伊豆縦貫自動車道が一部開通し、首都圏からでも日帰りが可能となったが、西伊豆の素晴らしい大自然を思い切り満喫するためにも、宿泊することをおすすめしたい。なお、12月~3月の冬期は、シースタイルの利用を停止している。

■交通アクセス
東名高速道路沼津ICより伊豆縦貫道、伊豆中央道を経由して、2~3時間

■問い合わせ先
静岡県賀茂郡松崎町道部371-1
TEL:0558-42-0396
営業時間:9時~17時
定休日:毎週火・水曜日(レンタル可能期間4~11月)
http://izu-matsuzaki-marina.p-kit.com/

今回使用したタックル

西伊豆のオニカサゴは水深60~80メートルでねらえるので、リールは手巻きでもOKだが、手前船頭のボートフィッシングでは電動リールが便利。今回はクラッチの切り替えからタナ取り、巻き上げまで、すべての操作が片手でできる「ジョグパワーレバー」を装備した小型電動リールをセット。バッテリーはコードレスタイプをチョイスした。サオはアタリが取りやすい先調子で、誘い動作の多い釣りなので、軽量なものにした。

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